6-3: 「魔導都市アーカルム」
リバンスとルーンを乗せた馬車がアンバーリッジ村を出発した。車窓から見える景色が徐々に変化していく中、二人の心は次第にアーカルムへの期待で膨らんでいった。
「ねえ、リバンス」ルーンが静かな声で呼びかけた。「アーカルムのこと、知ってる?」
リバンスは首を横に振った。「ああ、噂で聞いたことはあるけど、詳しくは知らないんだ」
ルーンは微笑んで説明を始めた。「アーカルムは、世界最大の魔導都市よ。魔法研究の中心地で、世界中の魔法使いが集まるの」
「噂は聞いてたけど、そんなすごいところなのか」リバンスの目が輝いた。
「ええ。それに、街の中心には巨大な図書館があって、古代の魔法書まで所蔵されているんだって」ルーンの声には興奮が滲んでいた。
リバンスは自分の能力のことを思い出した。「そうか...もしかしたら、俺の複写再現の能力について何か分かるかもしれないな」
「きっと何か見つかるわ」ルーンは頷いた。
馬車が丘を越えると、突如としてアーカルムの全容が目の前に広がった。巨大な魔法の塔が空へと聳え立ち、その周りを幾つもの建物が空中に浮かんでいる。街全体が淡い青い光に包まれ、まるで幻想の中にいるかのようだった。
「うわ...」リバンスは思わず声を漏らした。
ルーンも同じように魅入っていた。
馬車は街の入り口で止まった。そこには「魔力検査所」と書かれた建物があり、入城する者は全員そこを通らなければならないようだった。
「魔力検査場?」リバンスが不思議そうに呟いた。
「ここでアーカルム内での魔法使いとしてのランクを決められるの。ランクによってお店が割引になったり待遇がよくなるらしいわ。」ルーンは少し緊張した面持ちで答えた。
リバンスとルーンは列に並び、順番を待った。ルーンが検査を受けると、検査官は「上級魔法使い」という札を渡した。
「ふう...」ルーンは安堵の表情を浮かべる。
次はリバンスの番だった。彼が検査台に立つと、検査官は眉をひそめた。
「おや?魔力の反応がまったくありませんね」検査官は不思議そうに言った。
リバンスは苦笑いを浮かべた。「あ、はい。元々魔法が使えなくて...」
検査官は「無魔力」と書かれた札をリバンスに渡しながら、小さな声で呟いた。
「無魔力がなにしにきたんだか...」
その言葉を聞いて、リバンスは少し落胆した表情を見せた。しかし、ルーンが彼の肩に手を置いた。
「気にしないで。あなたの能力は、魔力とは違う特別なものだから」
リバンスは頷き、気持ちを立て直した。
二人が街に足を踏み入れると、そこは想像を超える光景が広がっていた。空中を飛び交う絨毯や箒、色とりどりの光で彩られた看板、自動で動く人形たち。街全体が魔法で溢れていた。
「すごい...」リバンスは呆然と周りを見回した。
ルーンも同じように驚いていたが、すぐに我に返った。「まずは宿を探さないと」
二人は街を歩きながら宿を探した。道中、様々な魔法ショップや魔法学校、さらには魔法競技場まで目にした。どの建物も独特の雰囲気を持ち、リバンスたちの目を釘付けにした。
やっとのことで適当な宿を見つけ、二人は部屋に落ち着いた。
「さて、明日からどうする?」リバンスがルーンに尋ねた。
ルーンは少し考えてから答えた。「私は知り合いの魔道具屋さんに行って、新しい杖を注文しようと思うの。前の杖はミラに...」
彼女の声が途切れた。リバンスは黙ってルーンの肩に手を置いた。
「わかった。俺は図書館に行って、この能力のことを調べてみるよ」
ルーンは微笑んだ。「そうね。きっと何か見つかるわ」
夜、リバンスは窓から街を見下ろしていた。魔法の光で彩られた街は、夜になっても眩しいほどだった。彼の胸には期待と不安が渦巻いていた。
(この街で、俺の能力の秘密が分かるかもしれない...)
◇◇◇◇◇
同じ頃、街のどこかで、黒い外套を着た人影が密やかに動いていた。その動きには、何か不穏な空気が漂っていた。
「王女はこの街にいる。くまなく探せ。」
「分かりました、レン様」他の者たちが応じた。
指示を受けた者たちは頷くと、闇に溶けるように姿を消した。
残ったレンは路地裏から出ると立ち止まり、夜空を見上げた。
「ルーン...お前の居場所はもうすぐ分かる。そして、お前を、この手に...」
◇◇◇◇◇
翌朝、リバンスとルーンは朝食を取りながら、今日の予定を確認し合った。
「じゃあ、俺は図書館に行ってくる」リバンスが言った。
ルーンは頷いた。「私は魔道具屋に行くわ。夕方には戻ってくるから、夕食を食べに行きましょう。」
二人は宿を出て、それぞれの目的地へと向かった。
リバンスは巨大な図書館の前に立ち、その威容に圧倒されながらも、扉を開けるのであった。




