3-3: 「空への旅立ち」
リバンス
魔法が全く使えない冒険者。病気の妹の治療費を稼ぐために都会にやってきた。魔法の才能がないため、グレンのもとで雑用をこなしていたが、突如「複写再現」という特殊能力に目覚める。性格は陽気で楽天的だが、内心では自分の無能さにコンプレックスを感じている。新たな冒険を求めて魔法都市アーカルムへ向かう途中。
グレン
駆け出しの冒険者で、以前はリバンスの「仲間」として行動していたが、実際は彼を雑用係として便利に使っていた。口が悪く、リバンスを見下すような発言が多い。リバンスの能力覚醒により、彼への嫉妬心を募らせ、強い恨みを抱いている。リバンスに屈辱を与えられたことで、復讐心に燃えている。
不思議な少女
タレイド行きの馬車でリバンスが初めて出会った謎の少女。魔法使いで、アイスウォールなどの魔法を操る。無口で素っ気ない態度を取るが、飛空艇での空賊との戦いでリバンスと協力する。その正体や目的は謎に包まれている。
ウルス
ギルドマスター。大柄で屈強な体躯を持つ歴戦の冒険者。厳しくも公平な態度でギルドを取り仕切っている。
リバンスは、タレイドの飛空艇乗り場に到着した。魔法都市アーカルム行きのチケットを購入し、出航窓口へと向かう。
貿易の要所であるこの乗り場は、想像以上に広大だった。数多くの飛空艇が発着し、人々が行き交う様子に圧倒される。
(すごい…こんなに広いとは)
案内表示を頼りに、なんとか目的の窓口にたどり着いた。
周囲を見渡すと、魔法杖や魔導書を持った人々が目につく。今まで自分とは縁遠かった魔法の世界が、徐々に近づいてくるのを感じ、リバンスの胸は高鳴った。
(魔法都市アーカルム…そこなら、この突然目覚めた能力について何か分かるかもしれない。それに、なぜ俺が生まれつき魔法が使えないのか…才能の問題なのか、それとも別の理由があるのか…その謎も解けるかもしれない)
そんな期待と不安が入り混じる中、ふと目に入ったのは例の不思議な少女だった。ソファに腰掛け、脇には小柄な彼女と同じくらいの長さの魔法杖が置かれている。
「魔法使いだったのか」とリバンスは呟いた。
(話しかけづらいよなぁ…でも、なんか気になるんだよな)
そんなことを考えているうちに、搭乗のアナウンスが流れた。
(まぁ、行き先が同じならまた会えるかもしれない)
リバンスは新たな冒険への期待を胸に、飛空艇に乗り込んだ。
艇内は予想以上に広く、くつろげるスペースだけでなく、酒場や大浴場、道具屋や書店まであった。
(3日の旅路も退屈しなさそうだな)
客室に荷物を置いた後、リバンスは艇内を見て回ることにした。まずは回復薬と魔導インベントリを調達するため、道具屋へ向かう。
店内の魔導インベントリコーナーに立ち寄ると、店主が親切に説明してくれた。
「魔導インベントリは見た目は小さな鞄なんですが、中身が魔法で拡張されていて、驚くほどたくさんのものが入るんですよ。容量や機能で値段が変わってきます」
様々な容量とデザインの商品が並んでおり、中には100ゴールドもする高級品もある。
(うーん、装備更新したばかりだし、妹への仕送りも考えると…)
リバンスは5ゴールドの中級魔導インベントリを手に取った。
(これなら十分だろう。一人で旅するには余裕の容量だ)
リバンスは魔導インベントリを購入し、さらに回復薬を数本手に入れた。これで万が一の時の備も整った。
道具屋を後にしたリバンスは、飛空艇内を散策することにした。広々とした通路を歩いていると、大きな窓から外の景色が見える場所に出た。雲海の上を進む飛空艇からの眺めは壮観で、リバンスは思わず足を止めてしまった。
(すごい...こんな景色、生まれて初めて見たよ)
しばらく景色に見惚れた後、リバンスは艇内の図書室に向かった。入口を入ると、そこで例の不思議な少女と鉢合わせた。
「あ、やあ」リバンスは軽く声をかけた。
少女は無表情のまま、小さく頷いただけだった。
「えっと...君も本を探してるの?」リバンスは会話を続けようと試みた。
「ええ」少女は素っ気なく答え、すぐに本棚の方へ向かってしまった。
(相変わらず話しかけづらいな...)
リバンスは少し気落ちしたが、自分も本を探し始めた。魔法に関する本を探してみたが、難解な専門書ばかりで、自分の能力や魔法が使えない理由についての手掛かりは見つからなかった。
(やっぱり、アーカルムに着いてから専門家に相談したほうがいいかもしれないな)
夜になり、リバンスは自分の客室に戻った。ベッドに横たわりながら、今日の出来事を振り返る。
(明日は酒場でも覗いてみようかな。他の乗客から面白い話が聞けるかもしれない)
そんなことを考えているうちに、リバンスは徐々に眠りに落ちていった。
深夜、突然の揺れと警報音でリバンスは目を覚ました。
「なっ...何だ!?」
慌てて起き上がると、廊下から慌ただしい足音と叫び声が聞こえてくる。リバンスが部屋を飛び出すと、パニックに陥った乗客たちが走り回っている様子が目に入った。
「どうしたんですか!?」
リバンスは近くを走り過ぎようとした乗務員を捕まえて尋ねた。
乗務員は青ざめた顔で答えた。
「空賊だ!空賊に襲われている!」
その言葉を聞いた瞬間、リバンスの背筋に冷たいものが走った。
(まさか...こんなところで空賊に!?)
リバンスは咄嗟に自室に戻り、新しく購入した剣を手に取った。再び廊下に出ると、乗客たちの悲鳴と金属のぶつかり合う音が聞こえてきた。
(俺に何ができるんだ...でも、このままじっとしてるわけにはいかないよな)
決意を固めたリバンスは、音のする方へと走り出した。廊下を抜けると、飛空艇の展望デッキに出た。そこで目にしたのは、混乱と恐怖に満ちた光景だった。
広々とした展望デッキには、大きなガラス窓から夜空と雲海が見える。その美しい景色とは対照的に、空賊たちが乗客を脅かしている。そして、その中心で例の不思議な少女が一人、魔法杖を構えて毅然と立っていた。
「これ以上、乗客に手を出すな」少女の声は冷たく、凛としていた。
リバンスは思わず足を止めた。(あの子、一人であんな連中と戦うつもりか!?)
その瞬間、空賊の一人が少女に向かって斬りかかった。少女は素早く「アイスウォール」と唱え、空賊の攻撃を氷の壁で防いだ。
(すごい反応速度だ...!)
リバンスは驚きながらも、このまま見ているわけにはいかないと感じた。彼は深呼吸をし、「複写再現」の能力を発動させる。
(よし、あのアイスウォールをコピーして...)
リバンスは少女の魔法をコピーし、状況を素早く把握した。そして、少女の後ろから忍び寄ろうとしていた空賊に気づいた。
(今だ!)
リバンスは複写再現を使い、空賊の足元に突如アイスウォールをペーストした。予期せぬ氷の出現に空賊は驚愕し、まるでカタパルトで打ち上げられたかのように空中高く弾き飛ばされた。悲鳴を上げながら、空賊は展望デッキの手摺を越え、夜の闇の中へと消えていった。
「乗客を守るぞ!」リバンスは力強く叫んだ。
少女は一瞬驚いた表情を見せたが、すぐにリバンスの声に反応し、小さく頷いた。
混沌とした展望デッキの上で、リバンスと少女の目が合った。言葉を交わさずとも、二人の心には同じ覚悟が芽生えていた。




