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暴力装置

「にゃにゃにゃにゃっ!!」

 跳ね上がり巫女と反対のソファの後ろに身を隠すと横から顔を出して様子を伺う猫。俺はソファから立ち上がると窓の鍵を外して開いた。

「貴方は本当に何も分かってないみたいね、そんなに死にたいのかしら。」

 大変ご立腹の巫女に隠れている猫が震えている。そう言えば狐はどうしたんだろうか。

「あいつならそこでのびてるわよ。」

 チラッと右に目をやって狐を確認すると、もう一度俺を睨んでくる。

「何も悪い事してないにゃ!」

「黙れ! 人の精気を吸い取る妖怪が! 退治してやる!!」

 不穏な雰囲気は確かな殺意を帯びて猫を射抜いた。

「助けてにゃ!」

 俺の背中に身を隠す猫に苛立ちゲージがMAXになったのだろう、これまで見せてきた攻撃の予兆となる両手を鳴らす動作を見せる。

「やめろ!」

 このあと直ぐに攻撃が始まるのは分かっているので即邪魔が出来る突進を試みると、思ったよりもずっと強力なキック力で外に居る巫女に一瞬で体当たりになった。

 庭の芝生に転がるふたり。

「ッ痛、あんたなにやってんのよ!」

 頭を抱えて訴える巫女に怒声で応えた。

「そっちこそ何考えてんだ!」

「そうにゃそうにゃ!」

 猫は両手を挙げてプンスカといった風に怒っている。

「ここで戦ったら俺の家に被害が出るだろ!」


 一瞬の静寂。

「私を庇ったんじゃにゃいのかー!」

「命と家とどっちが大事なのよ!」

 衝撃と目的で気付くのが遅れたが巫女を下に馬乗りになっている。

「…きゃっ! 何すんのよっ!」 バシィィィィ!!

 状況を目視で確認すると顔を僅かに赤くして巫女らしく無い可愛い悲鳴をあげ、一瞬で状況判断と対処(脊髄反射とも言う)で頬を力一杯殴ったが今回も全くダメージが無い。とりあえず攻撃しない事を条件にどいた。


「ホントにあんたは何なのよ。」

 怒りを含んでいるが攻撃はしないと約束したので渋々だが俺に従ってくれている。

「私を助けるにゃんて良い奴にゃ、お前について行くにゃ。」

「またあんたは妖怪を手下にして、もうこうなったら私をお嫁にしなさい!」

 えー、どういう理屈なんだか。

「何よ! 文句でもあるって言うの!? こんなに良い女が嫁になってあげるって言ってるんだから感謝しなさい!」

「どうしようかな。」

「だからあんたはホントに何なの!? 誰もが羨むこの私が嫁になるって言ってるんだから妖怪なんかじゃなくて私にしなさい。あんたとの子ならあんな狐なんて一発で倒せるんだから!」


 大きくため息をついた。

「はぁ……ずっと思ってるんだが良いか? お前が勝手に色々言ってるだけで俺は彼女たちを一度も手下にするなんて言ってないし、そもそも俺は触っただけで注連縄が切れた(・・・)以外は関係ないぞ。」

 ソファの後ろに隠れて頭だけ出し、拳を振り上げていいぞもっとやれ(・・・・・・・・)と煽っている猫に憤慨する巫女が一瞬視線を向け睨むと、猫は素早くソファの裏に隠れたので、視線を戻してさっきよりきつい目付きで言い放った。

「だからそれが一番問題なのよ! 普通の人間はまず岩を見つけられないし注連縄だって簡単に切れる物じゃない、きちんと手順を踏んで封を解ないと外せないのにそれを無視して触っただけで切れただなんて見逃せる訳無いでしょう!?」

 そう言う事かー。

「ずっと俺に付きまとうって事か?」

「そうなるわね。」

 ふんっ、と腰に手をあて勝ち誇ったように胸を張る巫女。ぺったんこだが。

 現状では三人?の女に言い寄られ、選択肢がヤンデレと妖怪ふたりとか、これって選び様が無いと思うんだが。


 巫女の後ろ、20メートルくらい離れた建物の影に迷彩服を着た集団を見つけた。あれってどう見ても自衛隊だよね。一人が双眼鏡でこちらを見ているのと、その後ろで何かしているのがチラッと見えた。そこに突然陸上自衛隊の兵員輸送ヘリが上空10メートルくらいの高さを通り過ぎ、それを屋外に居た俺と巫女が目で追うと更にもう一機の攻撃ヘリが同じ航路でやって来て通り過ぎる事無く急制動してホバリングし、こちらに回転する機関砲を向けた。


「あれは何なの!?」

 ホバリングによる風と巻き上がる土埃に左手を翳して質問してきたが、これはチャンスと後ろを向いている巫女を羽交い締めにして叫んだ。

「自衛隊さん! この巫女です!!」

 俺より背が低く細身の巫女は巫女装束を着ていても軽く、羽交い締めで持ち上げた事で風に煽られ巫女に引き摺られて二人して吹き飛ばされた。

「うわぁー。(棒読み)」

「何やってんのよっ!!」



◆一方、少し巻き戻して先程見えた自衛隊の地上部隊


『こちら一斑、追い付いたぞ、民間住宅の庭に男一名とターゲットの巫女を確認、言い争いをしている、仲間ではないかもしれんな、それに狐女が居ない、隠れている可能性があるから気を付けろ。』

『こちらHQ、了解、もう直ぐ支援のヘリが二機、そちらに到着する、ヘリがターゲットを捉えたら行け。』

『一斑了解。』

 それまでにこちらも準備しておこう。

 それから少しして男がこちらに気付いた。

『こちら一斑、男に気付かれた、繰り返す、男に気付かれた。』

 面倒な事にならなければ良いが。

 直後ヘリが二機、間を置いて頭上を通り過ぎる。

『こちら四班、ターゲットを捉えた。』

『一斑了解、行け!行け!』

 ゴーサインを出すと後ろに控えていた5人がアヒルの様な中腰の姿勢で自動小銃を構え低い生け垣に隠れながら素早く前進を始めた。

『男が巫女を盾にして何かを叫んでいる、繰り返す、男が巫女を盾に…二人とも風で吹き飛んだ! 転がっている今がチャンスだ!』

「総員確保! 総員確保!」

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