脇役
人は生きていく中で必ず他人に嫉妬するだろう。
例外はいないはずだ。
僕も例外なく嫉妬する。
僕には同じ村で同じときに生まれた幼馴染がいる。
その割には全然違う容姿で運動能力も段違いで彼のほうがその点において
ずば抜けてよかった。
簡単に言ってしまえば彼は『主人公』なのだ。
それに比べ、僕は容姿は悪いとまではいかないが地味だ。
僕の父親は住んでいる村の近衛兵だった。
特別階級もいいわけじゃないけど
村の人からも信頼され、頼りにされ
いつか、父のように誰かを守れる頼りになるような男になるために
剣術を学んでいた。
だけど
努力を重ねてきた剣術も簡単に追いつかれた。
幼馴染の彼に『主人公』である彼に追いつかれてしまった。
模擬戦
父が見守る中、僕は全力で彼と戦った。
子供にしては、僕も彼もレベル的に高い戦いをしていたと、思う。
必死だった。
勝ちたかった。
そんな思いの中、僕は戦った。
戦っている中、彼は笑っていた。
悪気などみじんも感じられない笑顔で
僕との闘いを文字通り”楽しんでいた”
負けた。負け続けた。
幾度となく模擬戦は行った。
結局、僕は一勝もできなかったけど
何一つ彼以上になれたことはない。
彼以上が何か欲しくて僕は魔術を学ぶことにした。
僕は頭がいいわけじゃない、剣を振っていた方が何倍も才能があると思う。
それでも、何かで彼以上になりたかった。努力を重ねた。
それによって僕は多彩な魔法をつかえた。
その中でも癒し系の魔法が得意だった。
なんで?と、聞かれたら返答に困るが
彼にも魔法を見せると目を輝かせて
『すごい』と言われた。
それがうれしくて誇らしくて
よりいっそう、魔法の勉強した。
でも、才能という壁に当たった。
世の中でいう、思春期の時期
彼は『雷』を魔法で呼び出したのだ。
世の中には『火・水・地・風・光・闇』基本属性として6属性しかない。
『雷』は呼び出せない。普通は、呼び出せるのは…神に認められた『勇者』のみだった。
まさに、全力疾走で壁にぶつかった気分だ。
彼は優しい、なので彼はこう口にする。
「まだまだへなちょこでお前には程遠いよ」
悪気はない
それは痛いほどわかる。
だからこそ僕は『脇役』になった。
思春期も終わるころ
彼の家に国お偉いさんの馬車が止まっていた。
「俺、勇者らしい」
やっぱりと思った。
どこか違ったのだ、だからここまで差が出た。
彼から見て僕は驚きの表情をしていたらしい
そんな僕を見て、彼は続ける。
「お前に付いて来てほしい。親友として」
返答は決まっている。
「もちろん、僕たち親友だろ」
僕は首を縦に動かした。