第1話 スライムの作り方
異世界転移ものですが、現代知識によるチートはありません。
よろしくお願いいたします。
スライムの作り方を知っているだろうか。
それはRPGのド定番のモンスターにして最弱の存在。ではなくジェル状の不思議な触感を楽しむ理科の実験で作るおもちゃみたいなものだ。
用意するのは、硼砂と洗濯用の水ノリ、絵の具、水とたったこれだけ。
硼砂ていうのは、硼酸とナトリウムの化合物なんだけど、薬局で買えるよ!
まずは、コップに洗濯ノリを入れます。コップの1/3ぐらい。それと同じ量の水を入れて混ぜます。
よく混ぜたら、絵の具を投入して好きなスライムカラーを選択、次に小さじ一杯分ぐらいの硼砂を別の容器に入れて水と混ぜる。混ぜ終えたら先ほど洗濯ノリを入れたコップに投入して混ぜる。
混ぜ終えたら、取り出しあとはハンバーグの空気抜きをするようにスライムを両手で叩き。くっつかなくなってきたら完成だ!
ネットの調べによればこれで完成するはずだったのだ。
それなのにどうしてだ。
完成したスライムを両手で弄ぼうとした瞬間、スライムは光り輝き弾け飛んだのだ。
あまりの光量に目を瞑った。
瞼ごしでなお焼き尽くすばかりの光が収まってきたのを感じたところで、そっと目を見開くとそこは先ほどまでいた台所ではなく見知らぬ空間だった。
青い空と白い雲がオレンジ色に染まっていく黄金のように輝く黄昏時。
その一瞬を象ったような神秘的で壮大な白い雲の上にいるような、見渡せば地平線の彼方はどこまで続いていくようだ。
「待っていたわ。ずっとずっと待っていたの。あなたのような人が来るの」
荘厳な教会の鐘が鳴るような、空に響き渡る綺麗で神性さを感じる声。
目の前には陽光と溶け合うまばゆいばかり輝く金髪に、透き通るような空を思わすブルーの瞳。
まるで絵画に出てくるような女神のようだと思った。
そんな美少女の正面に、須賀 タイチは立っていた。
すっぱだかの全裸で。
「キャンッ!!」
なぜにハダカ?! 思わず変な声が出てしまった。
ブルーの瞳がついっとタイチのそれを捉える。
「ままま待ってくれ。違うんだ。台所で昔を懐かしんで、スライムを作っていただけなんだ。気づいたら、この空間にいて、いつの間にか服も下着も消えていたんだ!本当だよ、嘘じゃないんだ。信じてくれ。いや信じられないかもしれないけど、これは本当のことでそれで――――」
「―――信じますよ」
「へっ?」
「私は、あなたのことを信じます」
「そう、ありがとう」そう呟き安堵する。いきなり通報&豚箱行きのコンボはないみたいだ。
「はい。スライムを愛するものに悪い人はいません。それに、スライム信者が服を着ないのは当然のことです」
「うんうん。服を着ないのは当然だからね。ハダカでも問題ないわけだ。うんうん、てぇえええええええええ」
女神のような美少女の発言にもしやと思いタイチは改めて目をさらにして見つめる。
そういう彼女も確かに服を着ているようには見ない。
ただ残念なことに、全身を岩?のようなごつごつしたものが覆っている状態で、その肢体を見ることは出来なかった。
「さぁそんなことよりも本題に入りましょう。突然で申し訳ありませんが、あなたには私の封印を解いてもらいたいのです」
「えっ、まじで突然だね。封印を解く?」
「ええっ、私はただスライムを愛するいたいけな存在。それだというのに外なる世界から来た神々によって封印をされてしまったのです。そしてこの岩のように見える物は力を封じる特殊な拘束具。……………勿論、それ相応の見返りをご用意致しますよ?」
潤んだ瞳で美少女が封印を解いてくれと頼む。最近の流行りなら、完全に魔王復活フラグだ。
悪い奴に捕まったとかいつつ、実はそいつが悪い奴で、捕まえたほうが正義の味方でした的な展開が容易に想像がつく。
しかしだ、タイチは思う。
魔王なら魔王でよくね?こんな可愛い美少女が俺に頼み事をしてるんだから、それに相応の見返りもあるということだし。
岩に覆われながらも、スタイルの良さが用意に想像できる美少女の容姿にタイチの喉がゴクリとなる。
「ち乳、――ごほんっ、ちなみに君の封印を解いたら、どうなるの?その拘束具の岩とか?!」
「うーん。そうですね」
それでは、と可愛らしく間を取り、美少女は説明しだした。
「この岩は一つであって複数。まぁパズルのようなものといえば分かりやすいでしょうか、それに一つ一つ封印が施されており、私の力を151個に分けられてしまいました。封印を解くには鍵となる151種のモンスターを門となるモンスターに吸収させて欲しいのです。そうすれば」
そうすれば、どうなるというのだ。ゴクリと、タイチは再度溜まってきた唾を飲み込む。
「一体吸収させるごとに、私に力が戻り、拘束具、この岩は壊れていきます」
岩が、一つずつ壊れていく、だとっ・・・?!
それてつまり・・・・・・。
「先ほども言いましたが相応の見返りは勿論、加護やスキル等のバックアップもさせて―――」
美少女がひとしきり説明をしているがタイチの頭には入ってこなかった。
スライム好きは、服を着ない。
そして、この美少女ちゃんはスライムがお好き!
拘束具は、封印が解除されていく毎に壊れていく。
「―――ですから、」
それて、つまり!
封印が解けていく毎に、ハダカになっていく。
いわゆる、美少女のストリップていうことじゃないかっ!!!
ないかー!!
ないかー!!
「と、……あの聞いてますかっー?」
「―――はっ!、あっはい勿論です。聞いてますよ。何処まで話しましたっけ?」
まったく、もう。とっ、ジト目に、頬をプクッと膨らませながら、(くそっ、可愛い)説明してくれた。
こんな可愛い美少女ちゃんが、ストリップ。ストリップストリップストリップストリップストリップストリップストリップストリップストリップストリップストリップストリップストリップ。ストリップストリップストリップストリップストリップストリップストリップストリップストリップストリップストリップストリップストリップ。ストリップストリップストリップストリップストリップストリップストリップストリップストリップストリップストリップストリップストリップ。ストリップストリップストリップストリップストリップストリップストリップストリップ
「鍵となるモンスターを集めるため、私の加護とスキルを与えます。封印が解除される毎に与えられる力は増していくと考えてください。そして鍵となるモンスターですが、勿論151種のスライムです。吸収させるのは野生でも育てて進化させたものでも構いません。それをあなたがお持ちの門となるモンスター。原初のスライムに吸収させればいいのです」
「んっ?俺がお持ちの?」
「ええっ、あなたがお持ちの、そのスライムですぅ~。私も久々に見ました。カワユイ」
白い肌に朱が混じり、美少女ちゃんの目にハートマークが浮かんでいる様な愛おしいそうに瞳が潤んでいる。
しかし、当然の如くたかがスライムといえど、モンスターなど持っているわけもなく、はてと思いながら、美少女ちゃんの見つめている視線を追う。
美少女ちゃんの目線は下、腹?いやもっと下つまり――――――はっ、まさか。
活躍の時を今や遅しと待っている、マイリトルサんぅ???
「っ、てぇえええええうわあああああ、なんじゃこれ」
タイチの下腹部、つまり股間にスライムが張り付いていた。
このぉおおおおおお。
剥がそうとするが、ジェル状のボディは掴みにくくまた形が変わり、伸びるだけでなかなか剥がせない!
「スライムの包み込むような性質。服として最高~ですよね。はぁ~わたしも早くまた纏いたいわ」
いやいやそんなウットリしてないで、どうにかしてくれっ!
いたたまれなくなったタイチはやけくそになってスライムを叩いた。
すると、スライムが鳴動を開始した!
「ひゃあ、はぁん。股間バイブレーションはラメェエエエ!!」
「はぁー。スライムはいいですね。形が刻々と変化して、いつまででも見ていたいです。ですが、そろそろ時間のようです。これからあなたを我が神殿に送りますので、どうぞ頑張ってください」
「ひぇ、ひゃあん、ちょっと待って!まだ聞きたいこと、あふん!!」
「期待しております。スライムを愛する同胞よ。あなたに我が慈悲を」
タイチが何かを聞く暇もなく、空間は再び強烈な光に支配された。
最後までお読みいただきありがとうございます。
続きは明日12時に投稿致します。