1-3: 「洞窟で待ち受ける試練」
リバンス
魔法が全く使えない冒険者。妹の治療費を稼ぐために都会にやってきたが、魔法の才能がないため、日々の雑務ばかりをこなしている。性格は陽気で楽天的だが、内心では自分の無能さにコンプレックスを感じている。それでも誰かの役に立つことに喜びを見出し、日々努力を重ねている。洞窟での冒険で、仲間と共に危機に直面する。
グレン
駆け出しの冒険者で、リバンスの「仲間」として行動しているが、実際は彼を雑用係として便利に使っている。口が悪く、リバンスを見下すような発言が多いが、自分もまだ実力不足であることを心のどこかで感じている。リバンスに対して厳しい態度を取ることで、自尊心を保とうとしている。炎の魔法を操ることができ、簡単な火の玉や剣に炎をまとわせる程度の技術を駆使し、モンスター退治ではその力を発揮している。
グレンの仲間たち
グレンと行動を共にする駆け出しの冒険者たち。彼らはグレンと同じく、リバンスを雑用係として軽んじており、彼の無能さを嘲笑することが日常茶飯事となっている。各々が異なる魔法や戦闘スタイルを持ち、グレンと共にモンスター退治をしているが、実力はまだまだ未熟。それでも、互いに支え合いながら冒険者としての経験を積んでいる。
洞窟の入口から一歩踏み込んだ瞬間、冷たい空気がリバンスの肌に触れた。岩壁に反響する音が静寂を破り、彼らの足音と呼吸が一層大きく聞こえる。洞窟の中は薄暗く、仲間の一人が放った「ライト」の魔法が岩肌をぼんやりと照らしている。
「おい、しっかりついてこいよ、リバンス!」
前方でグレンが振り返りながら声をかける。リバンスは荷物を持ちながらも、何とか皆に遅れずについていく。
「わかってるさ。ちゃんと見てるから。」
リバンスは言い返しながらも、洞窟の奥へと続く道を見つめた。彼の手には仲間の荷物がいくつもあり、その重さが肩にのしかかる。だが、そんな苦労は顔に出さず、ひたむきに前進する。
道中、何匹かの小型モンスターが姿を現したが、仲間たちが難なくそれらを倒していく。リバンスはその度に荷物を降ろし、倒したモンスターの残骸から素材を拾い集め、収納袋に入れていく。戦闘には参加しないが、彼なりに役立つ方法を模索していた。
「はは、やっぱりこいつら相手じゃ楽勝だな。」
グレンが満足げに笑う。彼は剣に炎をまとわせて振るうことで、小さなモンスターを切り裂き、時折小さな火の玉を放って敵を焼く。威力はさほど強くないが、こうした基本的な魔法と剣の組み合わせで、なんとか戦えている。
洞窟の奥に進むにつれ、リバンスは妙な不安を感じ始めていた。何かが違う。空気が重く、息がしづらくなっている気がする。
「なんだか、変な感じがする…」
リバンスが呟くと、グレンがすかさず振り返ってきた。
「おい、何ビビってんだよ。そんなこと言ってると、もっと雑用押し付けるぞ?」
その言葉に、他の仲間たちも軽く笑い声を上げる。リバンスは唇を引き結びながら黙って前を向いた。
突然、大きな音が洞窟内に響いた。振動とともに岩が崩れ始め、一行は慌てて立ち止まった。
「落盤だ!みんな、下がれ!」
グレンが叫ぶが、その声も岩の崩れる音にかき消される。一行はとっさに岩陰に身を寄せ、頭を抱えた。
崩落が収まると、仲間たちは後方を振り返った。しかし、出口が完全に塞がれてしまっていることに気づく。
「後ろが塞がれた…戻れないぞ!」
一人の仲間が声を上げる。焦りが全員の顔に浮かんだ。
「くそ、仕方ない。何とかしてこの岩をどかすしかない。」
グレンは炎の魔法を岩に向けて放ったが、岩はびくともしない。他の仲間たちも魔法で岩を破壊しようと試みるが、威力が足りず、結局無駄に終わった。
「ダメだ…俺たちの魔法じゃ、この岩を壊せない。」
リバンスは周囲を見渡し、仕方なく仲間たちと共に前へ進むことにした。洞窟の奥へと進むにつれ、彼らの緊張感は高まっていく。
やがて、一行は開けた空間にたどり着いた。しかし、その先にはスライムやゴブリン、ドレインバットなどの小型モンスターが群れを成して待ち構えていた。モンスターたちは一斉にうなり声を上げ、リバンスたちを威圧するように睨みつけている。
そして最奥には、巨大なサラマンダーが鎮座していた。その赤黒い鱗からは、わずかに蒸気が立ち昇り、凶悪な瞳でリバンスたちを見据えている。
「やばい!何でこんな奴がいるんだ!」
グレンが声を上げると、他の仲間たちも慌てふためき始めた。モンスターの圧倒的な存在感に、一同は一瞬で恐怖に包まれる。
「どうするんだよ!このままじゃ全滅だぞ!」
一人が叫び、リバンスも剣を手にしながら焦りの色を隠せない。洞窟内の戦いが、彼らの予想を超えたものとなりつつあることは明らかだった。