第24話 『制御権限:ハンドラー』
「……ラマティ、お前さっきから一人で何言ってんだ?」
横からダンの大きな声が飛んできた。振り返ると、彼はきょとんとした顔をしている。
……え? ダンには……何も起きてない……?
頬を伝って、勝手に涙がこぼれ落ちていく。
「な、なんで……僕……」
――その時、冷たい無機質な声が脳内に響いた。
《……ユニークスキル【クレイジーフール】は対象に刻まれました。未発動のため、本人には自覚がありません》
《【ハンドラー】の権限も、あなたとイザナに付与されています》
その時、御者台からイザナの声が鋭く響いた。
「……おい、この馬……妙に従順になってないか?」
手綱を握る指先に力を込めながら、低く呟く。
《効果――【ハンドラー】は“騎乗・制御対象”にも干渉を及ぼします》
《イザナに刻まれた【ハンドラー】の効力により、馬の動きは最適化されています》
「……まるで意志が繋がってるみたいだな」
イザナが鼻を鳴らし、馬を軽く走らせると、動きはまるで人間のように滑らかだった。
「おーい! なんだなんだ? 急に馬が速ぇぞ!」
荷台で毛布に寝転んでいたダンが驚いたように叫ぶ。
「ちょ、ちょっと……! 瓶が揺れたら薬こぼれちゃうから、あんまり早くしないでね!」
僕は慌てて小箱を抱きしめ、声を上げた。
「分かってる。……とりあえず水場を探すぞ」
イザナは視線を前に向けたまま、落ち着いた声で答える。
「補給できるうちに汲んでおいた方がいい。砂漠が近い以上、何が起こるか分からんからな」
★★★
《スキル名:ハンドラー》
《効果》
・対象のユニークスキル【粉砕愚者】発動を“感知”できる。
・共鳴状態を発生させることで、対象の暴走を抑制・停止させることが可能。
・共鳴下では、対象の力の一部を共有し、自身の身体能力を一時的に強化できる。
・副次効果として、騎乗・制御対象(馬など)の動作を最適化し、意思疎通のような操作が可能。
《副作用・制約》
・制御には対象との“縁”が必須。縁が弱まれば共鳴は成立せず、制御不能。
・制御者の心身に負荷がかかる。
《備考》
・【粉砕愚者】の安定運用のため、アカシックレコードが特例として付与した制御権限スキル。




