第八十六話「霊体」
「運動能力は低いみたいだね」
「私の霊魂軍隊は量で戦う力だ。霊魂がベースである以上、質は生者より低い。幻術もイズには及ばない。だから量で賄う。兵はいくらでもいる。死者をどのように使おうと、死者は咎めたりしないさ」
ミーセ、戦闘を中断し、静かに尋ねる。
「兵になってから消された霊魂はどうなるの?」
サドリア、新たに霊体を五体生み出す。
「霊魂としても存在出来ず、霧散し、完全消滅する。消された時と言うよりも、兵になった時に消滅は決定する」
ミーセ、ナイフを手の中に生み出す。
「、、、死者は都合の良い資源じゃない。尊厳ある爪痕、生きた証なんだよ!踏みにじって良い訳が無い!」
「では霊魂を攻撃するのをやめるか?消滅する事に変わりは無いが」
ミーセ、ナイフを強く握りしめて首を横に振る。
「霊魂への攻撃はやめない。だけど」
ミーセ、ナイフをサドリアの近くの地面に向かって投げる。
「もう手段は選ばないよ」
ミーセ、踊るようにナイフを連続で投げる。
サドリア、霊体を使ってガードする。
「消えない!?」
霊体、ナイフが刺さっても消えない。
「さっきボクが何でわざわざ踏み潰したか分かる?」
「そうか、兵の耐久性を確かめるため、、、。だが、分かってもそんな繊細な調整は不可能なはずだ!」
サドリア、声を荒らげる。
「言ったでしょ?ボクは天才だから。兵の動きを止めながら消さないなんて事はボクしか出来ない」
サドリア、自分を囲む霊体を腕で強引に押しのけて下がる。
ミーセ、霊体の隙間にナイフを投げる。
サドリア、霊体を動かしてナイフの軌道を変え、回避する。
「鈍い兵隊だね?指揮官が悪いのかな?」
「くっ」
ミーセ、一気に距離を詰め、サドリアを狙う。
サドリア、霊体を生み出し、盾にする。
ミーセ、霊体を切り裂いて一撃で消し、連続で投擲。
「私を見くびるなよ!私の七十六年をこんな一瞬で覆せるものか!」
サドリア、左右に霊体を生み出し、手から炎を噴き出させる。
ナイフ、炎によって消える。
ミーセ、地面を前に転がって炎を避け、起き上がりながらナイフを二連続で投げる。
「この炎は発生が遅いし直線的。奇襲用かな?」
サドリア、横に跳んでナイフを回避し、墓石の裏に回る。
「私も手段を選んでいられないかっ!」
「まだ何かあるの?」
数百体もの霊体、霊園全体を埋めつくした。
「量で押し潰す!あらゆる質を無視する程の!」




