表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

3/9

さんわ

 そのダンジョンは、蔓で作られたものらしい。

 緑色の太かったり細かったりする蔓が絡み合って見渡す限り敷き詰めているような場所だ。

 ここの奥深くに目的の伝説の剣が存在しているらしい。


 そんな外から見る分には別な意味で緑豊かな異世界間を醸し出すそれ。

 その蔓の集合体を見ながらを指差しながら、アキラがヨウタに説明をする。


「もともとここには、遥か昔、二人の伝説の古代魔術師達が戦った結果、大きな幾つもの町が作れるくらいの広く深い穴が作り上げられた……という設定だ」

「設定、って……アキラ。というか自分はマップ見ながら言っているのに、何で僕にはそんな機能ないんだ!」


 そこでヨウタは、アキラが地図をもって説明しているのを見ながら不公平だと思い声を上げる。

 そんなヨウタにアキラは、


「自由度の高いゲームだから。ついでにマップはアイテムで、俺とカオルしか持っていないんだから、仕方がないだろう。だからわざわざ説明してやっているというのに……」

「そ、そうだったんだ……ごめん」

「いや、ヨウタは全然説明書読んでいないんだな……」


 言葉の詰まるヨウタ。

 実際に説明書を読んでいないからこんな風な状況になっているわけで……。

 でももしかしたら普通にゲームとして冒険してみるのもいいかなと思ってきていたかもしれないとヨウタは思う。


 もしも普通にゲームをするだけのつもりでここに来たとしたら、パーティを組んで一緒に移動して、ヨウタはアキラに助けてもらうことなく、しかも普通に戦闘もできる属性にされたのかなともヨウタは思う。

 そうしたら守られるんじゃなくてもっと一緒に戦ったりできたのだろうかとせんのないことを考えてしまう。

 一方アキラはというと、説明書を読んでいないのはその方が好都合なんだけれどなとアキラは思う。


 何しろヨウタはアキラを頼ってくれるしそれに……と考えながら先ほどの今回行く場所の説明をアキラは続ける。


「とまあ、そんなわけで出来た穴は、穴があったら埋めたいという蔓の意志のものにこうして、複雑に絡み合いながら通路を作りダンジョン化しているんだ」

「なるほど、だからあんなに入り口があるんだね」


 そう、蔓の間にある無数の入り口(番号が振られていて十番以上まである)をヨウタは見てヨウタは納得する。

 しかも蔓は生きているのでダンジョンの通路は常に変化し増えたり減ったりして変わっていく。

 なので入り口で、このダンジョンから入り口まで戻る道具がそこそこの値段で売っている。


 道に迷っても時間がかからず出られるアイテムだ。

 とはいえヨウタはこの時、すでにあることに気づいてしまっていたのだ。つまり、 


「もう良いから行こうよ、ね! そしてものを売っていた女の子に、服びりびりを……」


 そんなわくわくとしたように、楽しそうに急かすヨウタ。

 そこでカオルが一言。


「ヨウタの服びりびり」

「びくっ!」

「ミチルはどう思う?」

「良いんじゃないか?」

「びくびくっ!」

「アキラはどう思う?」

「……あまり服を壊す過ぎると、ヨウタが俺への借金返せなくなるなー。……体で返してもらおうか」


 アキラは冗談のつもりだった。

 だが、先ほど夢見るモードでアキラとあんな風になってしまって、つまり体で返すという名の婚約……それが思い出されて、ヨウタは冗談に受け取れなかった。

 そう思ってじりっと後ずさりしてから、


「アキラの馬鹿ぁああああ」


 と叫んで、まっしぐらにダンジョンの蔓に走っていって、ヨウタは細い蔓に捕まる。

 腰周りをぐるりと巻きにされて宙づりにされたヨウタは、


「あれ? うわぁあああ」

「……ちなみに蔓は生きているのでたまに捕食します、だそうだ」

「冷静に言うな、アキラ! ここで最初から何て嫌だよおぉ。せっかくお零れで経験値貯まっているのにぃいぃぃ」

「ちなみに捕食は性的な意味でされるだけでそこまで体力は減りません、だそうだ。良かったな、ヨウタ」

「なーんだ……って、性的な意味では嫌……ひあっ!」


 そこで蔓に、服の上からぐりぐりされる。

 別にぐりぐりされているだけで、けれど少しヨウタの感じる場所というか脇のあたりを触れているせいか、ヨウタは変な声が出てしまう。


「ひあぁあ、やぁ……やぁああんっ」


 緩急のある力加減で押し付けられる蔓の感触。

 しかも、途中から、ヨウタの服の上から少し強めに押されて、


「や、やぁ……ちょっと、変な感じ、ぁぁ!……め、らめぇ、ぁああっ」


 びくびくと頬を染めながらヨウタは震えた。

 今回のこれはマッサージに近くて通常でも少しずつ回復するのだけれど魔力を吸われるので感じて、しかもマッサージが気持ちよくてヨウタは変な声が出てしまう。

 そんなヨウタにアキラは、顔を赤くして熱っぽくヨウタを見ていたのだが、ヨウタはそれどころではないので気づかなかった。


 ちなみにカオルとミチルは暫く傍観する事に決めた。

 そうしてしばらく喘いでいて、体力も半分くらい減ってきてヨウタもぐったりしてきたところアキラはヨウタをとらえている蔓を攻撃して、ヨウタを抱きとめる。


「ヨウタ、ヨウタ、大丈夫か」

「……うぎゅ」

「これくらいならまだ丈夫だと思うが……若干しびれの効果が残っているのか。これを回復して……どうだ? ヨウタ」

「……むぎゅ」


 ヨウタはさんざん感じさせられたのとマッサージの心地よさで完全に動けなくなっていた。

 そんなぐったりとしたヨウタを見ているとアキラは……何かをしてやりたい錯覚を覚えた。

 だからアキラはぐったりとしたヨウタの耳元で、


「ヨウタ、今すぐ起きないとキスするぞ」

「! ふぎゃああ!」


 ヨウタの意識は完全に覚醒した。

 しかもキスするぞと言われて、アキラの綺麗な顔がすぐ傍にあるなんて、ヨウタにはちょっと耐えられない。

 意識が覚醒したヨウタはアキラの腕から全力で飛び跳ねるように逃げた。


 それこそウサギが跳ねとぶようにだ。

 こんな状態でキスなんてされてたまるか、そもそもこの前の夢では婚約であの後愛しているといってキスを……。

 思い出してヨウタは悲鳴を上げそうになった。


 そうしてアキラから距離をとって小さく震えているヨウタだが、そこで突然見知らぬ人物からの声がした。


「おい、そこのお前!」

「え? 僕?」


 いきなり知らないキャラにお前呼ばわりされたヨウタだが、次の瞬間、その知らないモブキャラに捕まえられた。

 それはもう強い力で片手で持ち上げられて肩に担がれる。


「えええ!」

「返して欲しければ、俺達の所まで来るんだな、がははは」

「ええ! 待って、ちょっと待って、いやぁあああああ」


 知らないキャラに捕まれて、ヨウタが絶叫した。

 ちなみにアキラが何故この時動けなかったかといえば……イベントシーンだからだった。

 どんな戦闘能力を持つものでもなぜかその空間では強制的に特定の行動をとらされてしまうという、ゲーム内のアレである。


 おかげで動くことのできないアキラはヨウタをみすみす連れていかれてしまうのを見ながら呻く。


「……“村人B”のイベントか」

「どうする、どっちを先に片付ける?」


 そうカオルが、分りきった答えをアキラに問いかけたのだった。







 見知らぬキャラクターに捕まえられて、荷物のように抱えられながらヨウタはダンジョンの中へ。

 うねうねと動く蔓は、所々蔓で作られた籠のようなものに明かりが灯っており、食べたら明らかに毒だろうという鮮やかな青や赤紫緑色をしたキノコやら光る石やらが散りばめられて、魔物やらが立っている。

 途中戦闘している人達もいたが、ヨウタを無視して戦闘していた。


「ゲームらしく皆、僕は無視か。プレイヤーの場合は、関係ないから無視しているのかも……それとも戦闘でそれどころじゃないのかな? はあ……。しかも連れていかれている最中の今は、魔物にすら襲われないし。というか何処まで連れて行かれるんだろう……」


 と思っていると、そこで、ヨウタを連れていた男が真っ二つにされてしまう。

 ぎゃあとありがちな声がして、さらさらと光の粒になってヨウタを捕らえていた男は消えてしまう。

 自然とヨウタもどさりと地面に落とされる。


「ふぎゃ! ちょっと痛かったかも……」

「大丈夫か?」


 そこに現れたのはどちらかというとイケメンだった。

 そして男だった。

 またしてもイケメンの男と出会ってしまったという劣等感を抱きながら、ヨウタはとりあえず助けてもらったので、


「あの、助けていただいてありがとうございます」


 そこで助けてくれた彼は目を瞬かせて微笑み、


「ああ、というか君もプレイヤーキャラか」

「はい、“村人B”なもので。そのせいか連れ去らわれてしまいました」


 そう告げると目の前の彼は珍しそうにヨウタを見てから、


「へー、珍しいな。でもそれで攫われていたのか。それでもう一つは?」

「……“村人B”です」

「そうなのか、凄いなお前。珍しいものを二つも持っているんだ。所で、組んでいる奴はいるのか?」

「う、うん」

「じゃあそいつのいる所まで送っていってやるよ」


 と、彼はいう。

 その親切で爽やか、そして人の良い感じにヨウタは、こいつモテそうだなとヨウタはさらに劣等感を持ちつつ思っていると、


「俺の名前は、ユウシ。属性は勇者+吟遊詩人だ」

「そうなんですか……ええ! 勇者って珍しいんですよね?」

「そうなんだ。でも、これであいつに勝てたと思ったのに、あいつも勇者で……許せん」


 どうやら、このユウシには嫌いな人物というかライバルのようなものがいるらしい。

 その人物も勇者の属性を手に入れているようだ。

 いいなー、ライバルとか……とヨウタが思っていると、声がした。


 見ると走りよってくる背の高い綺麗なイケメンの双子が二人ほど……おそらくは魔法使いなのだろう、そんな二人がやってきて、


「おい、ユウシ、一人で勝手に飛び込んで行くなってあれほど……」

「そうですよユウシ、もう少し……」

「ふん、さっき俺が蔓に弄ばれた時も暫く傍観していたくせに」


 そこで助けてくれたイケメン……ユウシが冷たい声で双子に告げた。

 どこかで覚えがあるイベントだなと思いながらヨウタが聞いていると、それに双子が、


「仕方がないじゃないですか、私達は手を出せない状態のイベントでしたし」

「そうですよ、その後ちゃんと私達が解毒してあげたでしょう?」

「二人がかりでお前達に毒抜きと称して、キスされた俺の気持ちがわかるか!」


 ヨウタはごふっと噴出した。

 ここでも男同士のなんやかんやというか……そこで、そのユウシがヨウタの手をぎゅっと握って、


「だよな! やっぱりおかしいよな! 普通してくれるのは女の子の方だよな!」


 その言葉に、ヨウタは初めて自分と同じ考えの人間にゲームの中で出会ったように感じた。

 男だらけのゲームだというのに、だれもが普通に受け入れている中違和感を持っているヨウタだけがおかしい気がしていたが気のせいだったのだ。

 仲間がいたのだ!


 だからヨウタは嬉しくなりながらユウシに、


「だよね! 女の子にされたいよね!」

「そうそう女の子にこう、やっぱりたどたどしい感じでして欲しいよね、あいつ等みたいに手馴れた感じではなく! ……あ、ごめん、手を握っちゃって……」

「別に良いよ。でもそっかー」


 嬉しくなって、ヨウタは微笑む。

 けれどそれを見たユウシが一瞬顔を赤くして、ちょっと焦ったようになって、そこでふと思い出したらしい。


「そういえば名前をまだ聞いていなかったな」

「あ、えっと、僕は……」

「ヨウター」


 そこでヨウタの名前を呼ぶアキラの声がしたのだった。









 だがそこで、ユウシは険しい顔になる。


「アキラ……」

「ユウシ?」


 どうやら知り合いらしいがその険悪な感じにヨウタは驚いていると、


「アキラ、ここであったが百年目! 今日こそお前を倒してくれるわぁあああ!」


 そう切りかかるユウシを、双子が止めようとするもぎりぎり遅くアキラに襲い掛かる。

 だが、それをアキラは面倒そうな顔になりながら紙一重で避ける。

 そしてすぐに剣で攻撃を加えた。


「うぎゃぁあ!」

「相変わらず弱いな、ユウシ。こんな力量で俺に挑んでどうするんだ?」


 そう、瞬殺されたユウシは、見下すように傲慢に笑う、今までヨウタが見た事の無い様な顔でユウシを倒し、踏みつける。

 そんな踏みつけられたユウシは、悔しそうに呻いて、


「この……俺を踏みつけるな!」

「じゃあ攻撃を止めるか?」

「嫌だね。お前にはいつもいつもいつもいつもやられてばかりだ。今度こそ……」

「ふーん、じゃあ止めを刺して、初期値からやり直すか?」


 アキラは意地悪く笑い、どう考えても悪人のような笑みを浮かべて、剣を振り下ろそうとした。

 でも融資はヨウタを助けてくれた人なのだ。

 だからヨウタは慌ててアキラとユウシの間に入りそこでアキラに、


「アキラ、止めてよ! この人僕を助けてくれたんだよ!」

「そうなのか? ……だったら仕方がないな、それにヨウタのお願いだし。今回だけは見逃してやる。おい、ツバサ、ヨクトこいつの面倒をきちんと見ておけよ。目障りで仕方がない」

「はい、分りました。ほら行くぞ、ユウシ」

「ツバサ、酷いよ、俺はこいつを倒して……むうううっ」


 そこでツバサがユウシにキスをした。

 突然の事に焦るユウシだが次にもう一人、ヨクトにもユウシはキスされてしまう。

 二人の男にキスされたユウシは、あまりの事にぼんやりぐったりなってしまい、そのまま仲間の双子である彼らに連れて行かれてしまった。


 そしてアキラは今度はヨウタの方を向き、優しそうな感じで、


「大丈夫だったか、ヨウタ」

「う、うん。でも今の人も知り合いなの?」

「……自称、小物感の漂う俺のライバルだ。俺としては、興味がないんだが昔から突っかかって来るんだよな」

「昔から?」


 だが昔からの知り合いであるヨウタはあんな奴いたかなと首をかしげる。

 深く詮索されたくないアキラは話題をそらそうと、


「さて、ヨウタが心配で走って来たからカオルとミチルを置いて来たんだよな」


 と後ろを向いた丁度その時。

 ヨウタは再び突然現れた今度は若いお兄さんに抱き上げられた。


「というわけでこの子を返して欲しければ、ダンジョン356番に来るように!」

「ま、待ってなんでこんな連続イベント……うわあああ」

「ヨウタ! くそ、パーティの俺がクリアしなかったから、短時間でまた起ったのか!」


 忌々しそうに呟き連れ去られるヨウタを見送るアキラ。

 そして完全にヨウタが見えなくなった頃、カオルとがミチルがアキラの所に追いついたのだった。








 ヨウタたちから離れた後のユウシ達は、つるのダンジョンを歩いて出口を目指していた。

 その間一緒にいた双子のツバサとヨクトに苦言を呈されていた。


「まったくどうして、アキラに突っかかるんですか」

「そうですよ、身の程知らずですよ、ユウシ」

「……あいつには負けたくないんだ」


 そんなユウシの言葉に、溜息をつくツバサにヨクト。

 けれど、それよりもユウシの心を占めていたのは……。


「ヨウタ、か」


 その言葉を呟いて、出会った時の笑顔を思い出して、ユウシは顔を赤くする。

 いつもと違う、けれどどういった展開か想像できるユウシのその様子。

 それに気づいた双子が、焦ったように、


「ユウシ、ヨウタは駄目ですからね?」

「あのアキラのお気に入りですし」

「……何を言っているんだ二人とも?」


 ユウシは切り返すと、双子は黙る。

 別にヨウタは男だとユウシは分っているのだが、可愛くて、襲ってしまいたい気持ちになるのだ。

 そこまで考えてから、それはないとユウシは慌てて自分の考えを打ち消したのだった。








 ヨウタは連れ去られた場所で、連れ去った若い男も含めて五人ほどに囲まれた。


「こいつか?」

「ああ、こいつだ」

「ふん、あの勇者が連れている村人がこんなだとはな。女じゃあるまいし」

「だが顔は可愛いな。これなら男でもいけるか?」

「確かに男でも可愛いから、良いな、俺は」

「これくらい可愛いなら男でもいいだろう」


 目の前の男五人がそういう会話をして、そこでヨウタは叫んだ。


「その理屈はどう考えてもおかしい! 明らかに!」


 けれどそれに連れ去ってきた若い男が、


「生きの良い坊やだな。それを屈服させるのもまた楽しいが」

「いや、そうじゃなくて女の子の方が良いでしょう! 何処からどう見ても、僕、男だし!」

「何だかむらむらしてくるな、お前を見ていると」

「いやいやいや、もっと可愛い子にしようよ。女の子とか! 男ではなく!」


 そこで、若いお兄さんの動きが止まった。

 もしかして分ってくれたのだろうかとヨウタは淡い期待を持って見上げると、その若いお兄さんの手にはネコミミカチューシャが握られていた。

 そしてそれをヨウタの頭につけて、


「可愛いな。じゃあしようか」

「や、やだ、何する気だ!」


 顔を青くするヨウタが逃げようとすると、いつの間にか背後に誰かおりそのまま手を後ろ手に拘束されてしまう。


「は、放して、放してよ……」

「生きがい良いな、この村人は。楽しませてもらおうか」


 若い男がそう言って、ヨウタに近づいてくる。

 なので足をばたばたさせて近づいて来れないようにするが、今度は目の前にいる四人のうち二人に片足づつ押さえつけられてしまう。

 そして攫って来た若い男がヨウタの足を割るように近づいてきて、ヨウタの顎をつかんで、そのままキスされるのかと思えば耳にふうっ吐息を吹きかけられる。


「ひやぁあ」

「随分と感度が良いんだな。この村人は……」

「ち、違う……」


 ヨウタは抵抗の意思を示すけれどそこで若い男が、


「ああそうだな、“魔性”か。道理で感度も良くて手馴れているよな。俺達も楽しませてもらおうか」

「や、止めて……ふぎゃぁあ、やぁああ……」

「なんだ、感じるのか?」

「か、感じてな……ひあぁ、めっ、ひっぱちゃ……やぁあ、押しちゃ……」

「本当は良いんだろう? 口では可愛くない事を言うが、体は正直だな」

「ぁあ……何で僕、ぁあんっ……こんな事言われて、ぁあ、いるんだろ……う、あぁああんっ」


 服の隙間から首筋を触られて、ヨウタは何でこんな場所が感じるんだろうと思ってしまう。

 しかも触られたところが変な気持ちになってくる。

 そんなヨウタに目の前の若い男が、


「随分気持ち良さそうな声でなくな。この淫乱が」

「ぁあ、無理やり首のあたりを触って……んあぁっ、おいて何を言っている……んだ、ぁっ!」

「そういう生意気な事を言うともっと酷くしてやりたくなるな」


 そこでヨウタはお腹の辺りの服をめくられて、ヨウタは涙目になる。

 そしてこのまま自分はどうなってしまうんだろうと思った所で、


「ヨウタ!」


 アキラの声がしたのだった。








 ここがダンジョン畑と呼ばれるには理由があり、それは幾つものダンジョンが常に作り出されるからである。

 けれどイベントの関係上固定されたダンジョンを辿れば良いだけなので、アキラ達はすぐにヨウタを見つけることが出来た。

 そして、アキラが来ると、ヨウタは用無しだとでも言うかのように放って置かれて、そしてすぐにアキラは彼らと戦闘し、勝利する。


 助け出されたヨウタはアキラに真っ先に聞かれた。


「まったく盗賊に連れ攫われるイベントとか……大丈夫かヨウタ? 何をされた?」

「首筋を触られたりお腹のあたりの服をめくられたり酷い目にあった」


 ヨウタは、心配そうなアキラにそう答えると、アキラが微笑んだ。

 そしてアキラが来てくれたので安心したヨウタはうまく立てない。


「う、うぐ……」

「うまくたてないのか? そこまでゲームは再現しているのか……仕方がない、しばらくおぶってやるよ。俺が」

「え、えっと……」

「別にヨウタ一人ぐらいなら平気だ。幼馴染だし遠慮はしなくていい」

「うん、ありがとう」


 そういってヨウタはアキラに背負って移動してもらう。

 しかも魔物が途中現れても次から次へとその状態で、アキラは倒していく。

 本当に勇者みたいで強くて格好いいなアキラは、とヨウタは思う。


 こうしてしばらくヨウタはアキラに背負われながらアキラのすぐそばで、その力を目の当たりにしたのだった。







 そして途中から、ヨウタは一人で歩けるようになったのでおぶる機会がなかったアキラ。

 それは良いとして。


「……ネズミの魔物にチーズ投げつけられて、服がべちょべちょだ……」

「一応、予備の服があればそれと入れ替えると何故か消えている仕様なんだが……」

「予備なんて持っていないから、この格好?」

「ワンピースに一回なって、元に戻せば良いんじゃないのか?」

「それだ!」


 とヨウタは一瞬の恥は許容しようとした。

 まさかまた自分からこんな服を着ることになろうとは、と嘆きながら服を変えていくけれど、


「何でもとに戻したらチーズのっかった所だけ穴が開いているんだ!」


 ヨウタは悲鳴のような声を上げた。

 だって穴をあけられた服が元に戻らないから。

 そこでそれを聞いていたアキラが、


「何でだろうな。やっぱり“村人B”だからか?」


 そのアキラの台詞にヨウタはびくっとする。

 これはもしや、“魔性”属性の効果ではないかと。

 だからこんなかろうじて大事な部分が隠されている状態になるのだろうか。


 仕方が無しにワンピースに着替えるヨウタ。そして、


「アキラ、またお金貸して欲しい」

「わかった。今度は少し防御力の高い服にしよう」

「……うん」


 こんなこと続くくらいならそうしようとヨウタは女の子の服を着ている自分に嘆息したのだった。









 ようやく目的のものが手に入る場所にやってくると、五組ほどの列が出来ている。

 何でも伝説の剣は、一組ずつ部屋に入らないと出現しないらしい。

 つまり引き抜いても引き抜いても何本も現れる伝説の剣。


「……伝説の剣て何本あるんだ……」

「じゃないと、ゲームとしては取り合いになるからな。そこそこ大きいイベントに必要なアイテムだから、人数が多くないといけないから剣の本数も必要だし」

「なんだかな……」


 と思いつつ順番が来て、なにやらカッコイイ意匠の剣が地面に突き刺さっている。

 僕もこういった県をもって格好をつけたかったなとヨウタは思った。

 そしてその剣に向かって、それをアキラが引き抜こうとすると、


「これは選ばれたものにしか抜く事のできない剣、抜く事ができれば認めよう……おぬしが主だと」

「そうだな」


 そう答えてアキラは引き抜くと、おめでとうという声が聞こえて光が周りで弾ける。

 きらきらと周りで光が踊ってから、またもとの暗闇に戻る。

 今のが引き抜いたときのイベント映像らしいとヨウタが気づいた所でそれはすでに終わっており、


「よし、これで移動できるな。次の人が待っているから行くぞ」


 そんな作業を終わらせたような気軽なアキラの声を聞きながら、有難みがない伝説のアイテムだなとヨウタは心の中で思ったのだった。 

 そんな帰り道、ヨウタは道中で悪い山賊に襲われていた。

 ちなみに出会い頭に起こるイベントだったので、アキラ達の目の前でヨウタは二人の山賊に手を押さえられて、もう一人に足を抑えられて涙目になっていたのだが、


「や、やめて……放してぇえ」

「へえ、良い声で啼けぇ」

「あの……僕、男なんですが」

「これだけ可愛ければ男でも良いだろう」

「何で台詞がさっきの人達と同じなんですか!」

「ごちゃごちゃとうるさい! さっさと……」


 そこでふっとヨウタに声をかけていた男の後ろに人影があらわれる。そして、


「……さっさと何だって?」


 いつの間にか動けるようになったらしいアキラが気づけばヨウタを襲おうとしている男の背後に立ち、怒ったように微笑みながら剣を引き抜いたのだった。








 ヨウタは泣いていた。


「うぐっ、ぐす……ぅう」

「……助かったんだからあれくらい良いだろう、いい加減泣き止めよ」

「……あんなもの見せられたら、誰だってこうなるわ!」


 そんな再び泣き出すヨウタにアキラは嘆息する。

 先ほどの山賊との戦闘で、伝説の剣“ウェアカッター三式”をアキラが使ったのだ。

 それによりびりびりと服が破られ顔を赤らめる男達という……。


 それを見てヨウタは先ほどからこの状態だった。


「女の子……」


 そう往生際悪く嘆き悲しむヨウタに、アキラはすっと伝説の剣“ウェアカッター三式”を向けた。


「! アキラ、一体何を……」

「これだけ可愛ければ男でも良いだろう」

「じょ、冗談……だよね?」

「……いい加減、女の子女の子と煩いから……ヨウタを“女の子”にしてやるよ。まずは手始めにヨウタの服をびりびりにしてくれるわ!」

「ぎゃああああああ」


 そう叫んでヨウタは逃げ出し、アキラが追いかけていく。

 実は女の子という事ばかり言っているヨウタに、アキラが少し嫉妬してしまったからだとか……色々な鬱憤がアキラにたまっていたのだ!

 そんなこんなでヨウタは一人で逃げ回っていたのだが、


「こんな所にカモがいやがったぜ!」


 気づけば悪そうな風体の輩というか敵キャラにヨウタは捕まってしまう。

 またこんなイベントがと思いつつも、ヨウタは僕だって戦えるんだとゴムのナイフを取り出して攻撃した。


「あたたたたたたたた!」


 変な掛け声を上げつつ、ごすごすとゴムのナイフを突き出すも、敵は平気でしかも、


「ぺち!」


 ヨウタは軽く敵にはたかれて、それだけで、


「うぎゃああ、体力が半分以下に……え? 何で僕の襟首を掴んで……」

「かもーん、触手君!」


 敵キャラの呼び声と共に、そこで銀色の金属光沢のある触手が現れて、腰周りに巻きついて空高く連れ攫われる。

 ヨウタはまた変な事をされるとじたばたしていると、


「ス、スカートをめくるなぁああ、すーすーするよおぉ」


 ぺらりとスカートがめくられかかって……そこで捕らえていた蔓がぶちっと切られた。

 そのまま地面に落ちたヨウタは悲鳴を上げるも、アキラにお姫様抱っこで受け止める。


「た、助かった……アキラ、ありがとう」

「……最低限の防御を強化しよう、ヨウタ。でないと俺も幾つ体があっても足りないぞ……」

「ご、ごめんなさい」

「……ヨウタが悪いわけじゃない。じゃああいつらを倒すから」


 そう、ヨウタを降ろしてアキラは敵に挑んだのだった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ