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私の、創世記。  作者: 皐月リリ
第ニ章、天界動乱。
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第三十七話、葛藤。



話は少し前まで遡る。

ベルたちが麒麟と話を終え、別れた頃…。


「おかえりなさいませ、麒麟様。」

「ああ、今戻った。」

「あいつと何話してたんだ?」

「そんな大層な話はしてないよ。少しを 助言を、と言った感じかな。」

「そうでしたか…。もう行ってしまわれたのですか?」

 

朱雀がそう尋ねると麒麟は首を縦に振った。


「そういえばあたしら、あいつらとほぼ話せてねぇな。」

「そうですわね…。少しお話を…とは思っていましたけど…。」


麒麟は目を閉じ、小さく微笑んだ。


「…今日はこの辺りに泊まるそうだ。明日にでも、また顔を合わせるといい。」

「…!分かりました。お気遣いありがとうございます。」

「気にするな。」


麒麟は自分の荷物をまとめ、立ち上がった。


「さて、私はそろそろ帰るが…ここの後始末を頼んでもいいか?」


麒麟がそう尋ねると青龍はにっこり笑ってお辞儀をした。


「仰せのままに。気をつけてお帰りください。」

「…ああ。」


麒麟はこうして部屋を後にした。



※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※



屋敷の出口へ向かう最中、麒麟は周り廊下でアリエとすれ違った。

アリエは小さくお辞儀をし、立ち去ろうとする。


「…待て。」

「…何でしょう。」


二人は無言で暫くの間見つめ合う。


「会議のこともあり口には出さなかったが…お前が何故ここにいる、穏健派。」

「…その呼ばれ方は嫌いなんですが。」

「ならば保守派、とでも呼ぶか?私はどちらでもいいぞ。」


アリエの鋭い目と麒麟の威厳のある目が睨み合う。


「どのみち間違ってはいないだろう。我々地動隊は改革を押し進めようとするのに対し、お前たち天動隊はそれを一向に受け付けない。その通りだろう?」

「全て受け入れていないわけではありません。これからの天界に必要な改革は受け入れています。」

「我々が変えたいのはそこじゃない。我々が目指す改革はこれまで軒並み拒否され続けてきた。」

「それは…今の天界では大きく物事を変えることは不可能です。変えるにしても少しずつでないと他の神々も混乱します。」

「その混乱を恐れているからこの世界は変わらないのだ。世界が変わるには何か大きな出来事が必要だ。人々の意識を一新する新しい何かが始まらないと、この世界はいずれ滅びるぞ。」

「…っ!私たちはこの世界の神々を第一に考えています…!それに比べあなた方は変える変えないしか考えていない!少しは周りを見てください…!」

「…!周りは見ている…!我々も神々全員の役に立つために改革を促しているのだ。それをそんな言い方はないだろう…!」


両者は互いの本音で激しくぶつかり合う。

その口論は暫く続いた。


「少し…言いすぎたな…。まぁ、我々も時に自由に動く。だから今回の行為を咎めたりはしない。だが…。」


麒麟の目がギロリとアリエを睨む。


「邪魔だけはするなよ?」


アリエはその目にたじろぐ事はなかった。


「当たり前ですよ。そちらこそ、私たちの邪魔をしないように。特にお嬢様の邪魔だけは許しません。」

「さっきも言っただろう。我々もベル嬢の下に付いている。邪魔することなどなかろう。」

「一応の為の警告です。私はあの方のためならこの地位だって何だって使ってみせます。」

「…それはいい覚悟だな。せいぜい頑張るといい。我々に遅れを取らないように。」


麒麟はアリエに背を向け、わざとらしく手を振る。アリエもまっすぐ部屋に向かい、両者が再び目を合わせる事はなかった。


「…私だってこの世界は変わらないといけないと、そう思ってますよ…。」


――ですがあんな甘い方法で世界が変わるわけがない。私はそれを、身に染みて知っている。私も、()()()()()から。


「――だから苦手なんですよ、貴方は。」


アリエの呟きは麒麟の耳には届かなかった。



※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※



「ただいま戻りました。」

「あ、アリエおかえり。」


部屋に戻るとお姉様たちは部屋で集まって何か話している様子だった。

私は一つの影が消えている事に気づき、尋ねた。


「静香さんは?」

「ああ、あの子なら彼を追ってさっき走っていったわ。伝えなきゃいけないことがある、って。」

「そうでしたか…。」

「おい、青龍!まだ話途中だろ?早く会議続けんぞ!」


酒を片手に白虎様がお姉様を急かす。


「あっ…またいつものですか…。」

「そうよ…。」


四神会議後の恒例行事。それは…


「なぁ、お前ら。今日は何か成果はあったか?」

「いいえ全然。あの方は気にも留めないわ。」

「私もです…。誠意を示したり色々試してはみたんですけど…。」

「あの方は鈍感だからな…。ちょっとやそっとじゃまるで効果がねぇな…。」

「私もちょっと髪型を変えてみたり、あの方が好きそうな服にしてみたのだけれど…。」

「ハハっ、朱雀〜その程度じゃあの鈍感野郎には相手にもされんぞ〜。あたしらでも気づかなかったんだからさ〜。もっと分かりやすい変化を…。」

「…はっ!ならいっそ胸元をはだけさせて…」

「それはやりすぎだ。極端すぎだよお前は。」


意見交換をされる皆様方を八岐大蛇様が不思議そうに見つめていた。


「何を話しておるのじゃ、彼奴らは?」

「…詳しくは言いませんが色恋沙汰、ですよ…。」

「ほほう…!いいのう!吾の大好物じゃ!差し詰め、あの麒麟とかいう色男に恋しとるのじゃろう?吾も混ぜろ!」


八岐大蛇様はウキウキしながら輪に混ざっていった。

私はこういう話はあまり得意ではないし好きでもない。でもまあ、あの方々と話すのは本当に楽しい。今回は例外で会議の最初から参加したが、いつもはこの機を見計らって最後のこの会議だけ参加して親交を深めたりしている。


「ふぅ…、皆様、私からの助言ですが、もう少し積極的に攻めていくのが良いかと。特にあの人ならそこまでしないと効き目がないと思いますよ。」

「それは分かってるんだけどさぁ…具体的に何をやればいいのやら…。」

「ふふっ、いつもは威勢がいいくせにこの話になると消極的になるわね、アンタは。アンタならもっと果敢に攻めるのかと思っていたわ。」

「うっ、うるさい…!青龍、お前こそ何もしてないだろ!あたしはボディタッチは何度か…。」

「アンタ、実の上司によくそこまでできるわね…。ほんと、理解できないわ、アンタは。」


お姉様はそう呆れ顔でため息をつく。


「うーむ。お主らまだまだじゃのう。」

「え?」

「ここは恋愛の“すぺしゃりすと”たる吾が秘伝の術を教えてやろう!」

「ほんとか!?早く聞かせてくれ!」

「ふっふっふっ、そう急かすでない。吾秘伝の一撃必殺の恋の術、その名も…『押し倒し戦法』じゃ!」

「お、押し倒し戦法!?」


思ったより普通だった。


「そうじゃ、まずはその恋人を部屋に誘い込むのじゃ。そして丁度どちらの緊張もほぐれた頃に相手を押し倒し唇を奪う。そして自分の気持ちを曝け出すのじゃ。それが熱い夜の始まりじゃ。それから…」

「ちょっと待て!」


白虎様の大きな叫び声が部屋中に響き渡る。その顔は湯気が出そうなほど真っ赤になっていた。


「何じゃ?ここからが山場じゃぞ?」

「そうよ。ここからが本番じゃない。私は少し興味があるわ。」

「だだだだって…!唇を奪うって…。キスするってことだろ…?そんなことしたら赤ちゃん出来ちまうじゃねぇか!」

「は?」


全員が呆然と白虎の顔を見つめる。白虎はそれでもお構いなしにあたふたしながら話し続ける。


「そりゃ、あの方との子は…悪くはねぇ…けど!それって既成事実を作るってことだろ!?あたしにはとても…。」

「…子供じゃな。」

「…子供ね。」

「…子供ですね。」

「…子供ですね〜。」

「…子供ですわね。」

「〜〜ッ!全員子供子供うるさい!大体このくらい常識だろ!?キスしたら赤ちゃんができるって!」


白虎以外の全員が顔を見合わせて思わず吹き出す。


「何笑ってんだ!?あたしは本気だぞ!もし何かあってあの方との子供が生まれたとしても!あたしは絶対育て上げて見せる!」

「ふっ…ふふっ…!最高よアンタ…!」

「ほんと、先輩には負けます…!ぷふっ!」

「ほんと、面白いですわ…!ふふっ…!」

「かっかっかっ、傑作じゃのう!」


私も思わず笑ってしまいそうになった。だがここは我慢、我慢だ。白虎は純粋なお方。このままあの方のままでいてもらうために今の純粋な白虎様を名いっぱい守ろう。…それにしても面白すぎる。


「じゃ、いつか期待してるわ、あなたとあの方の子。まぁその前に私があの方を手に入れるから不可能でしょうけど。」

「なっ!?あたしがあの方を貰うんだ!」

「あら、私が貰いますわ!」

「私だって先輩方には負けません!力でも恋愛でも、いつか先輩方を追い抜いて見せます!」

「かっかっかっ、修羅場じゃのう!」


どっと笑い声が起き、私もさっきまでの衝突も忘れて釣られて笑い出す。

この方々ならあの人のいい中和剤にはなるだろう。

一応対立関係とはいえ、できるだけ関係は険悪じゃない方がいい。彼女たちを通じてあの人が少しでも道を踏み外さないように見張っていられたら本望だ。そのためにも私は…


「あれ、アリエ、どこか行くの?」

「はい、私にも尊敬するお方がいますから。」

「…ふふっ、分かったわ。後でそっちにお邪魔するとだけ伝えておいて。」

「分かりました。」


「私は少し暗がり始めた道を走った。

そうだ。私は天動隊隊長である前にあの方の騎士だ。あの方をお守りするのが一番の任務だ。

しばらく駆けると二人の頭が見えてくる。どうやら間に合ったようだ。


一度立ち止まったアリエは少し微笑み、再び二人の元へかけていった。

あの方をこれからも守る、それが私の誓い――。




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