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【完結】全知の書庫アカシックレコードの継承者  作者: 刻彫
第一章 『囚われの金髪姫』
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第12話 『イザナ、開眼――』

 昼の街は活気に満ちていた。

 石畳の通りには屋台がずらりと並び、香ばしい匂いが漂っている。


「おっ、串焼きだ!」

 ダンが真っ先に駆け寄り、残った銀貨を差し出した。

 焼きたての肉が三本、串に刺さって手渡される。


「……うまっ!」

 豪快にかぶりつき、口いっぱいに頬張るダン。

「やっぱ肉は最高だな! 奴隷小屋の腐ったパンとは雲泥の差だ!」


 イザナも一口かじり、珍しく表情を緩めた。

「……ああ。普通にうまいな、これ」


 僕も串を受け取り、恐る恐る齧る。

 肉汁が舌に広がり、じんわりと温かさが喉へと落ちていった。

「……っ、こんな美味しいもの……食べるの、はじめて……」


 けれど、はしゃぐあまり手元がおぼつかず、白いワンピースの胸元に肉汁がぽたりと飛んだ。

「あっ……!」

 慌てて裾で拭こうとする僕を見て、イザナがふっと笑みを漏らす。


「……まったく、子どもみたいだな」

 その声音はからかいではなく、どこか安心したような柔らかさを帯びていた。

 頬を赤らめながら僕は黙り込み、ダンの豪快な笑い声にかき消される。

 

 三人で笑いながら串を平らげると、屋台のおじさんがおつりの小袋を差し出した。

「ほい、銀貨のおつりだ。銅貨が重いだろ、袋に入れておいたよ」


「おっ、さんきゅ!」

 ダンは屈託のない笑顔で礼を言い、受け取った小袋を腰にぶら下げた。

 そしてその中から一枚だけ銅貨を取り出し、手のひらで器用に弾いて遊ぶ。

「へっへー、残りはちゃんと袋にある。けど……今夜また酒でも飲むか!」


 その時だった。

 人混みの中から忍び寄った影。フードを深くかぶった盗人の手が、ダンの腰の袋をするりと抜き取った。


「……えっ?」

 僕は一瞬、何が起きたのか分からず息を詰まらせる。

 ただ、袋が消えたという事実だけを認識していた。

 

「……ちっ!」

 イザナの瞳が鋭く光った。

 コンマの刹那、盗人の指先が袋を抜き取る“瞬間”を、彼だけがはっきりと見ていた。


「待て!」

 短く叫ぶと同時に駆け出すイザナ。


「お、おい! どうした!?」

 事情が分からないまま、ダンも慌ててついていく。


 ――だ、大丈夫なの……?

 僕は心の中で問いかける。


《問題ありません。対象イザナは“瞬視”によって盗人の動きを捉えています》


 ……やっぱり……! イザナはもう能力に気づいてるんだ……!


 僕も胸の鼓動を早めながら、二人の後を追った。

 人混みをかき分け、盗人を追う影が三つ――路地裏へと消えていく。








★★★



《スキル名:瞬視》


《効果》

・対象は一瞬を極限まで細分化し、コンマ単位で視認可能。

・刃が振り下ろされる予兆、矢が放たれる直前の軌跡など「常人が捉えられない刹那」を捕捉できる。

・回避・カウンターに特化し、数的劣勢でも致命傷を避けられる可能性が高まる。


《副作用・制約》

・「見える」ことと「対処できる」ことは別であり、身体能力が伴わなければ致命回避は難しい。


備考

・未来を望んだ強い願い――「これからも生きたい」という意思を感知し、アカシックレコードによって刻まれたスキル。

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