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伯爵家の秘密  作者: BUTAPENN
第7章「変革」
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第7章「変革」(3)

 ジョルジュ・ド・マルタン士爵は、伯爵家居館の門をくぐったとたん、前庭で深々と頭を下げた。そして、玄関の間まで出迎えたエドゥアールの前でうやうやしく拝跪した。

「ラヴァレ伯爵さま。このたびは、身に余る仕官のお話をいただき、感謝のことばもございません」

 その胸は緊張のため、何度も大きく上下している。

「高名な伯爵家にお仕えすることは、望外の喜び。わがマルタン家の誉れでございます」

「そんな他人行儀な挨拶をするなよ」

 エドゥアールは、ジョルジュの肩を旧友のように親しげに抱いた。

「わあーっ。何をなさいます。もったいない」

「何言ってる。俺たち、剣技大会で剣を交えた仲じゃねえか」

「ト、トマ。トマ。若さまをお止めしろ」

「はっ。失礼をば!」

 後ろに控えていた従者は、すぐさま両腕を広げ突進してきて、ふたりの間に割って入った。

「あはは。おまえら、相変わらずぴったり息が合ってるな」

 エドゥアールは大笑いしながら、書斎に彼らを招き入れると、ソファに腰を下ろした。

「剣技大会では、本当にお世話になりました」

 ジョルジュは、せいいっぱいの感謝と敬意を伝えようと、かしこまって立っている。

「エディ……いえ、ラヴァレ伯爵さまと剣を交えていなければ、わたくしはまた今年も騎士試験を仕損じていました。あとで、お名前をお聞きし、お強さに合点がいきました。国じゅうの騎士のあこがれであるカスティエ士爵に、直々に剣を教わっている方なのですから」

「俺もあのとき、あんたに感心したんだよ。すごく剣筋がいい」

「わ、わたくしがですか?」

 ジョルジュは、これ以上意外なことばを聞いたことがないという表情になった。

「ああ。強い奴なら、いくらでもいる。でも剣筋がよくなきゃ、人に剣を教えることはできないだろ」

「――過分なおことば、いたみいります。あれから仕官のお招きがひとつもなかったような、このわたくしに」

「俺のところへ来るためだったんだよ」

 エドゥアールは立ち上がった。

「あらましは、こないだ書き送ったとおりだ」

 ラヴァレの谷は古くから防備の堅固な地として知られていた。谷の両側を、馬も越えることが困難な山々にはさまれ、出入り口は、南と北の二か所だけ。攻めるにせよ退くにせよ、敵にとっては危険が大きい。

 実際、150年前に征服民族の攻撃に最後まで持ちこたえる余力を残していたのは、ラヴァレの地だけだった。その最も強大な族長が早々と降伏したことが、一気に原住民族あげての降伏につながったと、歴史家は見ている。

「ところが、その神話を過信しすぎて、谷全体がほとんど防備については、手つかずなんだ」

 エドゥアールは、ため息をついた。「領館には、怪しい奴がときどき入り込んでいるし、村には火事のために交替の夜回りがいるだけで、ろくな警備組織もない。ユベールに頼もうにも、俺の命じる仕事で国じゅうを走り回っていて、それどころじゃないし」

「でも、恐れながら、それは必要なかったからでは?」

 ジョルジュは勧められて、むかいの椅子に腰をかけた。従者はその背後で、彼の剣を預かって立つ。

「お父上の伯爵さまは、名領主であられると聞いております。その統治のおかげで、村は平穏で貧富の差もありません。ごみのない通りにごみは落ちないと申します。伯領は長年のあいだ警備隊を作る必要はなかったかと」

「へえ、親父のことをよく知ってるんだな」

「わたくしの父が、ラヴァレ伯爵さまとは、若いころ親しくさせていただいたのです」

 ジョルジュは、そこで「あ」と口を押さえた。「すみません。いらぬことを申しました」

「知ってるよ。あんたはマルタン士爵家に養子に行く前は、メイヨー伯爵家のせがれだったんだろ?」

 ジョルジュは顔を赤らめて、うなずく。

「すでにお聞きおよびなら、隠すことはありません。わたくしの母は卑しい生まれで、わたくしを産んでまもなく離縁されました。父が再婚して弟が生まれたため、わたくしは嫡男の座を弟にゆずり、12歳のときに子どものなかったマルタン家の養子となったのです」

「あんたも、苦労したんだな」

 エドゥアールはぽつりと言った。

 再婚によって新しくできた家庭の中で、幼いながらに疎外感を味わい、養子に迎えてくれた先でも、新しい両親の期待に応えるために、士爵の称号を得るまでどれほど肩身の狭い思いをしただろう。

「苦労などとは、とんでもありません」

 ジョルジュは、穏やかに首を振った。「トマがいてくれましたから。わたくしたち主従は、小さいころからともに育ってまいりました」

 ちょうど、エドゥアールとユベールのようだ。

「だから、あんたたちは、実の兄弟みたいに見えるんだな」

「わ、わたくしのような者まで、いっしょにお召し抱えくださり、ありがとう存じます」

 トマはしゃちこばって、ぺこぺことお辞儀をする。

 本当は、きっかけはトマのほうで、ジョルジュが実は添え物であったのだが、そんなことは口が裂けても言えない。それに、与えられた人材を適所に配置することは、エドゥアールの得意技だった。

「領館の警備を任せるとともに、ラヴァレ領の村ごとに自警団組織を作ってほしい」

 若き伯爵は、新任の騎士におごそかに言い渡した。

「ラヴァレの谷の平和は、いつまでも続いていくべきものだ。だが、万が一の事態に備えることは、決して無駄なことではない」

「承りましてございます」

 ジョルジュは従者から剣を受け取り、誓いのしるしに胸に当てた。「ジョルジュ・ド・マルタンは本日より、この命の限り、あなたに忠誠を誓います」

「ただし死なない程度に、だぜ」

 と、エドゥアールは念を押して、笑った。

 彼らが出て行ったあと、ユベールが書斎に入ってきて、小声でささやいた。

「こうして知ってしまうと、確かに面影があります。ですが、普通に見ただけでは誰も気づきませんね」

「性格も、彼女とはまるで正反対だからな」

 ジョルジュの自信のなさ、臆病さ、度を越した生真面目さは、おそらく愛情に満たされなかった子ども時代が原因なのだろう。

「でも、剣術大会の控えの間で最初に彼を見たとき、なぜか声をかけたくなったんだよ。もしかすると、無意識のうちに何か似たものを感じてたのかもしれない」

 彼の母親がどれほど彼を愛し、彼のために涙で枕をぬらしてきたかをよく知っているエドゥアールにとっては、これは偶然と呼んではいけない出会いなのだ。

「あとは、どうやってふたりを引き合わせるか、ですね」

「また難問が増えたなあ」

 主従は、ひそやかに笑った。



 半月ぶりのラヴァレの谷は、夏まっさかりだった。川や湖はぬるみ、子どもも大人も仕事の合間を見つけては、泳いだり、ボート漕ぎや釣りに興じる。雪に半年降り込められる谷の住民たちは、短い夏を身体いっぱいに蓄えようとしているかのようだった。

 領館に戻ったエドゥアールは、何かが以前と違うことに気づいた。

 これまでなら、主が留守中の館は、息をひそめてその帰りを待ちわびるように静まり返っていた。

 けれど今、領館は生きて鼓動していた。

 その理由はすぐにわかった。彼がいなくても、隅々までを見守る主がここにいたのだ。

「親父!」

「やあ、お帰り。エドゥアール」

 シャツとズボンの軽装で、庭の一角を掘り返す庭師たちを指揮していたのは、エルンスト・ド・ラヴァレ伯爵だった。

「ここに、ミルドレッドのために、新しいあずまやを作ろうと思うんだ。花を眺めたり、編み物をしたり、親しい人々と午後のお茶を楽しんでもいい」

 声にも、今まで聞いたことのないような若々しい張りがあった。

「娘というのは、いいものだ。夢を与えてくれる。息子はつまらん」

「悪かったな。つまらん息子で」

 憎まれ口を利きながら、エドゥアールは信じられないものを見る思いで、父の隣に立った。

「親父。体はだいじょうぶなのか」

「ああ、このところ調子がよくなった。寒くなればまた寝込むかもしれぬが、それまでは大丈夫だろう」

「そうか」

「おまえはどうだ。王都の様子は」

「うん、話せばいろいろとある。長くなる」

「それでは、晩餐のあと話すとしよう。長旅で疲れたろうから、それまでゆっくり休みなさい」

 エルンストは、先に立って歩き出そうとして、振り向いた。息子は口を半開きにしてぼんやりと立ち止まっていた。

「どうした?」

 ただ、驚いたのだ。つい、このあいだまで生死の境をさまよっていた父親から、逆にいたわられている。『疲れただろうから休め』と言われたのだ。

 玄関では、留守を守っていた者たちが勢ぞろいしていた。

「オリヴィエ。世話をかけたな」

「なんの」

 家令は、にやりと笑った。「目を通して署名していただく書類が、書斎の天井まで積み上げてあります。お覚悟を」

「ロジェ。今帰った」

「よいときにお帰りになられました。去年漬けたアンズ酒が、ちょうど飲みごろになっております」

「アデライド。ただいま」

「ミルドレッドさまのお輿入れは、明日でも大丈夫ですわ。準備万端整えてございます」

「ありがとう、みんな」

 エドゥアールは、瞼を閉じて、なつかしい我が家の匂いを思い切り吸い込んだ。

「どうしよう。俺、幸せで息がとまりそうだ」



 その夜、エドゥアールの部屋のバルコニーで、父子の会話は尽きることはなかった。

 モンターニュ子爵の領地相続の申し出は、真っ先に相談すべきことだった。

「なりゆきで、返事をしちまったけど」

 エドゥアールは控えめに言った。「ミルドレッドもひとり娘だし、親を思う気持ちは人一倍強い。俺が爵位を継ぐことで、子爵夫妻の扶養に全責任を持つ立場になれば、彼女も安心できる」

「なるほど。それが一番良いことのようだな」

 エルンストは鷹揚にうなずいた。「おまえの思うようにしなさい」

 次の話題は少々厄介で、説明に骨が折れる。しかしどうしても話しておかねばならないことだった。

 それは、居館の執事ナタンの背信行為に関することであり、貴族の《私的徴税特権》に関することだった。

「ナタンは免職にしたのか」

「いや、そのままにしてある」

「何か、考えがあるのだな」

「親父は、ナタンが勝手に商人から徴税してたのを知ってたのか?」

 エドゥアールの言い方は歯切れが悪かった。知っていたにしろ、知らなかったにしろ、それは父親の管理の甘さを非難することになるからだ。

「うすうすは感づいていたよ」

 父親は静かに答えた。「だが、それを追求する力は私にはなかった」

「あんたの奥方に、重い病が見つかった頃だろう」

 実の母親を他人のように呼ぶことは、音が漏れないとわかっているバルコニーでさえ、絶対に守らなければならない鉄則だった。

「それもあった。だがわたしは、フレデリクと固い約束を交わしていたんだ」

「国王陛下と?」


『飽くまでもそなたがエレーヌを欲しいというなら、国王代行のわたしと誓って約束を交わせ。生涯決して王政には関わるな。直訴も、貴族会議で発言することも許さん』


「……それで、その約束を呑んだのか」

 エドゥアールの声はかすかに震えていた。

「ああ、呑んだとも」

 エルンストは笑いを含んだ声で答えた。「ニンジンを鼻先にぶらさげられた馬だったよ、そのときのわたしは。エレーヌのためなら、地獄へだって行けた」

 貴族にとって、直訴も発言も許されぬとなれば、すべての権利を放棄することだ。たとえ他の貴族からどんな不当な仕打ちを受けたとしても、訴えることは許されない。嘲りも不法も甘んじて受けなければならない。

 王妹と身分違いの結婚をしたために、父がどれほどの苦渋と忍耐の人生を送って来たか、彼は何も知らなかったのだ。

「だが、おまえは違うぞ、エドゥアール」

 父伯は、晴れ晴れとした顔で微笑んだ。「おまえは、その誓いに縛られる必要はない。自分の正しいと思ったように王に訴え、どんな場所でも臆さず発言しなさい。国王もそれを望んでおられるはずだ」

 何度も、苦い塊を喉の奥に押し込むと、息子は言った。

「親父。フレデリク国王に会ってくれないか」

「なぜ」

「たぶん……あの方は自分の決定を後悔していると思う。王宮に味方がひとりもいないんだ。そういうふうに自分で自分を追い詰めて生きてきた。もう十分だと思う。そういう生き方を変えるべきときが来たんだ。親父だけでも味方になってほしいんだよ」

 だが、エルンストは首を横に振った。

「あの方は、ご自分から妹君を奪ったわたしを憎んでおられるのだよ」

「でも」

「無理だ。わたしには、あの方と会わせる顔がない」

 母を早く死なせてしまったことを、父は今も悔いている。その気持ちはエドゥアールには痛いほどわかった。

 耐えきれなくなって、この話を打ち切り、三番目の話題を持ちかけた。「それはそうと、ジョルジュ・ド・マルタンという騎士に、この領館の警護を任せることにしたんだ」

 そして、ジョルジュと従者トマを雇い入れた経緯について、くわしく話した。

 話を聞きながら、父の顔には抑えきれない笑みがときおり浮かんだが、最後はしかめっ面になった。

「彼のこと、知ってるんだろう。元メイヨー伯爵夫人、娼館の女将イサドラの生き別れた息子だよ」

「ああ」

「なんとかして、ふたりを再会させてやれないかな」

「無理だろうな。イサドラが絶対に会うまい。幼い息子を捨てて家を出なければならなかった自分を、自分で赦せないのだ。娼館を経営していることも、息子には死ぬまで隠しておきたいはずだ」

「ジョルジュは本来は、もっと快活で勇気ある男なんだ。母親がどれほど彼を愛しているかを知れば、自分に自信を持てるのに」

「人の気持ちは、そう簡単には変えられぬぞ。古い傷を掻きまわされて、かえって血を流す場合もある」

「だけど、空気にさらしてやらなきゃ、傷は傷のまま残る」

 幼いころ親の愛を受けられなかったのは、エドゥアールも同じだ。けれど彼の回りには、数え切れぬ多くの愛情があふれていた。そのおかげで自分というものを見失うことはなかった。

「俺に惜しみなく愛を注いでくれたミストレスのためにも、本当ならその愛を受け取るべきだったジョルジュのためにも、俺は何かしたい。しなければならないんだ」

「わかった」

 父は、息子の頭にぽんと手を乗せた。その手のひらに確かな重みと温もりを感じて、エドゥアールは泣きそうになった。



 翌日エルンストは、新しく完成した水車を馬に乗って見に行きたいと主張し始めた。

 それには使用人一同がたまげた。大旦那さまが騎乗で領館の外に出るのは、実に三年ぶりのことだったからだ。

 さっそく慎重な準備が始められた。一番おとなしい馬に鞍を乗せ、馬丁と見習いのダグが引き綱を持って両側を歩き、領館の庭を周回する練習をしてから、本番の日を迎えた。

 通り道は、先導の者たちの手で、大きな石ころが取り除けられた。

 万が一の事態に備えて、道の途中には、こっそり馬車が待機していた。

 伯爵は息子を後ろに従え、昼前にしずしずと出発した。村々からは、エルンストの騎馬姿を見た大勢の村人たちが駆け寄ってきた。地面にひざまずき、泣いている者もいる。誰もが、慈愛深い領主が死病から回復したことを喜んでいた。

 彼らはとりたてて休憩も取らずに、目的地の水車小屋まで馬をあやつった。

 すでに大麦の獲りいれの時期も終わり、水車と付属の製粉所は小麦の収穫まで短い静けさを取り戻していた。

 領内の水車はすべて、村々の代表が作った製粉組合が管理している。

 製粉の順番を決め、分別、計量、袋詰めを共同で行い、ラヴァレ産の証である谷ユリの印を入れて、麦商人に交渉して売り渡す。まだ始まったばかりの組合だが、賄賂などの不正の立ち入る隙のない仕組みができつつある。

「少し、寄り道をしてもいいか?」

 水車小屋で一休みしたあと、エドゥアールが提案した。「見せたいものがあるんだ」

 川に沿ってしばらく登ると、エルンストは「おお」と歓声を上げた。

 この季節には、まだありえない光景が眼前に広がる。青々とした麦の穂が、海のさざ波のように揺れていた。

「冬播き小麦のはじめての実験をしてる」

 エドゥアールが畑に入って穂を摘む。固く膨れて、実入りはよかった。

「今のところ順調だ。この具合なら、霧の出る前に収穫できる。今までは霧に濡れた小麦が穂の中で発芽し、でんぷんの力が弱くなっていた。これなら、パンのよく膨らむ良質な小麦として大々的に宣伝して出荷できる」

 父伯は、誇らしげに説明する息子の横顔を、ただじっと見つめている。

 つき従っていた使用人たちが、川のほとりの草むらに、てきぱきと天幕を張った。

 コック長のシモンは、甘いもの好きの大伯爵のためには、マルベリージャムやはちみつの入ったサンドイッチを、腹をすかせた若伯爵のためには、厚切りチーズと黒胡椒入りハムと蕪のサンドイッチを用意していた。

 雲がゆったりと夏空を動き、暑さにまどろむ景色の上に涼しい影を落としていく。

 片付けがすみ、帰路の準備が整ったとき、エルンストは道端にひざまずき、頭を垂れた。

「親父?」

「神に感謝していたのだ」

 灰色の髪の伯爵は、目元に光るものをたたえながら立ちあがった。

「もう一度だけ、ここに立ち、緑の谷を見たいと思っていた。その願いが今日かなった。もう死んでも悔いはない」

「冗談でも、そういうことばは使うなよな!」

 エドゥアールは怒ったふりをして言った。

「わかった。訂正しよう。あまりの喜びに、ずっと生き続けたくなった」

「それでいい」

 父子は、顔を見合わせて笑った。

 馬のあぶみに足をかけて、自分の力で騎乗したとき、エルンストは言った。

「エドゥアール」

「なんだ」

 父は、谷のはるか南の山の重なりの向こうを見つめていた。外界とつながっている谷の出入り口を。

「王都に行こうと思う」

「え?」

「王宮へ行き、国王陛下にお目にかかりたい。エドゥアール、手伝ってくれるな」

 貴族社会における往年の異端児、エルンスト・ド・ラヴァレ伯爵は力強い声で、そう宣言した。



 数日後、王宮の侍従長ギョームのもとに、どんな手段を使ったものか、書記官を通すことなく一枚の書状が届いた。

 そこには、こう記されてあった。


 『エルンスト・ド・ラヴァレ伯爵と

 その継嗣エドゥアールは

 王の庭にて開かれる

 国王主催の茶会への招待を

 謹んでお受けいたします』


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