第8話 『女の子みたいな僕』
暖かい湯が頭から降り注ぐ。
生まれて初めてのシャワー。
泡立つ石鹸を髪に馴染ませ、シャンプーの匂いが鼻をくすぐった。
ごしごしと髪を洗い流し、湯を浴びながら顔を上げる。
そこにあったのは、磨かれた金属の鏡。
「……え?」
視界が、鮮明だった。
今までぼやけていた世界が、ひとつひとつ輪郭を持って目に飛び込んでくる。
鏡に映る顔も、湯気の一粒一粒も――こんなにもはっきり見えるなんて。
だが、鏡に映った自分の姿を見て、言葉を失った。
濡れた長い髪は金色に輝き、水色の瞳は宝石のように光を反射する。
透き通るような白い肌は、女の子のようにもちもちとしていた。
「……これが……僕? ……女の子だったの……?」
思わず鏡に手を伸ばす。
けれど、それは夢でも幻でもない。確かに僕の姿だった。
その瞬間、脳内にあの声が響く。
《――外見形質、最適化完了》
《備考:対象は男性です。男性器は正常に付属しています》
「……へ?」
思わず変な声が出る。
《説明します。あなたの体は元々このような形質でした。奴隷生活で汚れていただけです》
《さらに、視覚機能の修復を行いました》
《アカシックレコードによる最適化で、髪と肌の清潔化・外見調整・視力の完全回復が実施されました》
「……えっ、これ……本当に僕なの……? 目まで、こんなに……きれいに見えるなんて……」
シャワーの水しぶきの中、鏡に映るのは――女の子みたいな見た目の僕。
そして、ぼやけた世界しか知らなかった僕が、初めて“世界をはっきり見た”瞬間だった。
「いや……こ、こんなの……やっぱり恥ずかしいよぉ!!」
思わず鏡の前で声を上げ、水しぶきがぱしゃっと跳ねた。
◆◆◆
シャワーを終え、僕が脱衣所に出ると、そこには見慣れたはずの二人――いや、まるで別人の二人が立っていた。
「……ダン? イザナ?」
ダンは以前の豪放さはそのままに、筋肉が均整に整い、彫刻みたいな体躯になっていた。
イザナは黒髪を撫でつけ、鋭い目元に端正な輪郭――気障なくらいの美丈夫に変わっていた。
「なんだこれ……身体が軽ぇ……!」
ダンが拳を握りしめる。
「……咳が、出ねぇ……!」
イザナが胸を押さえ、驚愕に目を見開いた。
その瞬間、頭の奥に声が響く。
《――身体最適化完了。依存症因子の除去も実施》
《対象二名の肉体を健康的に調整しました》
「……大麻が、欲しくねぇ……?」
ダンが信じられないという顔で手を震わせた。
確かに、あれほど毎晩のように欲していたはずなのに、今は煙草の一本さえ頭をよぎらなかった。
そんな中、イザナがこちらを見て吹き出す。
「……ラマティ、お前……何、その格好」
「えっ……?」
慌てて自分の体を見下ろす。
そこには――ふわりとした白いワンピースのような服。
袖や裾には小花の刺繍まで入っていて、どう見ても女の子の服だった。
《――外見形質を基準に、最適化した衣服を割り当てました》
《備考:対象は男性ですが、可憐な装飾が適合率最高と判断されました》
次の瞬間――お婆さんから渡されたくたびれた服が、光に包まれて形を変えていった。
ダンの服は袖を破ったような動きやすい上衣となり、濃い褐色の筋肉を引き立てる。
「おおっ! なんだこれ、めちゃ動きやすいじゃねぇか!」
本人は両腕を振り回して大喜びしていた。
イザナの服は黒を基調にした長衣へと変わり、その立ち姿に凛とした威厳を添える。
「……着たら布が変わる服なのか。悪くないな」
鏡もないのに、冷静に裾を払って納得したように頷く。
そして、僕は――。
「ちょ、ちょっと待って!? なんで僕だけ……!」
白いワンピース姿のまま、変化もなく慌てて裾を押さえる僕に、二人は吹き出した。
「ははっ……似合ってんじゃねぇか」
「どう見ても女の子だな……いや、もしかして本当は女じゃないのか?」
「ち、違うよ!! 僕は男だってば!」
顔を真っ赤にしながら抗議する僕の脳裏に、再び冷徹な声が響いた。
《――対象の性別は男性。男性器も正常に付属しています》
「言わなくていいから!!!」
★★★
ラマティ(Ramati)
・年齢:15歳前後
・性別:男(ただし外見・服装のせいで女の子と勘違いされやすい)
・外見:黄金色の髪、水色の瞳。白く透き通るような肌。中性的で虚弱そうな容姿。
基本ステータス
・体力:E- → E
寝込みがちから脱却。普通に歩ける・走れる程度に改善。
・魔力:C(潜在A+) → B(潜在A+)
魔力回路が浄化され、使った時の負担が軽減。
・筋力:F- → E
最低限、日常生活で倒れなくなった。
・敏捷:F → E
視力が回復したことで動きが向上。逃げ足程度なら人並みに。
・精神力:D → C
依存症デバフが消えたことで心の靄が晴れ、前を向く力が強まった。
・知識:E〜EX(変動)
普段の地頭はまだE。だがアカシックレコード接続時はEXへ跳ね上がる。
能力名
・全知の書庫
所持スキル
・アカシックレコード
全知の書庫にアクセスし、知識・アルゴリズムを取得可能。
・防御アルゴリズム
対象が“即死”あるいは“重大致命傷”を負う未来が観測された場合、自動的に発動。
解除されたデバフ
・大麻中毒 → 完全除去
・アルコール依存 → 完全除去
・虚弱体質(極限) → 軽度の体力不足に改善
・視力不良 → 視力完全回復
人間関係
・ダン
・体力:B
・筋力:A
・依存症デバフ解除 → 酒・大麻を欲さなくなり、心身ともに健全化。
・外見は「袖をちぎった上衣+逞しい筋肉」が映える勇ましい姿。
イザナ
・体力:D → C+(病弱からほぼ克服)
・敏捷:B
・依存症デバフ解除 → 酒・大麻を欲さなくなり、心身ともに健全化。
・外見は「黒を基調にした長衣+鋭い目元」の美丈夫に進化。
ダン「おい読者! ここまで読んでくれてありがとな! ブクマもしてくれたら嬉しいぜ!」
イザナ「……評価も忘れるな」
ラマティ「も、もうっ! 二人とも失礼だよ! ……えっと……よかったら、ブクマと評価……お願いしますっ!」




