第1話 『アカシックレコード』
酒と煙に沈むようにして、僕の意識は途切れた。
……気がつくと、そこは奴隷小屋ではなかった。
四方八方に、果てしなく書架が伸びている。
天井すら見えない巨大な図書館。背丈を優に越える本棚が、無限に並び続けていた。
「……ここは、どこだ……?」
震える声が、誰もいない空間に吸い込まれていく。
すると本棚から一冊の書がふわりと浮かび上がり、僕の目の前に開かれた。
そこには、見たこともない草の絵。
その横には、意味の分からないはずの数式と調合法が並んでいる。
なのに不思議と――僕には理解できてしまった。
「……これ、薬……?」
ふと、視線が頁の端に止まる。
そこには異国の文字で――こう記されていた。
“ヴォイニッチ手稿”
その言葉の意味が分からない。
だが、なぜか強烈に脳裏に焼きついて離れなかった。
その瞬間、目の前に別の書がふわりと浮かび上がる。
勝手に頁が開き、文字が白光を放つ。
眩い光に包まれ、景色が揺らぐ。
次の瞬間、目の前に映し出されたのは――イザナだった。
黒髪の彼が、地面に倒れ込み、胸を押さえて咳き込んでいる。
赤い血が唇からこぼれ落ちる。
ダンが必死に抱き起こし、監督役の冷たい声が響く。
『こんな病人の奴隷に価値はねえ。すぐに捨てるしかないな』
「……イザナ……!?」
僕は叫んだ。けれど、声は届かない。
映像は霧のように溶け、跡形もなく消えてしまった。
再び、果てしない図書館の中。
手にはまだ、野草と調合法の記された書が残っている。
――覚えなきゃ。
あの夢が本当なら、イザナを救うにはこれしかない。
「……僕が……助ける……?」
気弱な唇から、震える言葉がこぼれ落ちる。
胸の奥で、初めて小さな火が灯った。
視界が白く揺れ、足元から崩れ落ちるようにして、意識が遠のく。
――目を覚ますと、奴隷小屋の天井。
汗に濡れた髪が額に張り付き、息は荒い。
けれど、夢の光景は不思議なほど鮮明に残っていた。
――ラマティの脳裏に刻まれたのは、ただひとつの名。
アカシックレコード。
世界の記録を映す、その夢の名を。
★★★
ラマティ(Ramati)
・年齢:15歳前後
・性別:男(中性的で女と間違われやすい。ただし現在は汚れと痩せ細りで本来の姿は隠れている)
・外見:
黄金色の髪は油と泥で黒ずみ、ぼさぼさに伸び放題。
本来は宝石のような水色の瞳も、曇って虚ろ。
白いはずの肌は垢と煤で黒ずみ、骨ばった虚弱な身体「ただ生きているだけ」という印象の奴隷少年。
基本ステータス
・体力:F-
虚弱そのもの。数分歩くだけで息切れし、転倒もしばしば。
・魔力:C(潜在A+)
膨大な魔力の資質は眠っている。本人は無自覚。
・筋力:F-
バケツを持ち運ぶのすら重労働。
・敏捷:F
逃げ足は遅く、追手にすぐ捕まる。
・精神力:D
虐げられ続け、依存に逃げる日々。だが根本には折れない芯が眠っている。
・知識:E → E〜EX(※夢での接続時限定)
普段は文字も読めないが、アカシックレコードに触れた時のみ、薬学や数式などを瞬時に理解できる。
所持スキル
・アカシックレコード(未覚醒)
まだ正式には発動していない。
状態・デバフ
・虚弱体質(極限)
飢餓と病気で衰弱。体は常に冷えている。
・大麻中毒:奴隷仲間と吸うことで心を麻痺させている。集中力と記憶力に悪影響。
・アルコール依存:幼少期から薄い酒を与えられており、飲まないと震えが出る。体力低下の原因の一つ。
・奴隷の身分:自由も選択肢もなく、逃げれば殺される存在。
・視力不良:夜はほぼ何も見えず、昼も霞んで見える。
人間関係
・イザナ:東の国の奴隷、辛辣だが頭の切れる仲間。ボードゲームの相手をしてくれる。結核に似た症状を抱えており、咳と血痰を繰り返す。
・ダン:豪快で優しい兄貴分。笑いで場を和ませる存在。
・ラマティ:二人に守られる末弟ポジション。弱いが、場を和ませる小さな冗談や気遣いはできる。




