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結局、先生に無言でメモ帳を押し切られて持ち帰ってしまった。
夕食の後、メモ帳を何となく見る。
汚い字で書かれているものの、事細かく説明しており、想像力が高い私にはいろいろ考えさせられる。
一通り読んだら、もう一度読み直し、心の眼で妄想する。
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緑多い田舎とやましい車の音が無い所でのんびりと寝るのが、夢だった。
都会で母に女服のことでうるさく言われるのが耐えきれなかった。当時、性同一性障害の認識があんまり広まっていなかった。
「女服なんて、スースーって風が嫌なんだよ!」
「嫌でも着なさい! 皆そうしているのよ」
「チッ、クソバハア!」
「な、なんてことを・・・!」
小さい頃から「女らしくしなさい」ばかり言われ続けてきた。実家がお金持ちだからだろう。建前だけしっかり固めておきたいのだ。
その時、若いメイトさんが来た。
「お嬢様。高杉様がお見えになりました」
「グットダイミング! それじゃ、遊びに行ってきます」
「待ちなさい! お話は終わっていません!」
母が怒鳴りつけるのを無視してお出かけする自分。
瑞江正彦。10歳の夏ーーーー




