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ある夜会の御披露目(独白)  作者: るでゆん
3/4

side・クレフ

ラストに予定していた方が先に出来たので


落ちこぼれ王子改めて、復興の祖をやることになった王様の独白です


 王座がこれほど重いとは……


 華やかなシャンデリア、着飾った華々に他国の要人達。

 今日からは私も、彼らと同等、いや、彼らの上に立ち、日々を生きる。

 敵兵の襲撃を気にし、魔法での精神的な切り崩しに対処し、血筋近きもの同士で潰し合う。そんな毎日を五年近くも続けた。

 ようやく勝利し、血で安寧を勝ち取ったと思ったのに。


 王座がこれほど重いとは……


 私はクレフ、クレストファー・レモテ・ルニエ・オルゴダ。

 オルゴダ王国、クレストファー一世となったもの。


 元々は優秀な兄上方の陰で静かに生きるはずだった。あの日、思い立って早朝に少数の従者と共に遠乗りにでた。昼からは家族がみな集まり、皇太后陛下の喜寿を祝う式典に参加する予定となっていた。早目に帰るつもりが、つい興がのり、ぎりぎりの帰城となってしまった。


 馬を急かす視線の先に内門が見えてきたその時、"それ"は始まった。


 城の本宮には結界が張られ、帰城は叶わなくなった。なんとか入ろうとすべを探したが見つけられる前に城が落ちたのだ。

 あるいは、兄上達ならば、城へと入る隠し通路の1つも知っていたかもしれないが、数にすら入らぬ、第5王子ではそれは望めなかった。


 私には突然湧き出したかに見えたその軍勢は、王都を包囲し、民草をも逃がさず、魔法で、投石機で、そして自らの手で、昼夜を問わず蹂躙した。


 我が国の軍部も抵抗したが、不意をつかれ形勢が決まっており、その力が十全に発揮されることは、ついになかった。


 それを知ったのは随分後の事であるが、王族の祝いに駆けつけるという名目で、かの国から小規模移転の申請があった。そのため、一部結界を緩めていた所に、強大なマジックアイテムを使い無理に軍勢を送り込んできたらしい。


 城が落ちる前、半死半生で脱出してきた騎士により、私は王命を授かった。そこに恭しく差し出された血濡れの書状を震える手で開けば、中は白紙。

 聞けば、側使の中でも、若年のもの、外に家族がいるものを優先し、多くの者に王は書状を持たせて王都を脱出するように指示したそうだ。無論、使者には護衛をつけてやり、王座の間に残っているのは、王族と王命を無視した古参達だけとなったと、息を引き取る前にその騎士は嘆いていた。


 周囲より、私だけは…と逃げるように諭され、白紙の王命を握りしめ当てもなく逃走する私が家族の死を知ったのはそれから半月後の事だった。

 第二王女であり、今回の反逆を画策した王外戚の遠縁に当たる姉上だけは生き長らえたが、かの人も幽閉されて、無理矢理結婚させられた。


 獅子身中の虫になる、と気丈に笑って私の逃走を助けてくれた姉上の顔をまっすぐに私は見られたのだろうか。


 それから、アーゼルやリズと出会い組織も軌道にのり始めた頃、アーゼルが少女を連れてきた。「銀鬼」「瞬きの大量虐殺」とも異名をとる少女、ゼラとの出会いは我ら解放軍の活動を加速させた。


 策略にすら恐ろしい才能を見せ、いつしか「千変万化の差し手」とも呼ばれる、一軍と同等の働きをするその少女を、側近たちは妻もしくは側室に迎え、この国の礎とするように迫った。

 そもそも、ゼラには他に目的があり、それを調べるついでに我らを助けてくれているだけだ。ゼラに手を出すことは出来ない、と拒んだけれど一部の部下を止められず薬を盛られた。


 ゼラには薬は効かない。それを知らない側近が眠っていると思い込み、口を滑らせたらしい。魔封じで拘束された姿で私と会った彼女は、炯炯と瞳を冷たく輝かせ、ここを去る、と宣言した。


 恥も外聞もなく懇願し、今日この日まで滞在して貰ったが、明日よりは世界でも有数と言われる彼女の加護もなくなる。


 いや、今ですら本来はないのかも知れない。

 一部の隙もなく、美しいドレスに身を包み、輝く銀髪をまとめ上げる。髪を飾る生花、北方の高地でしか咲かぬその花の花言葉は「不跪なる愛、天上の慈雨」だったか。


 人妖蔓延る夜会で一際は異彩を放つその姿に、多くの者は気圧され、その後ろに立つ私への挨拶も自ずと丁寧になる。これも全て仲の良い兄貴分の為だと君は言うけれど、私はそれでもとても感謝しているんだ。


 さて、そろそろ、君の兄貴分のアーゼルの婚約を発表しなくては。王として、彼が裏切らない限り、君と仲が良い限り、私は彼を、彼の奥さんも含めて大事にするよ?


 だから、ゼラ、たまにで良いんだ、この国に来て、黎明期を乗り切る手助けをしてほしい。血で購い、これからも維持していかなくてはいけない、私の役に立ってくれ。











お読みいただきありがとうございました

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