引き立て役
王都は大きなところ
小さい頃からそんな曖昧なイメージしかなかったがそのイメージは正解だったみたいだ。
小さい頃の自分に正解したご褒美でもあげたいものだ。
「ここが、王都!でかいな!」
「そうだね」
彼は無邪気な笑顔で王都の大きさを実感していた。
僕はそんな無邪気にはいられない。
いつから、そうなってしまったんだろう?
わからないや……わからなくていいや
わかってしまったら、彼のことを嫌いになる。
王宮の人たちに案内されて王様の前まで連れてこられた。
あいつには優しいのに俺にはまるでゴミでも見るような目で見ていた。
それもそうか、金魚のフン状態だもんな
僕でも思う、なんだあいつは?と
「ここが、王の部屋です」
扉を開けると、白髪が似合うおじいさんがそこにいた。
僕と彼は王の前まで行くと田舎で教え込まれた礼儀作法のまま、頭を下げる。
「ようこそ、勇者と……その側近」
心の中でそうきたかと王の頭の回り方に感心する。
頭を上げて彼を見ると怒っているように見えた。
「お言葉ですが、彼は俺の親友です」
さっきの僕が側近扱いされたことが腹たったらしい。
「お、おい、失礼だろ」
「お前のことを馬鹿にされたんだぞ!」
さすが、自慢の親友だ。
とても誇らしいし、うれしかった。
だが、国王様の前ではやめてほしかった。
「失礼した。勇者と勇者の親友殿」
王様はとても、大人だった。
さすが、一国の王だ。
僕も彼もどうすればよいかわからず困惑してしまう。
困惑している間に、王が頭を上げて今回呼び出した理由の説明に入る。
僕らが住んでいる人間界と呼ばれている大陸と
魔界と呼ばれている、多くの魔族が生息している大陸
互いに不可侵の関係だった。
だが、近年魔族が人間界へ進行してきている。
すでに襲われて魔族に占領されている村や町も増えてきている。
王国は他各国と連携を取り、魔族の進行を防いでいる。
この状態を打開すべく、人間界と魔界の境界線での戦争を行っている状態だった。
そんな時、僕らの村に勇者がいる神託があり『雷』魔法を操る彼が呼び出された。
『勇者は魔王を打ち滅ぼし、明るい未来の力になるだろう』
なんとも、楽観的な神託だ。
人間界の各国は、勇者の実力をつけるとともに
魔王を打ち滅ぼすため、精鋭の人材を招集し冒険へ出す決断をしたらしい。
物語に出てくるような話だが、要は人間界に進行してきた魔族の討伐をし
敵本陣へ決死の攻撃をして来いと言っているようなものだ。
だが、僕らは子供だった。
英雄や、国を救う勇者
そんな、きれいな言葉に魅了されて
僕らは勇者一行となった。