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なに~、あいつもこの世界に!!?

 翌朝待ち合わせの場所に向かい、護衛依頼契約成立、の予定がそうもいかなかった。

 俺のギルドカードを確認した商人が文句を言ってきたのだ。ギルドカードを返してもらいそれに目を通すと



トラクニ・クツハラ

モンスターテイマー

Lv1

B

モンスターテイム



 と表記されていた。あぁ、職業がトラック野郎からモンスターテイマーになってしまったんだとシミジミ思ってたが、あることに気がついた。

 レベル1 !!?

 確かに昨日ランクBになったときの俺のレベルは1だった。だが今は結構あがっているはずだ。

 商人に少し待っていてもらうよう頼み、ギルドへ走る。


 朝の時間でギルドは混み合っていた。俺がジルっと小声で口にすると周囲に一瞬緊張が走る。受付をみるとリンデさんが首をぶんぶんと横にふり、手を斜めにクロスさせていた。

 しょうがないなと思い、受付の横へと行き、奥を覗いて声をかける。


「副ギルド長さん、いらっしゃいませんかー」


 メチャさんが呼びに行こうと立ち上げりかけたが、奥からいそいそと副ギルド長が出てきた。


「トラクさんどうされました?」


 汗を拭き拭き俺に尋ねる。


「いや、護衛依頼を受けようとしたんだけど、これを見せたら難色をしめされちゃってね」


 左右に振っていたカードを副ギルド長に渡す。

 それを見ても最初は訳がわからないようだが、ハッとした顔をするとすぐ更新しますので、こちらへと奥の部屋へと案内してくれる。

 そして新しく掘られたカードには22という数字が刻まれていた。



「すみません、お待たせいたしました」


 商人にカードを見せると頬をゆるめ、待っていただけのことはありました。流石Bランクですね、道中よろしくお願いしますと護衛依頼の話がまとまった。出立は明日の朝だ。


 今日一日時間の余裕があるので、なかなか決まらない俺の出した依頼を取り下げ、もちろんリンデさんじゃないカウンターでね。そしてひとりで俺が最初にこの世界で目が覚めた場所を探して見ることにする。




「ジル、こっちで間違いないのか?」


(間違いない、主の臭いがこの先に方にずっと続いている)


 俺はなんとなくどっちから来たのか分かるだろうと安易に考えていたが、目印も何もない草原だったため見当違いの方に進んでいた。

 それがジルに今回の目的を教えたことで劇的に改善されることになる。

 一度町に戻りジルの鼻を頼りに俺の臭いの跡を探してもらう。ほぼ森以外には行っていなかったので、それとは違う方向へと続いている臭いの道は1本だけだったそうだ。まぁその通りだしね。

 道が判れば後は早い。ジルの背に乗り俺の5時間の道のりを凄い速さで進んでいく。


 草原には見慣れぬもの、いや、見慣れすぎていたものが遠くに見えた。急げ、ジル。ジルを急かせる。

 そこにあったのは俺の愛車、クツバラ丸三世号だった。初代の一世に比べると随分小さなトラックになってしまい現在は4トン箱車だが、それでも初代からずっと天照大神様のペイントだけは今でも続けている。

 テンション上がってしまったが、まずは落ち着こう。深呼吸だ、深呼吸。スーハースーハー


 なぜこれがここにある? あそこに見える乾いたゲロは俺が目覚めてすぐに吐いたやつだから、ここがこの世界の最初なのは間違いない。

 しかし、俺が目が覚めたあの時にこれはなかった、それも間違いない。

 キーは刺さったままだ、エンジンをかける。うんともすんともいわない。というか、バッテリーがあがってるのだろうかまったく反応しない。どういうことだ? こちらに来てまだ数日だし、バッテリーがあがるはずはない。

 ひと通り点検してわかった、バッテリーも空になってるし、軽油も空になっていた。火を放り込んでも全然反応しないだろうくらいに綺麗さっぱり空になっている。流石にこれではお手上げだ。


 次は後ろの荷物だ。リヤドアを開けた先には、ペットフードの箱が山積みになっている。ジルが食べていいか聞いてきたが、人様の荷物に手をつけるわけにはいかない。とも思ったが緊急事態だ、耳元近くでハァハァと荒い息が聞こえ、顔のすぐ横にあるジルの口からは大量の涎が滴り落ち、俺の肩をべちょべちょに濡らしている。

 

(主よ、どっぐふーどとやらをもう一度味わいたいのだが)


 あぁ、その気持ちは俺の肩にしっかり伝わってるよ。


「このうつわに一杯だけだからな」


 キャンペーン用 容器と書かれたダンボールを開けると出てきたグラタン皿くらいの器に試供品でもらったのと同じドッグフードを入れてやるとジルは凄まじい勢いで一瞬のうちに平らげる。


(まだ足りぬぞ、もっとくれ)


「これは預かりものだし、そうそうやるわけにもいかん」


(酷いぞ、主よ)


 ジルは大きな体で纏わりつき、尻尾をぶんぶんと振っている。その仕草にそれならと、もっとあげたい気にもなったが、甘やかせてはなるものかと我慢した。もっとも子犬状態でやられたら我慢できたかどうかは分かったものではないがな。

 さてと、こいつをどうするかな。俺は愛車のクツバラ丸三世号を眺めた。

 燃料がないので動かすことはできない。かといって盗まれても困るので放置するわけにもいかない。といっても運べるやつがいるとも思えないが、誰かに所有権を勝手に主張されるのもやっかいだ。う~ん

 確か俺の愛車の最高馬力は260だったよな、となると通常時は馬100から200頭分の力が必要か。車体と荷物を合わせた決められている最大総重量は8トンだが、今の荷物はグッズもあるがほとんどはペットフードだから重量的にはだいぶ軽いはずだよな。


「ジル、この辺りで重い荷物を運べそうな力が強く、持久力もあるモンスターってどこかにいないか?」


(この近くではないが、迷宮の奥に住むというミノタウロスというのは力も強くタフだという噂を聞いたことがあるのう)


 そう聞いて俺は思い浮かべた。頭が雄牛、体がムキムキマッチョの男たちがトラックを引いていく姿を。いや、駄目だ。これは絵面えづらが悪すぎる。

 もっとこう、二足じゃなくてね、四つ足とか人間を連想させないのがいいんだけど。

 結局、ジルからはこれといったモンスター情報は得られなかったので町に帰ることにした。

 もちろん狼たちに交代で守らせるよう指示を出したのは言うまでもない。俺の愛車に手を出すことは許さん。

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