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第一話 家出した
「家出してきた」
夜半、伯爵令嬢アンジェリーヌは家出した。
家出した先は、館の敷地内にある使用人棟で、女家庭教師ジャミーの私室。
「…………また?」
「うん、また」
呆れるジャミーに、ニカッと笑う伯爵令嬢。
ジャミーは、私室の外にいた他の使用人に合図を送るとベッドを整えた。
羽織っていたガウンを脱ぎ、寝間着姿になったアンジェリーヌはベッドに潜り込んだ。
ーージャミーの合図を受けた使用人は、館の者にアンジェリーヌがこちらで休むことを伝えた。それにより、不寝番が護衛として一人寄越される手筈だ。
ジャミーは室内の灯りを暗くすると、アンジェリーヌの横に滑りこむ。
「今日は、またどうしたんです?」
「だって、お父様がまた王都の学院へ行くように言うんだもの」
「またか、またいつものか……」
「だって……」
アンジェリーヌは口を尖らせた。