第五話 戦闘
なぜこんなことになったのか?
ゴブリンキングの配下、ゴブリンオークのギギギャは低い知能でそう思わずにはいられなかった。
人間が【蛮族の森】と呼ぶこの森では数人の集団から村と呼べる規模まで沢山のゴブリンが存在していた。
しかし、数年前に現れたゴブリンキングによって瞬く間にゴブリンは統一されていき現時点では小国程度なら有利に戦えるほどの戦力を整えていた。
そんななかでギギギャはゴブリンが統一された時に配下となったギギギャはゴブリンキングやその補佐をしているゴブリンシャーマンに酷使されていた。今回襲った蛮族の森唯一のゴブリン以外の村を襲ったのもそれが原因だ。
村の男は皆殺しにされ若い女は全てゴブリンキングへの貢ぎ物となった。
監視役のゴブリンウィザードが目を光らせており手をつけようものなら即座に焼き払われた。知能が低いゴブリンは既に十数匹が焼き払われた。
それを見るたびにギギギャは心を締め付けられる思いであった。友人のグギャギャと違いこういう行いを嫌うギギギャは心の中で何度もゴブリンウィザードに呪詛の言葉を吐く。
そして今まさに若い女を運ぼうとしたときに悲劇が起きた。
村の反対側から俺より少し小さいくらいの蛇が現れたのだ。
しかし、ギギギャには分かった、いや、ここにいるゴブリン全てが理解した。あいつは俺たちを軽く越える化け物だと、本能で理解した。
そこからは地獄絵図であった。あいつが放つ黒い稲妻や黒い炎によって数体ずつ殺されていくのだ。それと合わせて逃げるゴブリンもいた。俺は無理だとわかりつつ立ち向かうように言うが殆どが俺の声を聞かずパニックを起こしている。聞き入れたゴブリンも怯えながらの全身のため呆気なく殺されてしまう。
何時もならこんなことにはならないのだが理由としては督戦隊であったゴブリンウィザードは真っ先に逃げたためだ。このせいで既にゴブリンの士気はがた落ちだ。
ギギギャは自身の武器である通常のゴブリン程はあるこん棒を構えて蛇に突撃した。このまま生き残ってもゴブリンウィザードが自分の行いを棚にあげて責任を全て俺に擦り付けようとするだろうからそれならばここで果てた方がいいと思ったためだ。
蛇はギギギャの接近に気付き黒い稲妻を放ってくるがそれをこん棒を盾にして防ぐ。多少はダメージが入ったが致命傷ではないので無視して突っ込む。
蛇はまだ向かってくるギギギャに驚きつつも黒い炎を放ってくるがこん棒を振り回すことで炎を回避する。
これで蛇との距離はかなり短くなった。あと少し近づけばこん棒を当てることが出来る。
しかし、ここに来て急に体が重くなった。普通のゴブリン程度なら押し潰されて動けなくなるほどであるがゴブリンシャーマンの放つ魔法よりは威力が低い。
幾度となくその魔法を受けてきたギギギャにとっては体が少し思い程度である。ギギギャは遂に蛇を射程圏内におさめこん棒を振り上げるが瞬間目の前に黒い稲妻が広がり自身の体が焼かれる激痛を一瞬感じて意識を失い二度と目覚めることはなかった。
向かってきたでかい異形の者には驚かされたが初級重力魔法と中級闇魔法を合わせて仕留めることが出来た。
既にゴブリンは村の外に逃げており辺りを見回しても村の生き残りの女しかいない。
その村娘も私の姿に恐怖しているのかこちらを見る瞳には恐怖が宿っている。
私が少し動く度に体をビクリと震わせる。
それに私はため息を吐くがそれすらも恐怖の対象に写るようだ。
私は村娘に近付き話しかける。
「安心しろ。別に食べたり殺したりはしない」
村娘は私が話したことに驚いたのか瞳に驚愕を出しているがやがて年長の女がおずおずと声を絞り出すように言った。
「本当…ですか?」
村娘の疑問に疑うのも仕方ないと思いつつ私は返事をする。
「ああ、勝手ながら私の創造主がこの村で比較的形が残っている家に寝ていてな。その安眠を妨げようとしたしたこいつらを排除したに過ぎないからな」
「そ、そうですか」
そう声を出す村娘だけでなく他の村娘も多少安堵しているのが分かる。
「さて、私は創造主の方に戻るとするよ。何かあったら出来ることなら手伝おう」
「あ、ありがとうございます!」