1-2: 「雑用から始まる冒険」
リバンス
魔法が全く使えない冒険者。病気の妹の治療費を稼ぐために都会にやってきたが、魔法の才能がないため、日々の雑務ばかりをこなしている。性格は陽気で楽天的だが、内心では自分の無能さにコンプレックスを感じている。それでも誰かの役に立つことに喜びを見出し、日々努力を重ねている。
グレン
駆け出しの冒険者で、リバンスの「仲間」として行動しているが、実際は彼を雑用係として便利に使っている。口が悪く、リバンスを見下すような発言が多いが、自分もまだ実力不足であることを心のどこかで感じている。リバンスに対して厳しい態度を取ることで、自尊心を保とうとしている。
リバンスは食堂での朝食を終えると、宿屋の一角にある自分の部屋へ戻った。古びた木製のドアを開けると、そこには彼の装備が乱雑に置かれていた。冒険者としての身支度を整えるため、彼は革の鎧を手に取り、少し躊躇しながらも装備を身に付け始める。
「よし、これでいいかな…?」
鏡に映る自分の姿を確認し、リバンスは深呼吸をした。今日は洞窟でのモンスター退治。簡単な依頼だと言われているが、何が起こるかわからないのが冒険というものだ。彼は剣を腰に差し、荷物を背負うと、部屋を後にした。
階段を降りると、すでにグレンと他の仲間たちが準備を整えて待っていた。グレンはリバンスを見るなり、軽く手を振りながら近づいてきた。
「おう、リバンス。やっと来たか。今日もお前が最後方だ。道具袋と水袋を持ってくれよ。」
リバンスは笑顔を見せながらも、心の中で小さなため息をついた。いつも通りの雑用だ。仲間たちが彼を頼りにすることはほとんどなく、いつもこうして荷物運びや道具の管理を任される。
「わかったよ、グレン。しっかり持つから安心してくれ。」
リバンスはそう言って、仲間たちの荷物を次々と受け取った。荷物を持つ手が重くなっていくが、彼は気にせずに皆の後を追いかけた。
宿屋を出発し、街を抜けて森へと向かう道を進む。仲間たちは軽やかな足取りで歩いているが、リバンスは最後方で荷物の重さに耐えながら一歩一歩進んでいた。
「リバンス、少し遅いぞ!もっとしっかりしてくれ!」
グレンの声が前方から響く。リバンスは前を歩く仲間たちを見ながら、笑顔を見せつつも荷物を持ち直し、歩き続けた。
「わかってるさ、頑張るよ。」
森の中へと入ると、木々が生い茂り、空気が少しひんやりとしてくる。鳥の鳴き声や風の音が心地よく響き、リバンスの疲れを少しだけ和らげた。
「このあたりの森は静かでいいなぁ。モンスターもそんなに出ないし、安全な場所なんだろうな。」
リバンスが呟くと、グレンが笑いながら答えた。
「まぁ、今日の依頼は初心者向けだからな。お前みたいな雑用係でも問題なくこなせるさ。」
リバンスはその言葉に少しだけ悔しさを感じたが、それでも黙って歩き続けた。彼には自分の役割がある。それがどんなに小さなことであっても、誰かの役に立つならば、それでいいと彼は思っていた。
しばらく歩くと、目的地である洞窟の入り口が見えてきた。大きな岩陰にひっそりと佇む洞窟は、まるで何かを隠しているかのように不気味な雰囲気を漂わせていた。
「さぁ、着いたぞ。これからが本番だ。」
グレンが仲間たちに声をかけると、一行は洞窟の中へと足を踏み入れた。リバンスもまた、荷物をしっかりと背負い直し、洞窟の闇へと足を踏み入れるのだった。