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才能創造薬

作者: 天城恭助

これは初めて書き終えることができた作品です。大して面白くないかもしれませんが読んでくれたら幸いです。

 四月某日、中学校の入学式を迎えた。

 早く起きてしまうが母さんは既に仕事へ行ってしまったようだ。

 特にすることもないので学校に向かうことにした。

 そして、歩きながら不思議なことがあった昨年のことを思い出していた。

 昨年、父さんは交通事故にあい、そのまま亡くなってしまった。悲しかったが涙はなかった。

 葬式の時親族はそんな僕をしっかりしていると褒めたが涙が出ないことにむしろ恥ていた。だが、それ以上に深刻なのは母さんだった。

 母さんは父さんの死に泣き崩れそのまま立ち直れなくなってしまった。祖父たちは、少しばかり異様に感じたので精神科に連れて行き鬱であることが分かったのである。そのためしばらく祖父たちが一緒に住むことになった。

 あの時、なぜ泣けなかったのかを振り返ってみる。――――やはりわからない。

 もっと思い出してみよう。

 その後、クラスの皆は誰もが僕を気遣った。しかし、そんなものは必要なかった。確かに父さんが死んでしまったことはショックだが、心配してもらうようなことはない。むしろ、いらない過去を思い出してしまう。

 さらに時は過ぎ、誰も父親について気遣わなくなった頃、僕はいじめられ始めた。殴る蹴る、ものを隠すエトセトラ…、それについて僕は何も言うことはなかったし仕返しすることもなかった。痛いのは嫌いだし、ものを隠されるのも屈辱だが、僕は気にしなかった。

 それを振り返るとただやり返す勇気や担任の先生に告げ口する勇気がなかっただけかもしれないが、それ以上に周りが子供に見えて仕方がなかった。相手を傷つけて得るものに何があるのか? 別にそんな深いことを考えているわけじゃないが、相手をしている方がバカらしく思えて仕方がなかった。

 ある時、帰りの会で担任の先生が不審者情報を伝えていた。まさか自分がその不審者であろう人と会うとは思わなかったが。

 帰り道にフードをかぶった奴に出会った。不審者情報と合致する。気にしないように帰ろうとするとそいつは話しかけてきた。

「ねぇ、君ちょっといいかな?」

 関わらないほうがいいと思ったので距離をとりつつこう言った。

「いえ、ダメです。 ちょっと忙しいので」

 そして、そいつはあっさり

「そう。 わかったよ」

 と、引き下がった。よくわからなかった。因縁つけて突っかかて来るかもしれないぐらいに思っていたのに、あっけなかった。帰ったあと一応、不審者らしき人に会い話しかけられたが何もなかったということを担任の先生に報告した。また、みんなが心配してきて少し後悔をした。何気ない一日のようだったがこの出会いが最も不思議なことへの始まりだった。

 翌日の帰り道、おそらく同一人物であろう人にまたあった。今回は無視することにした。

 翌日、そのまた翌日と連日で見かけた。正直鬱陶しくなったので自分から話しかけてしまった。

「あなたは一体なんなんですか! いっつも顔隠して僕の帰り道にいて!」

 そいつは少しふっと笑いこう言った

「やっと、興味を示してくれたようだね。 別に迷惑をかけるつもりはないよ」

「はっきり言って既に迷惑なんですが」

「そう言うな、君にはどうしても渡したいものがあってさ」

「怪しい人からものは受け取れません」

「正論だけど、これを受け取らないと君はきっと後悔するよ。 知らなきゃ後悔しようもないと思うけど」

「なら、知らなくていいです」

「わかった。 でも、気になるのなら今日の夜学校に来るといいよ。 そこで教えてあげるよ。 そこに来ないのならもう付きまとったりしないよ」

 それだけ言うと奴は去っていった。

 普通こんなふうに言われても誰も行こうなんて思わないだろう。しかし、僕は少し気になっていた。赤の他人であろう子供に何を渡すというのか? 何が目的なのか? だから、誘いに乗ることにした。 別にこんなちっぽけな好奇心だけのために行くのではない。 むしろ、今の退屈で悲惨な状況でどうなってもいいかなと言う、ある種諦めのようなものだった。時間指定も無いので困ったが、とりあえず、母も祖父達も寝た頃を見計らって学校へと向かった。学校には奴がいて少しホッとしていた。ただ単にからかわれているだけだったらとも思ったからだ。

「来たんだ」

 奴は意外そうな感じで言った。

「あなたの言うとおり少し気になったので来てみました」

「ふっ…そうかい。 じゃあお見せしよう」

 そう言うとビニールに入ったカプセル状のものを取り出した。まさか麻薬の類なんていうつまらないオチなのだろうか?

「これは、『才能創造薬』というものだ」

「才能そうぞう薬?」

「そう。 自分の才能を創りだす薬だ」

「そんなことが可能なんですか?」

「可能だ。 だからここにある」

「そんな夢みたいなものあったら既にテレビとかで紹介なりするでしょ」

「それはありえない。 開発したのは俺個人だし、何より公開する気もない」

「なぜそんなものを僕に?」

「理由はそのうちわかる」

「そのうちっていつですか?」

「そのうちはそのうちだ」

「教えてくれないんですね」

 奴はビニールを僕に渡す。

「飲まないなら飲まないでいいよ。 ただ、俺の目的を達成させるのに必要なのさ」

「目的ってなんですか?」

「それも飲んでくれればそのうちわかる」

「そうですか…気が向いたら飲んでみます」

「あぁ、そうしてくれ」

 その後、僕は飲むことはできなかった。 怖かったから。 仮に本当に才能が創れるとしても、どんな副作用があることやら。その日以降奴が現れることはなかった。

 あの時はやはり怖かった。常識はずれもいいとこの薬を渡され、麻薬を疑わざるを得なかった。けど捨てる気にはなれなかった。

 翌日、母さんがリストカットをした。幸い祖父達がすぐ発見したので命になんの別状もなかった。しかし、母さんは精神的にギリギリなようであった。僕にはどうしようにもできないことだ。そして、例に漏れずまた心配された。さらに、いじめはエスカレートした。ここでいじめられたのはどうも妬みであることに気づいた。どうも心配されているのをちやほやされているように受け取ったようなのだ。なんてちっぽけな考えだろう。僕は余計にどうでもよくなった。僕は現実に呆れつつあった。そんな時あの薬が目に入った。もうこんな面白くない世界に未練はない。覚悟を決め飲むことにした。例え死ぬことになってもいいとさえ思った。むしろそのほうが楽かも知れないとも思った。飲んでみると何も起こらなかった。体に変化はない。やはりからかわれただけだったのだろうか。その日、僕はそのまま眠った。

 目を覚ますとやはり変化は感じられなかった。あの時死ねれば楽とは考えたが別に自殺とかは全く考えていなかった。ただそうなったら楽かなと思っただけだ。

 学校へ行くとまたいつもの日常。父を失い母がおかしくなってしまって少し慣れってしまった日常。だが、この日常に変化の兆しが見えてきた。

 ある日のこと体育の授業で百メートル走を計っていたのだがタイムが四秒縮まった。

 もともと鈍足だったのもあるが、それにしても速くなりすぎだ。運動も何もしていないのに。勉強も何故かよくわかる。こっちの方は前から特に苦労はなかったが、記憶力がかなり上がったように感じる。いじめに対しても対処できるような気がして、攻撃に対しどっかでみた護身術を見よう見まねでやるとうまくいってしまった。いじめっ子どもを撃退するのに成功したのである。こうなると少し楽しくなってしまうもので、僕は調子に乗った。

 クラスの遊びにも積極的に参加するようになったし、テストは満点が当たり前になっていった。前とは違う圧倒的優越感を感じることのできる人気を手にすることができたのだ。

 さらに調子に乗った僕はある禁忌を犯した。母さんに対してのカウンセリングだ。

 こんなことは素人まして子供のすることではない。もちろんその手の本を読み漁ってはいるが所詮は子供。だが、僕はこれでよい成果を残すことに成功したのである。久しぶりに母の笑顔を見ることができたのである。とてもうれしかった。少し前の陰鬱な気分は全くなくなったのだ。そこまでは。

 母さんの調子がかなり良くなってきて、肌寒さを感じる秋のころだ。もう半年も前じゃない。担任の先生が近頃白衣を着た人がうろついていて、近所の人が不気味に思い注意するよう促してくれということだったのだが、先生は特に気にすることもないだろうといった。僕もその時そう思った。白衣着てるだけで怪しいというのはおかしいだろう、と。

 この時、僕はあんなに重大なことに巻き込まれるとは全く思ってもいなかった。

 ある日の目覚め、そこは自宅ではなかった。手足は縛られ、口もふさがれていた。目の前には白衣の男が立っていた。

「おや、お目覚めかね。 ようこそ我が研究所へ」

 とりあえず男を睨んでやった。

「そう見つめるなよ。 君は私の研究の糧となれるのだ、ありがたく思え」

 冷や汗をかくが自分でも驚くほどに冷静だった。どうにかして逃げる方法を考えていた。

 だが奴はそんなことはお見通しといわんばかりにこう言った

「逃げられるなんて思うなよ。 ここは樹海の中にある。 外に出られたとしても迷って死ぬ。 諦めて私の実験材料となれ」

 僕は諦めなかった。今までの自分なら別にいいと考えたかもしれないが、今は最高に楽しいと感じていたのにいきなりこんな状況になってしまったが、また這い上がってやると思っていた。

「ふむ、騒がれたくないと思って口をふさいでおいたが、聞きたいこともある、とってやろう」

 口につけられたテープを一気にはがされた

「痛っ!」

「このぐらい我慢しろ」

「……」

「さて、特別に質問させてやろう。一つだけな。 あとは全部私からの質問だ、いいな」

「わかった。 それじゃあ質問。 あんたは何の研究をしているんだ」

「よくぞ聞いてくれた。 私は天才について研究をしているのだ」

「天才について研究?」

「あぁ。 世の中は天才という生まれつきにして持っているものが良い環境にいることが多い。 平凡な人間はそこに追いつくことはどう頑張ってもできない。 だからこそ天才を人工的に生み出すもしくは後天的に付加できるようにするのが私の目的だ」

「それでなんで僕なんだ?」

「質問は一つといったろ。 それに言わずともなんとなくわかるだろう?」

「それは才能創造薬のことか?」

「なんだそれは?」

「違うのか?」

「聞いているのはこっちだ! なんだと聞いている?」

「話したら、解放するか?」

「駄目だ。 私が質問するだけだ。 答えないのならば解剖してやってもいいが?」

「やだ!」

「ならば答えろ! 君の言う才能創造薬とやらを!」

「それは……」

 言いかけた時ものすごい爆音が聞こえた。

「なんだ!?」

 そして、扉の奥から人影が見えてきた。

「誰だ!? 貴様!」

 その人影には見覚えああった。

「あんたに教える必要はない」

 そいつの顔は見えないが間違いなく薬をくれたやつと同一人物だった。

「一般人が来れるようなところではないぞ。 はっ、今の爆音はお前の仕業か!?」

「その通り。 お前のすべてを壊しに来た」

「貴様、なぜ私にこんな仕打ちをする? 私は人類のために研究をしているのだ」

「人類のため? では、お前がその子供にしていることはなんだ?」

「この子は私の研究のためにいるのだ」

「わかっているさ、そんなこと」

「何? 私はこのことを世間に発表したことはないぞ。 なぜ貴様が知っている?」

「知っているから、知っているだけだ」

「仕方ない。 見られたからには貴様もここにいてもらうぞ」

「その必要はない。 言っただろう? お前のすべてを壊しに来た」

「それはつまり私を殺しに来たと?」

「その通りだ」

 科学者は高笑いをした

「ハハハハハハハハ! 貴様に私が殺せるものか。 残念ながら貴様には物理的に無理なのだよ」

 はく日を開くとそのの下には鎧のようなものを付けていた。 

「とても軽くゼロ距離で銃を撃ったとしても貫けることはないうえに、私は銃の扱いも近接格闘術も軍隊のそれとなんら遜色ない技術を持っている。 貴様に殺せるわけがない」

「それがどうした」

「なんだとぉ。 もういい、もったいないし面倒くさいが貴様は殺してしまうことにした」

 科学者は銃を取出し、奴の額に向けて撃った。命中し奴は後ろに倒れた。

「口ほどにもない」

 科学者が確認しに近づくと奴は起き上がり科学者の体を抑え込んだ。

「貴様! なぜ生きている!?」

 奴の顔があらわになっていた。初めて見るはずなのにどこかで見た顔だった。そして、あたったはずの額には肌色の下に銀色が見えていた。

「機械だったのか!?」

「機械じゃない! 俺は……僕は! 人間だっ!」

 彼はそのまま科学者の首を絞め、科学者は泡を吹いていた。

「殺したの?」

「いや、まだ殺していない。 子供の前で人は殺せないかな」

「どうして? あなたがあいつを殺したからと言って僕は通報なんかしませんよ。 助けてくれたんですから」

「だけど、俺は君を利用したんだ。 あの薬を使ってね」

「利用したってどういうことですか?」

「結論から言うと才能創造薬なんてものは存在しないのさ」

「えっ? でも確かにいろいろとできるようになりましたよ」

「それはもともと君の持っていたものだ」

「そんな、元々あるわけないですよ。 今までだって薬を飲んだ後だからこそうまくいってたんですから」

 彼は何かを考えた後こういった。

偽薬(プラシーボ)効果って知ってるか?」

「はい。一応…」

「それだよ」

「でも、あれって信用してるからこそ効果があるものじゃ…悪いですけどほとんど信用してませんでしたよ」

「半信半疑程度はあったろ?」

「まぁ、そのぐらいは」

「それで充分なんだよ。 君の元々持っているのを引き出すのには」

「疑問はいろいろ残りますがとりあえず納得しました。 でも、最後に一つだけ。 あなたはどうして僕がもともと才能を持っていると知っていたのですか?」

 彼はすごい困った顔をして苦笑いを浮かべてこういった

「言わないとダメか?」

 何故か気持ちがわかったような気がして、それを見るとそれ以上追及する気にはなれなかった。

「さてここから出ようか」

 彼は胸元から何かを取り出した。

「なんですか? それ」

「ん? 爆弾」

「……何故?」

「さっきの聞いてたろ? すべてを壊すんだよ」

 彼は僕の手をつかみもうダッシュでどでかい穴の開いた壁に向かった。密林に入りかなり疲れたころ。研究所は爆発した。

「はぁはぁ…やっと終わった」

 彼は満足そうな、けれどどこか悲しそうな表情を浮かべていた。

「それじゃあ、君の家まで連れていこうか」

「はいっ! お願いします!」

 出来うる限り彼を元気づけようと思い満面の笑顔で返事をした。

 その後、家につき母さんや祖父たちにひとしきりに泣かれた。助けてくれた恩人を紹介しようと思ったら彼はすでに姿を消していた。そう、昨年はこれだけのことがあったのだ。あれ以来少しだけ才能がうまく働かなくなったのか、それとも無意識に抑えているのか、前ほどすごいことができなくなっていた。

 そんなことを思い出しながら歩いて、ふと見上げると信号は――赤だった。横からクラクションの音が聞こえたと思ったら何かが僕を横から歩道へ押し出した。

「痛っ」

 何かが押し出してくれたおかげでトラックに轢かれずに済んだのだが目の前には人が倒れ血を流していた。その姿を見るとある人の姿を重ね、気絶してしまった。

 起きるとベットの上で白い天井が見えた。どうやら、病院に運ばれたらしい。母さんが横にいて僕に気付くと無事でよかったと泣き出した。話を聞くと誰かがかばってくれたおかげで深い傷は追わずに済んだのだが数日眠っていたらしい。そして、僕をかばってくれた人は……即死だったそうだ。不思議なことに身元もわからないまま死体はどこかへと消えてしまったらしい。それを聞いた僕は彼のことを思い出しており、彼が…いや彼らが誰だか分かったような気がしていた。そして、僕は涙を流していた。


ちょっと急いで書いたので終わらせに走っている感じが出たかもしれないです。ちょっと文学的に書いたつもりなんですがどう見えたのでしょう?(笑)とりあえず書き終えられたし、何より書いていて楽しくできた作品です。今度は連作書くつもりなので機会があればまた。読んでくれた方、ありがとうございました

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― 新着の感想 ―
[良い点] 主人公の周りの環境がわかり易かったです。 [気になる点] 全体的に会話文がぎこちないと思います。
2015/10/08 16:25 仮面の魔鈴猫
[一言] おつかれさまです。 この量でも小説を書くのは大変ですよね。 感想ですが、 読んでいて文章の量に対して内容を詰め込みすぎだと感じました。 回想シーンから今への移り変わりがわかりづらい。 会話…
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