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第3話 『奴隷の薬』
翌日、イザナは労働中に激しく咳き込み、血を吐いた。
監督は顔をしかめて言い捨てる。
「こんな病人の奴隷に価値はねえ。すぐに捨てるしかないな」
「待てや!」
ダンが怒鳴り、イザナの背を支える。
「こいつはまだ生きてんだ! 勝手に捨てさせねえ!」
僕は二人の姿を見つめながら、昨夜の夢を思い出していた。
図書館に記された、あの野草の絵。
もし、本当にあれが――。
労働場の片隅、道端に小さな草が生えているのが目に入った。震える手でそれを指さす。
「……あの草……煎じれば……」
震える手で摘んだ草を、石で必死にすり潰す。
水も鍋もない。仕方なく、手元にあった水筒のぬるい水を少し垂らし、泥のように練り合わせる。
葉巻用に使っていた大麻の紙を広げ、その上にペーストを包み込む。
「……これで……飲んでみて……」
差し出された包みを見て、イザナとダンは顔を見合わせた。
「おい……これ、本当に大丈夫なのか?」
「ラマティ……お前、何を……」
唇を震わせながら答える。
「夢で……見たんだ。あの草で、病が静まるって……」
ダンは呆れたように鼻で笑い、けれどイザナは苦しい咳の合間に、弱々しく笑った。
「夢で見た薬か……はは……神託か? 悪くねぇ。どうせ死ぬんなら、夢の薬で博打してやるぜ……」
そう言って、彼は泥薬を口に含んだ。




