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新たなる仲間、えっとモンスターのことね

 困った時はと、もうすっかり仲良くなった門番のモバールだ。とも思ったが、モンスターのことならやっぱり冒険者ギルドか。

 リンデさんはっと…やっぱり長い列ができてるな。それにあんまり業務と関係ないことで手を煩わせるのも悪いしなぁ。



「それで、何かこの辺で心当たりのモンスターはいませんか?」


 暇そうにしていた副ギルド長と別室で煎餅を食べながらお茶をすすっている。


「これは初めて食べましたが、ばりばりと固いものの美味しいですな」


 トラックに積んであった俺の非常食をお茶請けに提供した。いつも彼には無理ばかりいってるし、たまにはね。

 俺はそれより、とモンスターの話に戻させた。


「人間に近いタイプのものではなく、力と持久力に優れたモンスターですか。クロウラーとかどうですかね。町の近くのではなく、1日程度歩いたところにある森の奥に体長1メートルくらいの芋虫がいると聞きます」


「芋虫ですか… 他にはなにか心当たりはありませんか?」


「ロングライトレッドホーンなどいいかもしれませんな。大きな牛タイプのモンスターで、草原を1日半ほど行くと大きな岩がいくつかあるのですが、その付近に生息すると聞きます。あと、人型になってしまいますが、西に1日ほど歩いたところにある洞窟にゴーレムがいるそうです。なんでも昔魔法使いが作り出したらしいのですが、倒してもしばらくすると復活してしまうという話です」


 情報をいくつか仕入れた俺は副ギルド長に礼をいい、ジルと町を後にした。

 太陽は真上を少し過ぎた辺りだが、ジルに乗って移動する俺は人が歩く早さと比べ物にならない。スピードメーターがなく、風を直にきって走るためよくは分からないが、体感的には時速100キロメートルはでてるんじゃないかと思う。

 彼女に出会うことができて幸運だった。いっそ運送業ではなく、タクシーでもやるかと考えたが、ジルは俺以外乗せないし無理だよな。

 町から1日というそこには1時間もしないうちに着くことができた。洞窟もジルのこっちから湿った匂いがするとの言葉に従って進むとあっけなく見つかった。

 

「いくぞ、いいな」


 洞窟から少し離れたところでジルの背を降り、気を引き締めて声をかけた。と、そこであることに気がついた。明かりを持ってなかった。


「すまない、松明の代わりになりそうなものを用意するから、やっぱりちょっと待ってくれ」


(主よ、ゴーレムならすぐそこにおるぞ?)


 ジルの言葉に洞窟を見ると、入り口から数メートル入ったところにゴーレムが突っ立っていた。

 そうだよな、ゴーレムって特定の場所を守るって感じだったよな。入り口で洞窟を守っていてもおかしくないわな。

 暗い洞窟の奥での戦闘を考えていただけに拍子抜けだ。


「あはは、そうだな。気を取り直していくぞ。ゴーレムは動きこそ遅いものの力はとても強いらしいから注意しろよ」


(あいわかった)


 俺はいつものように借りてきた剣を手にジルに声をかけ、ゴーレムに向かって走った。ゴーレムは微動だにしない。いや、洞窟部に一歩足を踏み込んだところで動き始めた。

 両手をあげ、力強く振り下ろしてくる。俺は後ろに下がりかわすが、ジルは身を低くして突っ込みゴーレムの足に牙を立てる。一瞬にして足の一部を噛み千切る。偉いぞジル、といいたいところだが、ぺっぺっと口の中のものを吐き出している。


(主よ、口の中ががりがりするぞ。こやつの体は石のようじゃ。もう二度と噛み付きたくはないわ)


「ゴーレムは土とか石とかでできてるからしょうがない。爪で攻撃するか体当たりでいけ!」


 手にした剣を力任せにゴーレムに振るったが跳ね返された。まぁ相手は石みたいなものだし無理もないよな。それとモバールよすまん。刃が少しかけてしまったわ。

 ジルは前足で攻撃してみたりもしていたが、体当たりの方が効果があるようだ。幾度目かの体当たりでゴーレムの右腕がミシリと折れて落ちる。


「よくやった、ジル。だがこの後どうすればいい? よく考えたらテイムのやり方なんかしらんぞ」


(とりあえず儂があやつを止めるので、それから考えてみればよかろう)


 ジルは言葉通りに体当たりでゴーレムを押し倒し、その巨体を使いゴーレムの四肢(右腕は既に壊れている)を押さえつけている。

 確かあの時は頭にジルの声が響いたんだったよな。相手を屈服させればいいのか? 剣をゴーレムに突きつける。


「ゴーレムよ、俺に仕えろ、そうすれば命は助けてやる」


「…」


「ゴーレムよ、どうだ?」


「…」


 なにも反応はない。


「ジル~、どうすればいい?」


(そうじゃのう、儂の場合は… そうじゃ、あれじゃ。どっぐふーどを奴に与えるのじゃ。儂はあれでいちころじゃったのじゃ)


 ジル用にと荷物袋に入れていた500グラム入りの袋を開け、地面にばらまく。


(もぐもぐ、やはり美味いのう)


「おい、何やってんだお前」


 ゴーレムを組み敷いたまま器用に地面のドッグフードを口にしている奴に向かって言い放つ。


(主よ、石の化け物はこのようなものを食すのかの?)


 騙されたー

 撤退だ、撤退ー!

 俺の言葉を他所に全部のドッグフードを食べ終えてから悠々とジルは洞窟の外へとでてきた。


(主よ、美味かったぞ)


 くそー、腹がたつー。

 どこかでモンスターテイマーについて詳しく調べるか誰かに教わる必要を感じながら、ゴーレムはとりあえず保留として一度トラックのもとへ向かった。

 あったあった、これだ。ダンボールの山からどうにか引っ張り出した箱には、こんなの誰が買うんだよと突っ込みたかったが牛用混合飼料お試しセットと書いてあった。

 俺を乗せたジルは草原を駆け抜け副ギルド長の言っていた岩場へと向かう。



(主よ、餌の匂いじゃ)


「どこだ何も見えんぞ」


 ジルの嗅覚は俺の視力以上なのだろう、さっぱり何も見えない。


「相手に気取られない程度に近づいてみてくれ」


 近付くにつれようやく俺にも見えるようになってくる。そこには巨大な牛型のモンスターがいた。大きくて角の短い奴が1頭、それより体は一回り小さく右側だけやけに大きく赤い湾曲した角をもったやつが1頭、そいつらは悠々とを食んでいる。

 バッファローは大きくなると1トンにもなるというが、大きい奴はゆうにその3倍の3トン、小さい方も2トン強はありそうだ。

 こいつらなら俺の愛トラックを余裕で引いていけること間違いなしだ。


「ジル、やつ等をあまり傷つけずに動けなくさせることはできるか?」


(主よ、倒せといわれれば容易く屠る自信はあるが、捕獲しろというのはさすがに無理じゃ)


 ジルはシルバーウルフという種で狼としてはとても大きいが、それでも体重は200キロいかないくらいだろう。ジルと比べてもあの牛たちとは10倍以上の体重差があるのは明らかだ。

 力押しは無理、赤い布切れをひらひらさせてというのも考えたが、あれは実は関係ないらしい。余談だが、実際のとこ牛は色を区別することはできず、ひらひらと動く布に興奮しているだけだという。

 おっと、思考が違う方向にいってしまった。


 落とし穴…あんな巨体を落とせる穴を俺とジルだけで掘れるわけはない、却下。

 追い込む、誘い込む…ここって草原だしな、いくつか大きな岩があるが行き止まりになっているような場所はない、そのため却下。

 う~ん

 罠…いや、なにも道具を持ってないし。草を結んで足をひっかける罠なら作ることができるかもしれないが、草にあの巨体を止められる強度があるかどうか怪しい。それにあの巨体が足を挫くと再起不能のなりそうな気もするし却下。

 何も思い浮かばない…


「ジル、とりあえず近付いてみるから、あいつらを怯えさせないように小さくなれ」


 俺の言葉に従い小さくなったジルとともに俺たちは普通に歩いて近付いていく。俺たちの接近に気付いているはずだが、牛たちは気にする様子もなく草を食んでいる。

 角の短い方――雌だろうか――の眼前まで歩を進め、肩に担いでいた箱の中の袋からペレット状の粒粒とコーンが混ざったものを一掬い地面にばら撒いた。最初何事かと様子見だったが、すぐに食べ始めブモゥと一声なくと片方の角だけ長いやつも近付いてきて一緒に食べ始める。

 さて、どうするか。とりあえず念じてみたが意思が通じる気配はない。


「ジル、変身しろ」


(おうよ)


 俺の言葉にジルは子犬から大きな銀色の体毛の狼へと姿を変えていく。ブモモ、牛たちの口が止まり、体に力を入れいつでも動ける準備をし、こちらを油断なく睨みつける。


(おおかみ来た。おでたたかう、かあちゃん逃げる)

 

 頭にジルのものでは声が入ってきた。こいつか? 雄牛の方を見る。


「俺の言うことが分かるか? 分かったら首を縦に振れ。俺たちはお前を襲うつもりはない、狼は下がらせる」


 ジルが少し距離をおくと片側の角だけ長いやつも大きなやつも俺の言葉通り頭を下に少し下げた。

 やはり、さっきの声はこいつらか。


「さっきの食い物をここにあるだけ全部やるから俺の仲間になってくれないか?」


 持っていた配合飼料を全部彼らの前に撒いた。


(こんなうまいもの初めて食った、おで仲間になる。かあちゃんもそう言ってる)

 もう一頭がこくこく、首を縦に振っている


 なんとかなるもんだな。予想外にあっけなく仲間にすることができ大満足だ。これで愛トラックを動かすことができる。


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