森の向こうの声
鎧の男たちは、最後まで信じられないという顔をしていた。
「能力が……消えただと……?」
俺を睨みつけたまま、じりじりと後退し、やがて森の奥へと消えていく。
静寂が戻った。
「……なんなんだよ、ここ」
空を見上げる。青い。高い。病室の天井とはまるで違う。
俺は深く息を吸った。
肺に入る空気は冷たく、少し甘い匂いがした。
「生きてる、よな」
試しに足元の小石を拾い、遠くへ投げる。
普通に飛んで、普通に落ちた。
次に、さっき男が放った炎を思い出す。
半径五メートルほど。
あの見えない境界線の内側で、炎は霧のように消えた。
「魔法だけが消える……ってことか」
木の枝を拾い、思いきり振る。
当然だが、枝は消えない。
「物理は通る。万能じゃない、か」
けれど。
十四年で終わるはずだった人生が、もう一度始まったんだ。
これくらいのチート、文句は言えない。
「悪くないな。二周目の人生」
そのときだった。
——きゃああああ!!森の奥から、悲鳴が響いた。
女の声。
はっきりとした恐怖。
「……人?」
一瞬、足が止まる。
知らない世界。知らない誰か。
関わらない方が安全かもしれない。
でも。
「……はあ」
俺は走り出していた。木々をかき分け、枝を踏み越える。
心臓が早鐘を打つ。
開けた場所に出た。
そこにいたのは、腰を抜かした少女と——
異形。
黒い霧をまとった、獣のような何か。
骨のような外殻。
赤く光る目。
「グォォォ……!」
魔物が口を開く。炎が放たれた。
「ひっ……!」
少女が目を閉じる。
俺はその前に踏み込んだ。
炎は、俺の五メートル手前で消える。
霧のように、跡形もなく。
魔物の目が揺れた。
「悪いな」
俺は一歩、前に出る。「それ、俺には通じない」
魔物が、ゆっくりとこちらを向いた。
——赤い目が、俺を捉える。
次の瞬間、地面を蹴る音が響いた。
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