第七十七話、特別編!夏だ!海だ!〇〇だ!!その参!
8月32日(月)曇り
アリエ達と花畑に行った。すごく綺麗な花が一面に咲き誇っていた。昼はアリエの作った料理を食べた。とてもおいしかった。また一緒に行きたい。
8月33日(火)晴れ
今日はみんなでプールへ。みんな可愛らしい水着を着ていたが、レイの水着が意外というか…なんか思っていたのと違った。プールは僕たち以外誰もいなくて貸切状態だったので思いっきり楽しむことができた。休憩にプールのそばの屋台で焼きそばを食べた。美味しかった。
やめて
8月34日(水)晴れ
今日もアリエ達と遊んだ。近くの山に登ってテントを張って泊まった。最近熊のニュースが多くて心配だったけど、アリエ達と一緒なら多分大丈夫だ。むしろ彼女達を襲ってしまった熊は運がないというか…。寝る前テントにいた時に鈍い音が聞こえたしアリエやレイが時々外に出て行ったけど…大丈夫だよね?まあ、明日まで何もないことを祈ろう。
気付いて
8月35日(木)晴れ
無事にキャンプから帰って来れた。そういえば昨日書いてなかったけど夜空がとても綺麗だった。満天の星がキラキラと瞬いていた。帰り道でウサギを見た。この辺で野生のウサギなんて珍しい。でも何持ってるか分からないし触るのはやめておいた。
逃げて
8月36日(金)雨
今日はダラダラして過ごした。こうやっていつもできないほど怠けられるのも夏休みの醍醐味だ。…夏休みの宿題やりたくないなぁ…。量が多すぎるよ…。今日はアリエもいないから家に一人。生憎雨も降ってて出掛けて気晴らし、っていうのは難しそうだったから、ゲームでもして過ごすことにした。
ニセモノ
8月37日(土)譖�繧�
今日はアリエたちと――に行った。遘√r蠢倥l縺ェ縺�縺ァ縲�楽しカッタ。騾�縺偵※騾�縺偵※騾�縺偵※騾�縺偵※騾�縺偵※
私に気づいて
亘希くん…
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「…あれ?」
気付いたら変な場所にいた。
そこは雲の上のようだった。雲のようにふわふわとしたものの上に自分が立っている。空にも雲が広がっており、なんとも形容し難い光景だ。その雲のようなものも色に現実味がない。視界の端には星空のようなものも見える。
そんな不思議な場所なのに、なぜか懐かしい。
「やっと起きたのね。」
「え?」
そう後ろから声がした。
「あなたは…。」
その人は和風の着物を着ていた。その頭には狐の耳のようなケモ耳がついていて、僕ににっこりと微笑んでいた。
「私は…イナリ、とでも名乗っておこうかな。ちょうど狐だし。」
「は、初めまして…皐月、亘希です…。」
「ふふっ、多分今のあなたは覚えないだろうけど、こうして会うのは二度目よ。」
「そ、そう…なんですか…?」
「えぇ、こうして話すのは初めてだけどね。」
覚えがない。…でも確かに、その笑みには何故か懐かしさがあった。
「こうして話せるのはここが魔法で作られた偽りの世界で、つくりが曖昧だからかな。でも長くは持たないだろうから手短に話すわ。」
偽りの…世界?いや、じゃあこれまでの毎日は全て嘘だったと言うこと?無意味だったということ?
「やっぱり疑うわよね。じゃあ単刀直入に聞くわ。あなた、あの子を、ベルを覚えてる?」
「ベル…?」
どこか懐かしい響きだと思った。でもそれが何故か、そして、それが誰なのかも思い出せない。
「やっぱり覚えてないわよね。」
「はい…。」
「仕方のないことだわ。記憶を改竄されているもの。でも、貴方はあの子を忘れてはいけない。あの子にとって貴方がどれだけ大切な存在か、ちゃんと理解してあげてね。」
「それってどういう…。」
「詳しい事は言えない。それよりも、貴方があの子の力になってあげて。直接私が貴方達を助ける事はできない。でもね、その背中を押してあげる事はできるから。」
イナリは笑顔のまま一歩一歩距離を詰めて、そして僕の額に人差し指を当てた。
「じゃあね、いつかまた、会えるといいけど。」
「え…?」
その瞬間足元の支えがなくなった。
ふわりと体が浮き、落下し始める。
その瞬間、僕は思い出す。
『私は悪魔。『暴食』の悪魔ベルゼ・バアルだよ。』
『ありがとう、私を助けてくれて。』
『これからよろしくね、亘希くん。』
何だ…?この記憶は…?
この子は、誰…?
『亘希くん、私を、あなたの友達にして!』
『私は神であり悪魔。ベルゼブブの孫にして現・最高神の娘、ベルゼ・王・グラディス。ここに参上、だよ!』
『亘希くんが私を助けてくれるなら私も自分を諦めずにいられる。私の夢を叶えられる。だからお願い、これからもずっと私の助けになって?』
そうだ。僕はこの子を知っている。あの笑顔を知っている。
ずっと忘れていた。
ふと上を見上げるとイナリがこちらを見下ろしていた。
やっぱりあの人は…。
「ベルを、頼んだよ。頑張って。」
そうはっきり聞こえた。今度は顔もはっきり見えた。
僕は彼女に届くようにできるだけ大きな声で叫ぶ。
「はい!頑張ります!」
意識が途切れる直前、イナリの笑顔が見えた。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
8月81日。
亘希はガハッと勢いよく起き上がる。
夢を見た。
大切で、きっと忘れてはいけない記憶を見た。
「思い出すのが遅すぎたな…。」
普通に考えれば8月は31日で終わりだ。夏休みもそこで終わる。それさえ気付けなかった。
きっとベルならこう言うだろう。
『もう〜、私を忘れるなんて契約者失格だよ〜?』と、いつもの笑顔で。
「何やってるんだ、僕はベルの友達で、契約者だろ…?そんな大切な人を忘れていたなんて…。」
とにかく、ベルを探さないと。
ベッドから急いで降りてリビングへ行く。
やはりそこにアリエはいた。
「あっ、おはようございます…?どうしたんですか、そんな顔して…。」
「アリエ…ベルはどこ?」
アリエは目を丸くして首を傾げる。
「ベル…って誰です?」
「っ…!」
アリエも忘れている。
いや、この世界にはベルという存在がいないんだ。だからアリエは騎士じゃないし多忙でもない。だからいつものようにこの家に来れるというわけだ。
でも、ベルがいなかったらアリエと僕はおそらく出会う事はない。なのに僕はこの世界でもアリエやアルと交友がある。そこの点が曖昧だ。
「それより、今日は何するんです?今日もダラダラするとかは言いませんよね?」
「…ああ。」
どう動くべきか…。
ここは偽りの世界。おそらく誰かが作った偽物の世界。
どこまでが本物でどこからが偽物かわからない。ベル以外にも何か違うところがあるような気がする。一体何が違う?
それに、もし悪魔の仕業だとしたら、これまでの悪魔はみんなベルを狙ってきていた。
ストラスもガープも、僕には目もくれずただ執拗にベルを狙っていた。ベルが危ないかもしれない。
一刻も早くこの偽物の世界から出なければ。
「なに難しい顔をしてるんですか?何か気になることでも?」
「いや…。…アリエは何かしたいこととかある?」
「私ですか…。そう聞かれると、これまでいろんなことをやりましたし、一通りのやりたい事はもうやってしまったかもしれませんね。」
「そっか。」
早くベルに会いたい。あの笑顔をもう一度見たい。
「みんなで集まった方が意見も集まるでしょうし、みんな呼びましょうか。」
「そうだね。そうしよう。」
ベルには借りがある。
こんな僕でも、ベルは友達にしてくれた。望みを叶えてくれた。
だからこそ、今度は僕があの子に借りを返したい、この手で。だから、必ずベルは僕が救ってみせる。
家のインターホンが鳴る。レイたちが来たのだ。
ベルを救う、絶対に、この手で。
その決意を胸に、僕は玄関を勢いよく開けた。




