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『岩屋の女と小判とプレスマン』

作者: 成城速記部

 あるところに貧乏な男があった。その日の食うものにも困っていたので、道を歩いて銭でも落ちていないか探したが、一文も落ちていなかった。歩いていたら、さらに腹が減ってしまったので、家に戻るのもままならないと思って、ひたすら進むことにした。来たことのないところまで進むと、立て札が立っていて、

 金が欲しい者はこのまま進め、

とあったので、ありがたいこともあるものだと思って、ずんずん進んでいくと、大きな岩屋があって、ここ、とだけ書いてあった。

 岩屋の中に入って、声を上げると、中から何とも言えないいい女が出てきて、食べ物と言わず酒と言わず、何でも用意してくれた。三日ほど遊んだところで、急に里心がつき、男は、女に、一旦帰りたいと申し出ると、一度戻ったら二度とここへは戻れない、と言って、さめざめと泣いた。男は、そんなことはない、必ず戻ってくる、と言って、女の手を取って誓ったが、女は首を横に振った。

 岩屋を出るところに、小判やらプレスマンやらが山のように積んであって、女は、幾らでも持っていけと言ったが、男は右手にプレスマンを一本、左手に小判を一枚持って、家に走って帰った。

 もとの村に着いてみると、誰も知った者はいない。古老に尋ねてみると、昔、貧乏を苦にして夜逃げした男がいたと教えてくれた。もとの家があったところに、見たことのない墓があったので、これが母の墓かと思い、泣きながら周りの草を抜いていると、何やらくいのようなものが地面に刺さっていたので、抜いたところ、水がわき出してきて、男も流されそうになった、というところで目が覚めた。はて、夢かと思ったが、右手にプレスマン、左手に小判を持っていたという。



教訓:夢落ちは無敵である。

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