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暗闇の宴  作者: 蒼目ハク
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折り鶴

 何を折ってるかって? 鶴だよ鶴。あんたも子供の頃折ったろ? 俺は昔から手先が器用でね、鶴に限らずよく折り紙を折ったんだ。動物とか花とか色々。中でも鶴は一番折った。病気の見舞いに千羽鶴、みたいな具合に、嫌な事がある度にまじないを唱えながら鶴を折った。よく教師に叱られたよ。授業中も折ってたからね。


 あれは、小学生の時の話だ。あの頃の俺は身体も気も小さく、しょっちゅういじめられた。パシリをさせられたり、ランドセルを持たされたり、プロレスごっことか言って殴られたり蹴られたりもしたな。嫌だったけど我慢したよ。逆らったらもっと酷い目に遭うのが分かってたからね。両親にも言い出せず、鬱憤は溜まっていくばかり。どこにも発散できなくて、俺はいじめっ子の顔を思い浮かべながら鶴を折った。憎しみの念を込めて。そして、それを燃やした。傷ついた心の供養のつもりで。どうなったと思う?


 燃えたんだ。いじめられっ子が。自宅で一人、火遊びしてて焼け死んだんだ。

 初めは偶然だと思ったさ。でも、俺は気になって試しにまた折り鶴を作り、今度は燃やさずに水に浸したり、首の部分をちぎったり、釘を打ったりした。やっぱり死んだよ。折り鶴と同じように一人は川で溺れ、一人は電車に轢かれて頭が吹っ飛び、一人は刺し殺された。

 もう偶然では片付けられなかった。自分の恐ろしい力に震えたよ。だが、その感覚も次第に麻痺していった。

 生かすも殺すも思いのまま。罪悪感もどこへやら、俺は気に入らない奴の顔を思い浮かべながら折り鶴を作っては消していった。十人……二十人と数はどんどんエスカレートしていった。


 おいおい、信じてないって顔だな。さっきから笑って頷いてばかりじゃないか。全部本当の話だぜ。作り話なんかじゃない。俺の頭がイカれてると思ってんだろ。まあ、その通りだけどよ。俺は病気だからこんなところに閉じ込められてる。分かってるさ。あんたが治してくれんだろ?


 さあ、鶴が完成した。この建物やあんたの服と同じ、真っ白な鶴だ。俺の掌に、誰かの命が握られてる。

 誰を思い浮かべて作ったかって? 何だ、少しは興味あるんだな。

 この鶴は、俺を頭のおかしい病人と決めつけ、毎日こうして話を聴きに来ては小馬鹿にして笑ってるお偉いお医者様さ。


 ……おっと、急に顔色が変わったな。さっきまでの余裕の笑顔はどうした先生。

 信じてないんだろ? 俺の力を。だったら試してみようぜ、今、ここで。

 俺が掌にあるこの折り鶴をギュッと思い切り握り潰したらどうなるか。鶴と同じ運命を辿るかどうか……。


 しっかりその目で見届けな。

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