第14話 『救済の代償』
路地裏の暗がりで、うずくまる影があった。
痩せ細った子ども。
腕は折れて皮膚は擦りむけ、顔色は土のように青白い。息も荒い。
「……子供か……」
ダンが眉をひそめる。
僕は思わず駆け寄った。
「大丈夫……? ねぇ、起きて……!」
イザナが低く言う。
「ラマティ、やめとけ。気持ちはわかるが……俺らには助ける金も知恵もねぇ」
その鋭い瞳が、うずくまる子どもへと向けられる。
「……中途半端な善意は、その子を余計に傷つけるだけだ」
突き放すような声。けれど、その目はわずかに揺れていた。
胸の奥が、焼けつくように熱くなる。
――でも、見捨てるなんて、できない……!
その瞬間、頭の奥で声が響いた。
《――接続開始。アカシックレコードを起動》
「っ……!」
《限定解放:治癒アルゴリズム》
《対象の損傷を一時的に修復可能。ただし生命力の根本的回復は不可》
《警告:本スキルは現段階の使用者適性を超えています。発動後、強制的に休眠状態へ移行します》
「……それで、いいよ」
僕は膝をつき、震える手を子どもの傷口にかざした。
光が滲む。
じんわりと温もりが広がり、折れていた腕がわずかに動き出す。
血は止まり、呼吸も少しずつ落ち着いていった。
「……う、うぅ……」
か細い声。子どもの瞼がかすかに開いた。
「……嘘だろ」
ダンが呆然とつぶやき、イザナは目を細める。
「……これが……神託か……?」
僕は息を切らしながら、笑った。
「ちょっと……だけど……助かった、よね……」
光はすぐに消え、アカシックレコードの声が冷ややかに告げる。
《――限定解放完了。使用者は強制的に休眠状態へ移行します》
「あっ……」
膝が崩れ落ちる。頭がくらくらする。
視界が滲み、足元から力が抜けていく。
それでも、胸の奥は温かかった。
――僕にもできるんだ……誰かを救うことが。
「ラマティ!? おい、しっかりしろ!」
ダンの声が遠くに響く。
イザナが僕の体を支え、眉をひそめる。
「……完全に限界まで神託を使ったな」
瞼が重く閉じていく。
最後に見えたのは、安心したように眠りにつく子どもの顔だった。
――そして僕の意識は、闇へと沈んでいった。
★★★
《スキル名:治癒アルゴリズム》
《発動条件》
・ラマティが強く「救いたい」と願った時に限定的に発動。
・発動条件の詳細は一部不明。
効果(確認されている範囲)
・痛みを和らげ、外傷の進行を止める。
・止血や裂傷の閉鎖、骨折の固定など、応急処置に特化。
副作用・制約
・《現段階における使用者適性を超えている》ため、発動後は必ず強制的に「休眠状態」へ移行。
・休眠は数時間〜半日に及び、肉体的疲労や倦怠感が残る。




