4話
「ふざけやがってあのくそじじいがぁぁーー!!」
視界が戻ってすぐに大声で叫ぶ。
あのじじいに聞こえるはずがないのはわかっているのだが、どうしても叫ばないとやってられなかった。
有無を言わせず、突然転生させられるこの気持ちがわかるのかよ。俺はこれから一体どうすればいいんだ?
「あまり、神様のことを悪く言うのは感心しませんね」
「へ? 誰だ?」
横から聞こえた声に振り向く。
すると、滅茶苦茶可愛い女の子がそこに立っていた。
輝くような金髪に整った顔立ち、この子を可愛くないと言う人間がこの世に存在するのかと思うほどの美貌だ。
俺も無意識のうちに少し見とれてしまった。
「私のことは神様から伝えられていたと思うのですが?」
こんな可愛い子のことを俺が聞き逃していたというのか? いやいや、ありえないだろ。
いくらくそじじいの話とはいえ、可愛い女の子の話が出ていれば俺は百パーセント覚えているといっても過言ではない。俺の記憶力のすべてはほとんどそこに集中しているからな。
「いや、聞いてないね。君は誰だ?」
「私は貴方を監視するために派遣された者です」
「え? 監視者がどうこういってたあれか?」
「やはり聞いているではありませんか。神様がそのようなミスをするなんてことはありえません」
監視者がつくってのはきいてたけど、こんな可愛い子なんて一言も言ってねぇぞ。これだったら俺も大歓迎だったんだけどな。つまり、これからの俺の異世界ライフはこの子と一緒にってことだろう? 最高じゃねぇか。監視者バンザーーイ!!
「それで? でも君みたいな子じゃ、俺を監視するのは荷が重いんじゃねぇか? 俺はこの世界で魔王と同レベルの強さを持ってるんだろう? どうやって俺を監視するつもりだ? 自分で言うのもなんだが、俺はおとなしく監視されるたまじゃねぇぞ」
「その心配は無用です。私は貴方よりもはるかに強いですから」
それおかしくない? 俺の監視者が俺より強い? いや、これは特段不思議なことでもないか。それよりも、俺よりも強いということは確実に魔王よりも強いということだ。俺は何のためにこの世界に転生させられたんだ? 俺なんて居なくてもこの子がいれば世界は平和になるじゃねぇかよ。俺なんて必要なかったんだ。
「俺ももうお役御免ってか。そうかよ、お前らはそろいもそろって俺にくそみたいな扱いをしてくるんだな。もういいさ、俺は山奥にこもってみすぼらしく生きていくさ」
「すいません、話が飛躍しすぎていてついて行けそうにありません。私の発言のどこかに貴方の気分を害するようなものがあったのでしょうか? それなら、申し訳ありません」
「やめろ!! 俺が余計惨めになるだろうが。可愛いからって調子に乗るんじゃねぇ!!」
俺の神経を逆なでするような発言が最高に腹が立つな。
顔が可愛く無かったら今頃ミンチにしてるところだ。もう顔だけで手を出さないようにするのも限界に近いな。俺も攻撃に移る時が来たのか? しかし、この子は俺よりもはるかに強いんだろう? ここで下手に手をだして、第二の人生の幕を引くことになるのは流石に無能すぎるよな。俺でもドン引きするレベルであほだ。
「俺よりも強いって言うんだったら自分で魔王をたおせばいいじゃねぇか!! 俺なんて必要ないだろ!!」
「いえ、そういうわけには行きません。私が強いのは貴方に対してのみです。貴方以外と戦う場合は少し戦える程度のレベルまで落ちてしまいます。監視者なのですから貴方以外に強い必要なんてありませんよね? これが、私の強さの秘密です」
俺に対する特攻兵器ってところか。理不尽にもほどがあるだろ。どうしても俺はこの子には勝てないってわけか。しかも、この顔だ、一緒に行動していてほかの奴らにこの子がやられるところを黙って見ているのは無理がある。つまり、俺はこの子の護衛というわけか。意味わからん。
「それより、なんで君はそんなロボットみたいな喋り方なんだ?」
ずっと気になっていたが、この子はさっきからずっと無表情で抑揚のない声で喋っている。まるで、ロボットみたいだ。
「すいません。私にとってこれが普通なんです。これ以外の喋り方がわかりません」
「そうなのか、まぁ別にいいさ。とりあえず、俺のことは気にせずこの世界を楽しむといい。俺も一人で魔王討伐に励むと誓おう。それじゃあな」
「ダメです」
後ろを振り返り、その場から離れようとしたが、すかさず服の端を引っ張られた。
「なんだ? びくともしないぞ?」
「貴方を一人で行動させるわけには行きません。神様から下された命令の一つです。これから、ずっと貴方は私の監視下に置かれます。ご了承ください」
「そんなのいやだぁぁぁーー!!」
「我慢してください。これも貴方の性格が招いたことなんですよ。すくなくとも、貴方がこの世界で粗暴な真似をしないと判断できるまでは私が貴方から離れることはありませんからね。これからどうかよろしくお願いします」
俺のどこが信用できないって言うんだよ。力を手にしたからって暴れまわるとでも思ってるのかよ。最悪だ、この子が可愛い以外すべて最悪だ。