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瑞江雅彦は問題児であった。
その事を自覚したのは、9歳に動物園に行ったときだ。遠足か、家族旅行か、どちらかは忘れた。当時は渋々女服を着ていた。勿論、髪も長くしていた。
しかし、着ることでさえ、ストレスが貯まる。集団行動から離れ、物を壊したくなった。
そんな時だった。
とある猿が檻から脱走したのだ。職員は大慌てで探すが、なかなか見つからない。その猿が偶然にも自分の側に通った。こんなに近くで見る猿は初めてだ。好奇心から手を伸ばしたとき、鞄を持って行かれた。油断していた。
「まてんかいこらぁ!」
散々猿を追い回し、ようやく諦めようと思い立ったら、猿はバナナを持った職員に捕まられた。単純に餌に釣られただけだ。
ため息を吐く。しかし、達成感はある。都会では味わえない感覚だ。
やりたいことをやる、そういうことを自然と覚えたのだ。
それからの私生活は一変した。




