第9片「eruption」
お待たせしました、第9話です。
eruptionは噴火するという意味です。
動揺が隠しきれずに部屋に戻った私は、目の前で仁王立ちをしている彼女を見た瞬間、大事なことを忘れていたんだと知ることになる。
「ミュラ様っ。トイレにしては随分長い時間出ていらしたんですね?」
「……いや、護衛の兵士の方々とも仲良くなった方がいいかなって」
「そうですか、それにしては可笑しいですね。ミュラ様が部屋を出てすぐに護衛の方々が挨拶にいらしましたが、これは気のせいなのでしょうか?」
あらあら、なんとまあタイミングの悪い…
「へ、へぇ。そそそうなんだー」
「ミュラ様!!!」
あ、セシリアのプチ噴火が始まった。
「何度申し上げれば分かって下さるのですか!!ご自分の立場を考えて下さい。小国とはいえ、貴女は一国の姫君なんですよ!!豊かで栄えている国だからこそ、どこで不貞の輩がいるか分からないんです。側室としてきたなら尚更です。私はただ怒っているのではありません、心配しているのです」
「…セシリア」
セシリアの言葉に、私はいつものように笑顔で誤魔化せなかった。するとセシリアは私に近づき、私の右手を掴むと真っ直ぐに見つめた。
「遊びに出るのは悪いことじゃありません。ただ、いつかミュラ様は危険な目にあったとき無茶するのではないかと不安なのです。あの時みたいに…」
「…………。」
セシリアも忘れてはいないんだ、いや、忘れられるわけがないわ。あの日あの時のあの瞬間。
「だから、何があっても無茶はしないでくださいね」
「…分かったわ、ごめんなさいセシリア」
私の顔を見るとセシリアは慌てたように首を振った。
「い、いえ私こそミュラ様に向かって失礼な言葉ばかり……」
「いいのよ、私が悪かったのよ」
「ミュラ様…」
「それより、今夜の準備をお願いしたいのだけれど」
「はい?」
あら、セシリアにも知らせが届いていないのかしら。
「今夜、陛下とお会いするのよ」
「……へ?」
やっぱり連絡来てないのね。
「だから、陛下がいらっしゃるの」
「えええ!?」
「そういうことだから、湯あみの準備よろしくね」
明るく告げ、部屋へ戻ると私はこっそり懐にある琥珀色の石を握りしめた。
ミュラはわりと能天気です。
次回は初夜ですが、ゆるい感じです(笑
まさかユーザーだけのブロックに
なってるとは知らず、
一般からの感想も書けるようになってますので、
お待ちしてますm(__)m