ギルドの受付嬢 ハァハァ
俺は門番に感謝の言葉を伝え、教わった冒険者ギルドとういう建物に入っていく。
扉を開けると中にいた男たちが一斉に俺のほうを見た。異分子を見る目だ。いや、まぁ確かに服装とか黒い髪に黒い目とか珍しいのかもしれんが、ちときついわ。
ここはまぁなんだ所謂役所、それも寂れたというか、昔の役所っていった感じだ。
カウンターが3つあり、そのうちの2つは向こう側に人が座ってこちらを見ている。他にはいろんな張り紙を貼った掲示板らしきもの。あぁ、待つための椅子とかは置かれてないな。
とりあえず、受付かしらんがカウンターで聞いてみるか。
カウンターでは順番待ちが3人と4人の列があったので当然4人の列に並んだ。
いや、こっちの受付のねーちゃんの方がべっぴんさんだったんだもん。
金髪さらさらロングヘア、外人にありがちなボヨーンな胸がカウンターの上に鎮座しておられます。そして何よりメガネがきついというか、出来る人オーラをかもし出している。時々メガネの縁に手をあてるあの仕草もなんともいえないものがある。
前の人らが袋から耳やら牙を取り出しうげぇーな気分にさせられつつ、待つこと30分、というかここってなんなんだよ、どんな未開な地なんだよ。
それはいいとして、やっと順番が回ってきた俺はおっぱい様の前に立った。いや息子が立った、じゃなくて上から覗き込むべきか、いやいや、正面から度迫力ダイナマイツに挑むべきか、う~ん…
「どういったご用件でしょうか」
金髪美人が右の指でメガネをくいっと持ち上げ聞いてくる。
「あぁ、すまん。ここは初めてなんだけど、門番が言うにはここで冒険者カードを作ってもらって身分証代わりにするといいっていうんだ」
「わかりました。メチャ、後はお願いね。私はこの方の登録をしてくるから」
メチャと呼ばれた小柄な女性がダイナマイトボディの受付嬢と席を代わる。
というか、あの娘は狐耳なんか仕事中につけて怒られないんだろうか。まぁ、見た目10代半ばってことで許されてるのかもな。
俺は受付嬢に別室に案内され、ついていった。背後の視線がきつかったのは気のせいではないだろう。
女性と向かい合って座ったその目の先には…これがダイナマイトか確かに爆発級だわな、いやいや、違う違う。
コホンと咳が聞こえる。
「確かに男性からそのような目を向けられることはよくありますが、失礼ではありませんか?」
たしなめられ、俺は謝るしかなかった。
「すみません、あまりにあなたが美しく、そして素晴らしいプロポーションだったもので」
「……」
女性は顔を真っ赤にして口をぱくぱくしている。
「すみません、失礼な言動でした。謝ります」
最初お世辞のような本音を言ってしまったことを謝罪した。
「えー、今後そのような恥ずかしい発言は控えてください。それと申し遅れましたが私はリンデバーグ・ヘルトンと申します。リンデとお呼び下さい」
上気した頬はそのままに目は元のきついものに戻っている。
「靴原虎国です。仲間からはトラクと呼ばれています」
「それでは靴原さん、こちらに手を置いてください」
町に入るときにやったのと同じように石版の上に手を乗せると、彼女の目がくわっと、そう1.5倍位に大きく見開かれたのにはびっくりした。
「どうかされましたか?」
なんか叱られてからこの娘の前では丁寧な口調になってしまう。
「靴原さん、あなたは素晴らしいです。まずこちらを見てください」
彼女はパスポートサイズの鉄板?らしきものになにやら刻んでいる。
刻み終えたものを見ると
トラクニ・クツハラ
トラック野郎
Lv1
モンスターテイム
そう書いてあった。
「俺の名前が書いてありますが、これって何ですか?」
「は? 読み方も知らないんですか、あなたって人は」
なんかこの人に蔑まれた目で見られるとぞくぞくしてくるのはなんだろう。
「はぁ、すみません、この国のものじゃないもので」
「そうなんですか、世界中どこでも同じものを使ってると思ってましたが、随分と辺鄙なところからいらしたんですね」
なんか最初の印象よりどんどんきつくなってきている気がするけど、気のせいだよね。
教えてもらえるよう頼むと説明してくれた。
上から名前、職業、レベル、スキルだそうだ。
小さな子供がレベル1で普通大人だったら少なくともレベルは5にはなっているはずだと言われてしまった。
ていうか、レベルって何だよ。子供の頃やったふぁみこんのドラ○エかよ。
職業については分からないと言われ、俺がトラックについて説明したがうまくは伝わらなかった。
彼女が驚いた理由っていうのはスキルのモンスターテイムらしい。
これはモンスターを捕まえ、使役する能力のことでとても珍しいものだということだ。
確かギルドの蔵書庫にモンスターテイマーについて書いた本があるので行ってみるといいと教えてくれた。
ちなみに書庫に入るには銀貨1枚を払わないといけないらしい。
入館料に1万円相当が必要とは高すぎると思ったが、とりあえず払っておくことにした。
長々と色々説明してくれたが、俺の視線は机の上のぼにょんとしたものに釘付けであまり頭には入ってこなかった。
覚えているのはなんかランクというのがあり、俺はまだランク外ということらしい。
それとこちらから質問した運送業についてだが、そういった専門的な職業はないらしく、商人ギルドにいけばそういったものがあるのではないかと教えてくれた。
「リンデさん、いろいろと教えてくださってありがとうございました」
「それが私の仕事ですから。ですが、お役に立てて何よりです」
取り付くしまもないとはこういうことをいうのだろうか、だがそれがまたいい!
リンデさんに書庫に案内され、そこで差し出された本を読んでみた。
掻い摘んでいうとモンスターテイマーとはモンスターを捕らえ、使役する…いやいやここはさっきリンデさんから聞いたことと一緒か。
テイミングスキルはモンスターを屈服させ力で従属させる方法が一般的だが、モンスターと心を通わせて仲間にする方法もある。
モンスターは通常レベルはあがらないが、仲間にしたモンスターはレベルがあがることがある。
注意書きとしてレベルをあげたモンスターを野に放つときは注意するようにとある。他の人がモンスターの強さを見誤り倒されるという事故が多発したことがあるらしい。
と、それ以前にモンスターってなんだろって思ってリンデさんに聞きにいこうとしたら、行列が出来ていたので門番のところに聞きに行くことにした。
「モンスターを知らないって!? どんな王侯貴族様だよっていいたいとこだけど、この町の付近は他と違ってほとんどいないからなぁ。いるとすればここを出て町をぐるっと回った先にある丘を越え1時間位したところにある森くらいだな」
「どんなモンスターがいるんだい?」
「結構大きな森だが、入り口付近はジャッカルとかウルフくらいかな、奥に行くと普通のベアやハンギングベア、ブラッディベアなんかもでると聞くな」
「なんか熊ばかりだな」
「いや、ベア種以外もたくさんいるぞ、多すぎてあげられないだけだ。森のモンスターのことを聞くって事はギルドの依頼でもするのかい?」
「いや、俺ってモンスターテイムってスキルを持ってるらしくってモンスターってなんだろってことで聞きに来たんだ」
「テイマーか、凄いな。そんでお前さんレベルはいくつだい?」
「レベルは1らしい…」
ぎゃははは笑ってた門番が笑いをこらえつつ提案してくれた。
「あと1時間もすれば今日の仕事は終わりだから、その後だったら森に行くのに付き合うよ、急いでいけば日が暮れるまでには戻ってこれるだろう」
どうしてそこまで親切にしてくれるのか聞いてみると、交換した100円玉が金貨1枚で売れたのだと満面の笑みで教えてくれた。
俺は1210円を20万円相当にしたのに喜んでいたが、こいつはそれを100万円相当、いやまだ1110円残ってるから200万以上にするだろうことを思ってびっくらこいた。
そのまま俺は門番と雑談をしながら、1時間待つことにする。
その1時間の間に町を出入りしたのは冒険者4人、馬車に乗った商人1人に護衛が2人のみだった。案外出入りは少ないようだ。