幼女の拳
フェアリーオンライン。
国産MMOの中でも異色中の異色作で有名なタイトルだ。剣と魔法の世界で種族はヒューマン、エルフ、獣人、魔族とオーソドックスな内容であるのだが、唯一の特徴にして最大の個性。
それは、アバターが全て10歳前後の女性……即ち、幼女であるということだ。
開発者の趣味なのか、それとも夢見る青少年の願望なのか、プレイヤーの分身であるアバターは、全て幼い女の子しか作成できない。獣人族にすれば身長が一番高く設定できるのだが、それでも150CMまでだ。
断わっておくが、オレは別に幼女マンセーのロリコン野郎というわけではない。妹に誘われて始めたのだ。他にやるゲームもなかったし、オフゲで何か面白いのが出るまで繋ぎのつもりだった。
ところがどうだ。やり始めてみたらこれがまた面白い。意外に戦闘システムも凝っていて、やり込み要素もいっぱいある。
気付けばオレはこのフェアリーオンラインこと、幼女オンラインにどっぷりとはまりこんでいた。
「よし、レベル98達成。カンストまであと少しだ」
PCのモニターに映る金髪ツインテールの少女、エア。ヒューマン種族拳闘士クラスの最高位、メテオブレイカーで、オレのアバターである。
敏捷性を活かした素早いフットワークと、高い打撃力で全クラス中最高の攻撃力と敏捷性を誇る。ただ、防御が紙過ぎて初心者お断りの超上級者向けクラスだ。
「さて、と。これからもう一狩り行くかな。どうせ明日学校休みなんだし」
時刻を確認すると、深夜3時を回ったところだった。ここからの時間帯はプレイヤーの数も減って、サーバー負荷が軽くなるのでプレイしやすい。今のうちにカンストまで頑張ろう! レベル99はまだ誰もなっていないし、一番乗りしたいところだ。
「よし」
イスに座り直し、姿勢を正すとオレは再びプレイに戻った。だけど。
「あれ、なんだか……急に眠い。やべ、狩場で寝落ちしそう……」
なんとか意識を繋ぎ止めようとするけれど、心地よい眠りがオレを底のない沼に引きづり込んでいく。
……。
…………。
……………………。
「ん……」
意識が朦朧とする。まだ体が半分寝ているみたいだ。強い光がオレの目に刺さるように、降り注いでいる。
やべ。イスからずり落ちちゃったかな、ヘンな姿勢で寝たせいか体中が痛い。
とりあえず起きるか。よっこらしょっ、という掛け声を口の中で殺し、体を起こしてオレは立ち上がる。
チュンチュンと小鳥のさえずりが聞こえてくるが、なんだかおかしい。
なんでおかしいのか。それは、ここが部屋の中であるにも関わらず、小鳥の声がリアルに響いているからだ。
それによくよく耳を澄ませると、水の音も聞こえてくるし、草の匂いもする。
もしかしてオレ、寝ぼけて外を徘徊しちゃったとか? やべーよ、17歳で深夜徘徊とか、同じクラスの連中に知られたら自殺もんだよ!
頭を抱えようとして髪に触れた瞬間、さらなる違和感が現実としてのしかかってきた。
サラサラした金髪が、頭上から垂れ下がっている。左右両方だ。ありえない。オレ、髪なんか染めてないし。これじゃDQNだよ。
「何だ、これ……って、ええ!?」
声まで高くなっている。まるで、幼い少女のような……。
戸惑っていると優しい風がふわりと吹いて、オレのはいていたスカートをまくりあげた。
スカー、ト。だと!?
「ま、まさか!?」
黄色いスカートは超が付くくらいに丈が短い。オレは……スカートの上から……オトコの証をつかもうとした。けれどしかし、オレの手はむなしく宙をかすめ、本来あるべき相棒はどこにもない。
「オレのムスコが行方不明だあああああああああああああああ!!」
オレ、女になってる! 何で! どうして!
泣きながら周囲を見回すと近くに小さな川があったので、水面に自分の姿を映してみると……。
金髪のツインテールをストライプのリボンで結った、10歳前後の美少女がいた。
「エア。オレの……フェアリーオンラインのアバター、だ。それにこの場所、見覚えがあるぞ。初期エリアの試練の森じゃん……!」
オレは、どうやらフェアリーオンラインの世界に迷い込んでしまったらしい。それも、自キャラの幼女エアとして。
「おやおや、どうしたんだいお嬢ちゃん」
「え?」
しばらく呆然自失していると、背後から声をかけられた。振り返って見ると、温厚そうなおじさんがニコニコと人のいい笑顔を浮かべている。でも、服はなんだかボロっちいし、一般人に見えないのが気になる。
それに、日本語で話しかけられたけど日本人じゃない。西洋風の顔立ちで、髪は銀髪だった。やっぱりここは、フェアリーオンラインの世界なのか。
「何か困りごとかな? おじさんに言ってごらん」
相当精神的にまいっていたのであろう。オレは涙をぽろぽろ流しながら叫んだ。いや、叫んでしまった。
「オレのムスコが、行方不明なんですうううう!!」
「む、息子? ああ、お嬢ちゃんの弟さんかな?」
幼女がムスコって叫んでいる時点で不審だけど、この際なんでもいい!
「え、ちが……ていうかオレ、お嬢ちゃんじゃないし、男だし!」
おじさんは慈愛に満ちた顔でオレの頭を優しくなでると、かがみこんで目線を合わせてきた。
そっか。今オレの身長、140CMしかないんだっけ。
「かわいそうに。弟さんを探してこんな森の奥深くまで来てしまったんだね。優しいお姉さんなんだね、お嬢ちゃんは。でもここは危ないから、おじさんがお家まで送ってあげよう。弟さんのことはおじさんの仲間に探させるから安心しなさい。きっと、お父さんとお母さんも心配しているだろうしね」
「いや、あの――」
「お家はどこかな?」
右も左もわからないどころか、自分の事さえわからない。不安と喪失感でいっぱいだったオレにとって、このおじさんの汚いけど大きな体は、想像以上に頼もしく見えた。
「えっと、日本の東京の……」
「二ホン? トーキョー? 聞いたことがない村だね。そうか、お嬢ちゃんはご両親と旅をしているんだね。なら、まずはご両親を探さないと。大丈夫、おじさんがお嬢ちゃんを無事に送り届けてあげるから。心配しないで、ね?」
「は、はい。ありがとう、おじさん」
現代日本ですっかり忘れ去られた義理人情。それにこんな所で触れることができるなんて! 優しいおじさんなんだな……。正直、少しうるっときた。
「よし、じゃあひとまずおじさんの家に行こうか。ここは危ないからねえ。怖い山賊さんやモンスターが来る前に、移動しよう。お嬢ちゃんみたいな可愛い子は、山賊にとってもモンスターにとっても、色んな意味で美味しいからね」
「へ? ちょ、ちょっと!」
おじさんは有無を言わさずオレの手首をつかむと、森の奥深くに連れて行った。
ま、いいか。とにかく今はここを離れるのが先か。初期エリアとはいえ、確かモンスターの巣以外にも、山賊団のアジトもあったはず。
おじさんに連れられ森の中を歩いているうちに、少しづつ頭が冷めていく。そうだな。まずは、安全な場所で落ち着こう。
どこか心の落ち着ける場所で冷静になって考えてみよう。そもそもこれ、夢かもしれないし。
けれど、オレのお腹がぐうと鳴って、あまりにもリアルな空腹感が襲い掛かってきた時点で夢ではないと実感させられた。
「ははは。お腹が空いたのか。よしよし、おいしいスープを作ってあげるからな、お嬢ちゃん」
おじさんは屈託のない笑顔で豪快に笑い、オレの頭を優しくなでた。
「は、はい。ありがとうございます」
「ほら、着いたよ」
おじさんが途中で立ち止まると、目の前には洞窟があった。
ん? 洞窟? ていうか、この洞窟どっかで見たぞ。どこだっけ?
「見てくれはちっと汚いが、まあ住めば都だ。ささ、おいでおいで」
「は、はあ」
洞窟の中は、土と腐った匂いと、汗とおっさんの臭いが混じったなんとも形容しがたい激臭で満ちていた。
「頭!」
入ってすぐ、見るからに山賊の手下その1みたいな男が近付いてくる。
ここって、もしかして……いやいや! こんな優しそうなおじさんが山賊なわけないよな。確かに汚らしい毛皮をまとった山賊っぽい服装してるけど……うん、あれはファッションだろう。山賊風ファッション。そう考えれば合点がいく。
「頭! お戻りでしたか、実は厄介なことになりそうで――」
「バカ野郎!! 大事なお客さんの前ででけえ声出すんじゃねえ!」
「へ、へい」
おじさんが一喝すると、男は委縮する。が、すぐにオレの顔を見て卑猥な笑みを浮かべた。
「お。頭、戦利品ですかい? こりゃいい値で売れそうだ。最近じゃ大人の女より、こういう小さい娘っこのほうが高く売れますもんねえ。まったく、貴族の連中が考えてることなんかわかりやせんぜ」
「バカ野郎!! てめえはちっと向こう行ってろ! ……ヘンに警戒されて、逃げ出されたらどうすんだ。せっかくの金ズルがパーじゃねえか」
「へ、へい。失礼しやした」
「お嬢ちゃんごめんよ。このおじさんね、ちょっと頭がおかしいんだ。今言ったこと全部ウソだからね。ね?」
「え。何のことですか?」
しれっと聞いていないフリをするオレにおじさんは気付かぬ様子で、心なしか安堵したみたいだ。
あー、うん。やっぱこいつらあれだ。山賊だ。だまされるところだったぜ。
「さあ、お嬢ちゃん。ちょっと他にもへんなおじさんがいっぱいいるけど、みんないいおじさんだからね。怖がらないでこっちへおいで。おじさんたちと楽しいこといっぱいしようね」
おじさん……山賊の頭に腕をつかまれ、オレはさらに洞窟の奥に引っ張り込まれた。そこには他の山賊たちもいて、一斉にオレを凝視してくる。
「は、はは。どうも、初めまして……よろしく……お願いしたくないです」
ハゲ頭オヤジに、顔に十字傷があるオヤジに、前歯喪失オヤジに、隻眼オヤジ……見事な山賊の見本市だ。
「す、ステキなおじさん達ですねえ~」
「お嬢ちゃんは見る目があるな。もう10年早く生まれてたら、こいつらの嫁になってもらいたいくらいだわい、ガハハ!!」
「嫌です。死んだほうがマシです」
アホぬかせ。絶対に嫌だよ!!
「お嬢ちゃんは冗談がうまいなあ。ガハハ!」
頭は冗談だとでも思ったのか、オレの頭をぽんぽん叩いた。うぜーな。にしても、なんとかして早くここから抜け出さないと。
どうやって逃げ出そうか出口のほうを見ていると、さっき入口で会った手下が息を切らして走ってきた。
「頭! 冒険者が攻め込んできやした! は、早く逃げねえと!」
「なんだと! ええい、てめえら!! ネズミは一匹残らずぶっ殺せ! 何人束になってかかってこようが、ワシが一撃でぶっ殺してやるわ!」
頭は壁に立てかけていた巨大な斧を装備すると、悪役らしい笑みを浮かべる。
そうか。思い出した。確かこいつ、山賊のアジトのボスだ。
山賊のアジトは低レベル帯唯一のパーティー推奨狩場で、プレイヤーにとって初めてのボス戦が待ち構えているダンジョンだ。
山賊の頭が操る巨大な斧の一撃は、それまでのザコとは段違いの威力で、メイジ系のクラスなら一撃であの世行きになるほどの威力……。
つまりオレは今、そんな危険な場所に囚われている。このままだと、どこかの金持ちに売られるか、奴隷にされるか……考えたくはない未来が待ち構えている。
「か、頭! ぼ、冒険者達がすぐ、すぐそこまで!」
でも心配ない。冒険者達が助けにきてくれたんだ。ひとまずは安心、かな。
「うろたえるんじゃねえ、この野郎。てめえそれでもタマぁついてんのか! 冒険者の1人や2人でうろたえるんじゃねえ!」
「いや、それが……相手は相当な手練れで――うぎゃあ!」
手下その1は背後から一撃もらい、その場に崩れ落ちた。
「冒険者ギルドからの依頼で、貴様ら山賊団を討伐する!」
そして、3人の冒険者がぞくぞくとやってくる。さっきの手下はリーダー格の男にやられたようだ。
「へへへへ! バカな奴らだ。このワシの斧でミンチになりたい奴から前に出な」
「よし、皆。ここであいつを討ち取るぞ!」
冒険者たちは全員が20歳前後の若い男達で、駆け出しのひよっこというか、こういっちゃなんだけど、青二才もいいとこだ。
イメージとしては、農村の若者がろくな防具もなしに剣や槍で武装した感じ。まあ、駆け出しの冒険者ならああいうのがフツウなのかも。
「おい、女の子が囚われているぞ。この野郎! こんな小さな子供に何をするつもりだ!」
「へへへ。決まってんだろう。これからとーっても楽しいことをするんだよ。ぐへへへ!」
頭の唇の端からつーっと汚い滴が垂れ落ちて、それを見た冒険者の男は激昂して一気に頭へ斬りかかる。
「貴様ぁ!! うちの妹とそう年も変わらない子に、不埒なマネは許さん!」
「ああん、なんだそのへっぴり腰は! 攻撃ってのはなあ、こうすんだよ!!」
けれど、冒険者の剣は頭の斧に砕かれてしまう。
「あ、ああ。なんて奴だ……ば、化け物だ……」
「ひひひ。さあ、次はどいつだい? 来ないのか? くははは! 弱いなあ、お前らは。よーし、じゃあ一気にトドメを刺してやろう」
「ひ、嫌だ。死にたくない!」
斧が冒険者の頭上に迫った。
このままだと、あの人は死ぬ。頭を砕かれて、死ぬ。それは……ダメだ。
オレはこのまま見ているだけでいいのか? オレは……オレにできることは。
「死ねええええええええ!!」
考えるよりも先に体が動いていた。
「な、何だと!?」
気付けばいつの間にかオレは、頭の斧を右手で受け止めていた。
「山賊の頭、レベル12。斧の一撃は威力も高く、不用意に近づけばゲームオーバー。けど、攻略法はシンプル。武器破壊で攻撃力が大幅にダウンする」
「な、何だお嬢ちゃん!! 離せねえか!!」
頭は顔を真っ赤にして斧に力を込めるが、ビクともしない。まるで赤ん坊と力比べをしているようだ。
それもそう。だってオレのアバター、エアは腕力と敏捷性がカンストしていて、このレベルの狩場のボスですら一撃で倒せる。
「ぐ!? ぎぎぎぎ!! な、なんだこの力! わ、ワシの斧が押し返されて!? こ、このガキ!! 可愛らしい顔して、中身はオーガかトロールか!!」
「ケンカ売った相手が悪かったな、おっさん。オレはレベル98メテオブレイカー。その程度の力じゃオレに届かねーよ」
「む、うお!?」
右手に力を加えると斧はあっさり砕け散り、頭は壁にめりこむくらいにふっとんだ。
「す、すげえ。一撃で……」
その一部始終を見ていた3人の冒険者は生唾をごっくんして、感嘆の声をあげる。
「あんな小さな女の子が……結婚したい」
「僕は……踏まれたい」
「俺はお母さんって呼びたい」
何か途中からおかしなことを口走っているが……無視しておこう。
「ま、まだじゃ。せ、せめて死ぬ前にこの一撃を……受けろやあああ!」
「何、しまった?!」
油断したせいか、頭の不意打ちに対応するのが一瞬遅れた。
頭は死をも恐れぬ決意でオレとの間合いを詰めてくる。武器らしいものは何も持っていないが、鍛え上げられた肉体はそれだけで充分脅威だ。
かわそうとしたオレだったが、頭の攻撃はオレの想像のナナメ上をいくものであった。
狭い洞窟に強い風を引き起こすほどの、アッパーカット。それはオレの体をかすめ……スカートをめくりあげた。
げ。スカート、だと!?
「へ、へへ。彼女いない歴45年。女子のスカートの下は常に聖域だった。わ、わしは! ついにその聖域の扉を、開いたぞ!!」
頭はさも満足そうな顔で頷くと、鼻血を垂らしながらよだれと涙も流した。
「おい、見たか? ピンクだったぞ」
その一部始終を見ていた3人の冒険者は生唾をごっくんして、感嘆の声をあげる。
「クマさんキボンヌ」
「パンツのアリ地獄に埋もれたい」
「あの子のスカートを破壊したい」
こいつらマジ変態!! よいこの皆はあんな大人になってはいけない。ていうか、オレのパンツ、ピンクだったのか……。
「ふ、これでもう何も思い残すことはない。今まで山賊やってて……よかった」
頭は燃えつきたような表情で気絶した。至福に満ちた表情で、鼻血を垂らしている。
最初の登場シーンからずいぶんキャラ変わり過ぎだよ、お前!
「ふう。これで一件落着……か?」
「ねえ、君! 僕たちのギルドに入らないか!?」
その場を去ろうとしたオレだったが、さっきの冒険者たちに囲まれてしまった。
「いや、興味ないんで、ほんと」
「そんなこと言わないで! ねえってば!」
「君みたいな小さな子が1人で旅するのは危険だよ、ほんと! 僕たちが君を守ってあげるからさ!」
「そうそう、毎日俺のこと踏んでいいから、ね?」
さっきのオレの攻撃を見てもビビらないところを見るに、やはりオレの姿を見てナメきっている。所詮はガキだとでも思っているのか。
でも確かに……こいつらの言うことにも一理はあるんだよな。このままアテもなくさまようにしても、さっきの山賊みたいに誘拐される可能性もある。
女の……それも、子供の一人旅なんて危険だらけもいいところだ。けれどま。こいつらも所詮さっきの山賊と同じ穴のムジナだな。
一億歩譲ったとしても、何の戦力にもならないし、組むならもっと強い奴か女の冒険者のほうがいい。
よし、適当に追っ払うか。
「うぜーな……あんまりしつこいとあんたらのタマ、砕くぞ」
「へ?」
冒険者の男の顔スレスレに思い切り拳を打ち込む。
「ひ!?」
オレの拳は洞窟の壁にヒビどころか穴をあけて、石の欠片があたりに飛び散った。
「弱い奴に用はない。さっさと消えろ」
「わ、わかったよ。じゃ、じゃあせめて。名前を聞かせてくれないか?」
「……エアだ」
「そ、そうか。エアちゃんか。それじゃ、僕たちはこれで……ああ、ちゃんと冒険者ギルドに報告しておくんだよ、場所。わかる?」
「うっせーな! さっさと消えろ!」
「ひ、はひいいい!!」
3人の男たちはクモの子を散らすように逃げて行った。
「さて、と。これからどうするかな」
洞窟から抜け出て、新鮮な空気をめいっぱい吸い込み伸びをする。
ここはフェアリーオンラインに似た異世界。たぶんそうなんだろう。
そしてオレは、エアという10歳程度の幼女。でも、エアの実力もちゃんと受け継いでいる。
元の世界に戻るにはどうすればいいのか。戻れなかった場合はどうするのか。色々考えてみたけれど、お腹がぐーぐー鳴って考えるのをやめた。
「確か、近くに村があったな。とりあえずそこに行って腹ごしらえしてから考えるか」
両の拳を握りしめ、気合を入れ直すとオレはゲームの記憶を頼りに森の中へ分け入った。
オレは、この拳で生きていく。
時間があれば、続きを連載にして書きたいところ。