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私の、創世記。  作者: 皐月リリ
第ニ章、天界動乱。
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第三十四話、予期せぬ邂逅。


「しっ…静香…!?」

「えっ、お…おにいちゃん…!?」


二人はここにいるはずない人との出会いに驚愕した。


「何でここに…!?」

「それはこっちのセリフだよ…!おにいちゃんが何で…!?」


静香も亘希たちがここに来る事を予期していなかったようだ。そして何かに勘づいたように大きく目を見開いた。


「麒麟…これは一体どういう事…!?まさかおにいちゃんは…!」


金髪の長身の男――麒麟に静香が詰め寄る。今にも掴みかかりそうな勢いにカマイタチが間に入って制止する。


「勝手な行動は控えてくれると嬉しいです。麒麟様の御前ですから。二人の話は後でやるです。」

「でも…!」

「…そこまでにしなさい、静香。」


凛とした声が響く。カマイタチの制止も効かなかった静香の動きが止まる。静香を含む全員の目が彼女の方へ向く。まさに鶴の一声だ。


「青龍さん…。」

「この会議の場で個人の問題を持ち込むことは禁物です。それに、彼についてはおそらくあの方から説明があるでしょうから。でしょう、麒麟様?」


彼女の青い瞳が麒麟を映す。麒麟は静かに頷いた。


「…ああ。もとよりそのつもりだ。彼については案ずるな。私が保証する。」

「とのことです。だから今は下がってなさい。」

「…はい、分かりました…。」


唇を噛みながら渋々静香が後ろに控える。

そんな中でも亘希は驚きを隠さずにいた。


「…麒麟様は知っていたのですか?この二人の関係を。」


青龍がそう尋ねると、麒麟は首を横に振った。


「いや、知らなかったな。まさかこの二人に何か繋がりがあるとは。」

「招待したのは麒麟様でしたからね…。私も一応確認すべきでした。すみません。」

「いや、お前たちに特に相談せず事を進めた私のミスだ。そう悲観せずとも良い。」


そう言って麒麟はその目をこちらへ向けてきた。


「皐月亘希、だったな?お前はこの娘とどんな関係だ?兄弟、といったところか?答えろ。」


ただ見つめられてるだけなのに凄まじい威圧感だ。思わず冷や汗が流れる。


「し、静香とは従姉妹…です…。」


その覇気に気圧されながらも正直に答える。

すると麒麟は少し微笑みこう言った。


「そうだったのか…。驚かせてすまなかった。ここは私から謝らせてほしい。」


席から立ち上がり頭を下げる麒麟に亘希は思わずあたふたする。


「いえいえそんな…!招待してもらえたのはありがたいですし…!そんな頭を下げなくても…!」

「いや、ここは私が謝るべきだ。妙な誤解を招く可能性だってあった。私のリサーチ不足のせいでな。本当にすまない。」


もう一度深々と頭を下げた後、麒麟は優しく微笑んだ。


「地動隊本隊長、麒麟だ。よろしく。私の部下がお世話になったようだ。」

「こ、こちらこそよろしくお願いします…。」

「ふふっ、そんなに緊張しなくとも良い。対等に話してくれて構わないよ。彼女たちにもそう言っているのだが、なかなか聞いてはもらえない。可笑しなものだな。」


そう言って周りの四神たちに目を向ける。


「そうは言われましても…私はあなたを敬わずにはいられません。これからもずっとお側に仕えさせていただきます。」

「あたしもだな。こいつに賛成するのはイマイチ気が乗らないが。」

「こいつ言うな!青龍よ!せ・い・りゅ・う!」

「私もです。あなた様は私の尊敬する上司です。この命に替えてでもお守りすべき存在です。」

「私も同じです。あなたほど惹かれる者はおりませんもの。」

「だそうだ。敬われるというのは大変なものだな。」


そう自虐しながら麒麟がかすかに笑う。


「では、そろそろ会議を始めようか。」

「はい!」


四神たちの揃った返事で、会議は始まりを告げた。



※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※



今度はカマイタチに変わってアリエが会議を取り仕切り始めた。


「――では、最初の議題は『八岐大蛇様の処遇について』、です。」

「おっ、吾の話か?」

「はい、その通りです。先日の玄武様のご活躍により島根県内で彼女を確保。現在は玄武様のところに身を置かせています。彼女の立場上、この会議の場で全員で話し合って処遇を決めるのがよろしいかと。」

「分かった。その話から始めようか。」


アリエはチラッと亘希たちの方を向き、何か思い立ったように麒麟に進言する。


「…おそらく彼女のことについて理解していない者が約二名ほどいらっしゃいますので説明してもよろしいでしょうか?」

「ああ、構わないよ。」

「ありがとうございます。」


深々とお礼をしてベルたちの方を向いたアリエは淡々と説明を始めた。


「まず、あの方は『古代神』という、特別な出生をお持ちです。」

「古代神?」

「はい。その名の通り長く生きている神のことを表すのですが、その『長く』と言うのは一度でも天界の壊滅を生き延びてきたという条件を満たす必要があります。」

「天界の…壊滅…?」


つまりは世界の終末ということだろうか。しかし一回世界が終わっただなんて当然聞いたことがない。


「この天界では天は数度にわたって滅びたというのが定説だ。その数は未だ定かではないが痕跡だって多く見つかっている。その終末を乗り越えた神々こそが古代神と呼ばれる神々なのだ。」


麒麟が分かりやすくアドバイスを入れる。アリエは麒麟に小さくお辞儀をした。


「麒麟様がおっしゃられた通りです。古代神の特徴としては三つほどあります。一つは、神としてのプライドが高いこと。二つ目は成長が止まっていて姿が幼いこと、そして最後に…。」


アリエが合図をすると、多くの神々が八岐大蛇に襲いかかる。玄武以外の四神も八岐大蛇に向かって攻撃を仕掛けた。


「アリエ…!?そんな一度に攻撃したら…!」

「大丈夫です。見ていてください。」


何度も何度も刃が八岐大蛇の体を削り、拳が何度もヒットする。

しかし八岐大蛇は痛がる素振りすら見せない。余裕そうな笑みさえ見せている。そして次の瞬間、多くの神々は八岐大蛇に一網打尽にされていた。彼女の体から伸びる大きな長い蛇の頭に弾き飛ばされてしまったのだ。


「頭が高い、愚民共。」


さっきより口が悪くなっている。結構調子に乗っているようだ。


「つ、強い…!」

「でしょう?しかし…」


だがその八岐大蛇の慢心は次の攻撃で崩れ落ちた。たった一度の攻撃で八岐大蛇は倒れた。さっきまでどの神様も歯が立たなかった八岐大蛇が玄武によって一発KOされてしまったのだ。


「これが古代神の最後の特徴。多くの攻撃に耐性を持ち攻撃が効かない代わりに、ある特定の属性の攻撃にだけめっぽう弱い。これが最大の特徴です。」


道理で出雲でベルや亘希の攻撃が効かなかったのか。二人は納得した。


「痛いではないか!もっと丁重に扱え!吾は古代神じゃぞ!」


プライドが高いのも当たっているようだ。つまりは八岐大蛇は正真正銘の古代神だったと言うわけだ。


「説明は以上です。議題に戻りましょう。」

「では、八岐大蛇をどうするかについて意見がある者はいるか?」


麒麟の質問に白虎が手を挙げた。


「白虎。」

「青龍のとこに送り込めばいいと思います。困った時は押しつけです。」

「それはただお前が青龍に嫌がらせしたいだけだろ。」

「ギクッ!」


麒麟は大きくため息をつく。裏で青龍と白虎が喧嘩しているのを無視しながら次に手を挙げた朱雀の方を向く。


「朱雀、お前はどう思う?」

「私は玄武さんの所に置いておくのが得策だと思いますわ。万が一の場合でも彼女を止められるのは玄武さんだけだろうし。」

「真っ当な意見だな。異論はあるか?」


誰も首を横に振る者も手を上げる者もいなかった。


「じゃあ決まりだな。玄武はそれでいいのか?」

「はい、私はこの身を懸けてあなた様にお仕えするのみ。この任務もこなして見せます。」

「頼もしいな。よろしく頼む。」

「はい!」


こうして八岐大蛇の処遇が決まったのだった。



※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※



「次の議題はこの地動隊の今後の方針について、です。」

「僭越ながら麒麟様、方針とは具体的に何の方針なのでしょうか…?」


青龍が尋ねると麒麟はニヤリと笑った。


「それは決まっているだろう?これがお前たち二人を呼んだ理由だ。」


そう言ってベルと亘希の方を向いた。


「えっ、私たち?」

「ああ、そうだ。特にお前だ、皐月亘希。」

「えっ、僕…ですか…?」

「ああ。我々は組織で動くものだ。よって、誰に付くかはこの中のリーダーである私に委ねられるわけだ。だから――」


そう言って麒麟は亘希を指さした。


「今からお前が彼女について何でも話してみろ。もし私の心を動かすことができたのなら、お前たちの手助けをしてやろう。特に、そこのベル嬢が主神の座に就くための手助けをな…。」


いきなり始まった試練に亘希はただ固まることしかできなかった。




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