第四話 ルーム地底王国
アンジェリーヌとジャミーが事情を説明したところ、助けが来るまでの間、ドワーフたちの国へ案内されることになった。
ドワーフたちの国ーールーム地底王国である。
ルーム地底王国は【七鐵】と呼ばれる職人がそれぞれの地区を領主として治めている国で、国の運営は【七鐵】の合議でなされていた。
また、十年を任期として【七鐵】の中から王が選出され、任期の間は他国との外交を司る。
現在の王はショットという職人で、ちょうどアンジェリーヌたちが落ちた所の地区を治めていた。
アンジェリーヌたちを見つけたのは、その地区のドワーフたちで、鉱山から帰宅途中だったのだ。
「なーんだ、洞窟にすむ悪魔かと思っちゃった」
すっかり、ドワーフと打ち解けたアンジェリーヌである。
「おいおい、こんな男前に悪魔はひでえや」
案内をするドワーフも笑う。
頑固でガサツなイメージのあるドワーフたちだが、実は気さくで、細かいところにも気がつく。
アンジェリーヌたちの無事も、伯爵家には伝えてくれていた。
また、今夜はこの地区を治めるショットの館に泊まることになっており、扱いも悪くない。
「~♪」
思わぬ外泊に、アンジェリーヌはウキウキと気分が高揚する。
アンジェリーヌは歩きながら、空を見上げた。
『ルーム地底王国』と言うが、半地下だ。半地下であるから青空も見えるし、まるで大きな火山の噴火口に国を作ったような所だとアンジェリーヌは感じた。
非常に興味深い国だ。
「着いたぞ、嬢ちゃんたち」
「へー」
到着したのは領主の館……というよりも大きな工場といった建物だが、アンジェリーヌの好奇心を満たしてくれる。
館の主であるショットは作業中で、挨拶は夕食の時にと伝えられている。夕食までの時間は自由にしていいらしい。アンジェリーヌは、探検と称して館の中を歩き回った。
ドワーフの館はアンジェリーヌの知る建物とは趣が異なり、見るもの全てが新鮮で面白い。
ワクワクしながら歩くアンジェリーヌは、ふと館の庭に『離れ』があることに気がつく。
『離れ』はドアに鍵が掛かっていないようだ。
ドワーフは寛容なのか大雑把なのか、アンジェリーヌは鍵の開いている部屋は自由に入って良いと言われている。早速、アンジェリーヌは『離れ』に入ってみる。
離れの中は倉庫であるのか、陶器の器が棚にギッシリと並んでいた。
アンジェリーヌは目を見張る。そんなに器は派手ではないし、綺麗な絵が描かれている訳でもない。
しかし、碧、藍、桃の色……。多彩な表情の器たちだった。
「キレイ……」
アンジェリーヌは感嘆の声を漏らす。
そーっと、近くの器を手に取ろうとし――、
「ありがとよ」
と不意に声がかけられ――、
ガシャン。
手が滑って割れた。
「あーっ!?」
「あん?」