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見知らぬ町に来てしまった

「つー、頭いてぇ。昨日は飲みすぎちまったかな。ていうかここどこだよ」


 俺は体を起こすと服についている草を払った。

 と、それより、財布は大丈夫か?


 ズボンの尻ポケットに手をあて確認する。

 よかった、取られてない。

 財布をあけて中を見ると記憶にあるよりは少ないがちゃんとお金は入っていた。


 それよりここはどこなんだよ。

 見渡す限りの原っぱだ。


 誰かに拉致られたか?

 痛む頭に手を当てて昨夜のことを思い出す。


 確かげんさん達と飲みながら昔は俺達おれら運送業も儲かってたよな。デコトラとか乗ってさっていつもと同じく話してたよな。

 そんで確か変な爺さんにあって…

 いや、その前に… あー、頭いてぇ。

 確かふらついてたトラックを見た気がする。最近運送関係の仕事はきついしあの運転手も過重労働だったんだろうな。荷物の上げ下ろしも最近は運転手の仕事みたいになったしな。

 いやいや、そんなことじゃねぇ。

 うーんと、確かトラックが…違うな、そうそう、横断歩道を渡ろうとしていた若いあんちゃん、いや中学生くらいだったかな。

 そいつにふらついてたトラックが突っ込んで来やがったから、咄嗟に小僧の首んとこ掴んで引っ張って助けようとしたんだよな。

 そんでどうなったんだっけか…


 そうそう、ここで爺さんが…なんで爺さんがここで出てくるんだ?

 まっいいか

 確か…死んでしまうとは何事じゃ、いや違うな。

 なんでお主が死んでしまったのじゃ、あの子供を転移させる予定じゃったのに、とかなんとか言ってたな。


 ていうか、もう8時かよ。

 腕にはめたパチックスの時計を見て驚いた。

 今日は昨夜メーカーから受け取った荷物を新規オープンのペットショップへ朝いちで運ぶ手筈だったよな、社長おやじ怒ってるだろな。


 それよりここはどこなんだよ。まぁ、歩いてればそのうち見知ったところに出るか。


 …2時間歩いても周りは草、草、草じゃねーか。知っている場所どころか全然、おっあれなんだ?


 遠くに見えたのは大きな塀だった。見渡す限りの原っぱに塀に囲まれた場所がある。遠すぎてそれの規模は分からないがとりあえずそれを目指すことにしよう。


 あれから3時間、周りに山などの遮るもののないところで遠めに見えた場所は実際はやけに遠かった。

 ようやく到着した目的地はぐるっと塀に囲まれた町のようだった。

 門から窺うことができる町の中は中世ヨーロッパ風の石造りの建物が見かけられる。

 門番はというと鉄の鎧を着て槍を構えていた。

 映画の撮影だろうか、でもこんな大規模な映画の話は聞いたことないしなぁ。


「おい、お前町に入るのか入らないのかどっちだ? 入るんだったら身分証を見せろ」


 門の前で突っ立って考え事をしてたら、門番から話しかけられた。


「これでいいでしょうか?」

 

 俺は財布の中から免許証を取り出し提示した。


「??? 少々お待ちください」


 門番は免許証を確認すると、驚いたようにそれを引っ掴み町の中へと走っていった。

 なんかまずかったかな…


 20分位待っただろうか、先ほどの門番と20人位の男たちがわらわらとやって来た。


「お待たせいたしました。まずは町長とお話ください」

「はぁ」


「お主がこれの持ち主か。確かに瓜二つじゃ。この見たこともないようなカードの材質、寸分違わぬこの絵、おぬし何者じゃ?」


「へっ? 俺はヤバゲモ運輸に勤めてるトラッカーだけど、それが何か?」


「トラッカーとな、聞いたことないのう」


「あぁ、トラックで荷物を運ぶ運送屋の運転手だよ。この道30年のベテランさ」


「トラックとな、それも聞いたことがないのう。それでお主は何をするためにこの町に来たのじゃ?」


 俺より少し歳は上だろうか50代後半くらいの白髪、いや銀髪の男性がうさんくさそうにこちらを見ている。

 ていうか、この外人さんは日本語うめぇよな。


「いや、昨夜酒を飲んでて気付いたら原っぱの中で寝てたんだ。そんで5時間位かな、そこから歩いてたら町が見えたんでここに来たんだ。で、ここなんて町? 日本にこんな場所なかった気がするんだが」


「酔っ払って起きたら草原の中か。誰かに攫われ捨てられたのかのぅ。日本というのは知らんが、迷い人なら、これ門番あれを持ってこい」

「はい」


 言われて門番が持ってきたのはノート大の石版だった。


「この上に手を乗せるんじゃ」

「は?」

「だから、手を乗せろというとるんじゃ」


 よくわからんが、石版に手を乗せるとひんやりとした感触が伝わってきた。


「門番、どうじゃ?」

「は、問題ありません」


 なにが問題ないのだろう?


「随分怪しい風体じゃが、犯罪者ではないようじゃの。だとしたら町の中へ入ることを許そう。だが、中で騒ぎは起こさぬようにな。それとこのカードは返しておこう」

「はぁ、ありがとうございます」


 俺のどこが怪しいってんだ。確かに汚れちゃいるが、社名が入ったジャンパー、それのどこが悪いってのさ。それよりお前らのしゃれっ気のない一色のみのしょぼい服の方が変だぞ。

 それになんだよ、俺はスピード違反以外犯罪なんて起こしたことねーぞ。

 無事返してもらった免許証を財布に入れ、門をくぐり町長達に続いて町に入ろうとして人だかりに驚いた。


「なにがあったんだ?」「町長が兵士達を連れて門のところに」「なんでも怪しい男が」


 集まっている人々の口からそんな声が聞こえてくる。


「えぇい、何を集まっておる。何も問題はなかった。お前らもこんなところで油売ってないで解散、解散」


 町長の一言で、人々は散っていく。

 

 人が減ったことにより、辺りを見回す余裕ができた。目に入るのは石造りの建物、道を歩く人達の質素というかシンプルな服装、馬も道を歩いている。

 そんな光景に足を止め口をあんぐりとあけていたのは30秒くらいだったろうか。頭を切り替え、先ほどの門番に質問して見ることにした。


「すみません、ここってどこなんです?」


「は? どこってムニャララの町だよ」


「え、ムニャララ? 国の名前はなんていうんだい?」


「はぁ? お前さんそんなことも知らないのかい。どこの田舎から出てきたんだ、いや、あのカードを見ると田舎とも… いや、すまん、ホニャーラ国だ」


 ホニャーラ国? 聞いたことねーぞ。30年位前の学生時代の知識を思い起こそうとしても、昔過ぎてさっぱり出てこない。というか、もともとホニャーラ国なんて聞いたことないはずだ。間違いない。

 金髪が多いしヨーロッパ系のようにも見えるが、こんな貧しそうな暮らしからみるとアジアやアフリカの中の貧しい国なのかな。

 俺って外国旅行したことないんだよな。こういうときはどうするんだろ。


「すみません、日本円両替ってどこかでできますか?」

「日本円ってなんだ?」

「あいあむ、じゃぱにーず」

「は???」


 うーむ、対応間違えたか


「ちぇんじ、まにー」


 財布から千円札と小銭を数枚手に取り門番に見せた。


「なんじゃこりゃーー」


 門番は硬貨を手に凝視している。そして細かい模様をよく見ようと千円札を目のすぐ側まで持ってきている。


「両替できますか?」

「両替って、これどこの国の金だ?」

「いや、だから日本のですって」

「これと交換でどうだ?」


 門番は俺を詰め所らしき建物に連れて行き、腰の袋の中身を机の上に全部ぶちまける。

 そこから出てきたものは鈍い銀色の硬貨が数枚と、赤茶けたたぶん銅貨が30枚か40枚くらいだった。


「はぁ?」


 おれの気のない言葉に門番はちょっと待ってろよとの言葉と共にどこかへ走っていった。

 いや、あんた門番なのに門を放置してどこ行ってんだよと思わないでもないが、いわれるままに待つことにする。


「すまん、待たせた。同僚から金を借りてきた。これに銀貨16枚プラスでどうだ?」


 そんなこと言われても価値が全然分からんのだが。


「えと、この国のお金の価値が分からないんだが、これってどの位の金額なんだ? 例えば平均した4人家族の1ヶ月暮らすのにいくらかかるとか、普通のというかあんたがの1食の食事代がいくらかとか、そういうことを教えてくれると助かる」


「すまん、すまん。まずは俺のというか兵士がよく行く飯屋で定食を食ったら銅貨6枚だ、でエールやなんやかや酒を飲むと銅貨30枚か40枚位かな。4人家族のはよく知らんが、門番としての1ヶ月の給料は銀貨30枚だ。ここにある銀貨20枚と交換してもらえないだろうか」


「銅貨や銀貨ってどういう扱いなんだ? 例えば銅貨100枚イコール銀貨1枚とかか?」


「あぁ、そうだ銅貨100枚で銀貨1枚、俺は持ってないが銀貨100枚で金貨1枚だ」


 とすると今の話から換算すると銅貨1枚が100円程度、銀貨1枚は1万円くらいってことか。

 門番の提示したのは20万円、俺がさっき取り出したのは1210円か。俺が随分得してる気もするが、まぁいいだろう。


「わかった、それでいいぞ」

「おぉぉぉぉ、ありがとう、ありがとう」


 なんか顔をくしゃくしゃにして凄く嬉しがってる気がするが、そんなに日本円が欲しかったのかね。

 まぁ、俺もこの国の通貨が手に入って助かった。


「それと、電話を借りたいんだけど」

「電話ってなんだ?」

「てれふぉん?」


 意味もなくというか俺はいたって真面目に下手な英語で伝えてみる。


「てれふぉん? それも聞いたことないな」

「あぁ、じゃぁいいや。とりあえず町を散策して見るわ。両替ありがとな」


 あー、スマホとか携帯っていった方が伝わったかも、と思いつつも門番のいる詰め所を後にした。

 

「やっぱ、ちょっといい? この町の施設とかこの道を行ったらどういったものがある、どういった場所に出る、とかそういったことを教えて欲しいんだけど」


 詰め所をでて数歩歩いたところで、すぐに門番のもとへ戻ってきた。


「そうか、この町初めてなんだよな。身分証もこの国も物を持ってなかったし、とりあえずこの道を真っ直ぐというか、そこに見えてる大きな建物、あそこが冒険者ギルドだ。そこで冒険者カードを作ってもらうといい。それが身分証になる。で、隣が宿屋兼飯屋になっている。冒険者や俺たち兵士もよく食いにいく安くて量の多いお奨めの飯屋だ。あとは、というかとりあえず冒険者ギルドに行ってからそこで聞くかまたここに戻ってくるかするといい」


本日は複数話投稿予定


11/6 12:07 文章一部変更

-今日は朝いちで築地から大阪までの仕事が入ってたはずなのに、おやじ怒ってるだろな。

+今日は昨夜メーカーから受け取った荷物を新規オープンのペットショップへ朝いちで運ぶ手筈だったよな、社長おやじ怒ってるだろな。

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