そうか俺は死んだのか
異世界転生だって? 突拍子もなさ過ぎて信じるに信じれない……でも待てよ、ついさっき自分で頬をつねってこれが現実であることを確かめたじゃないか。じゃあ信じるしかないな。
「おぬし、まさかわざとやったわけではないじゃろうな? わしとしたことが無様に悲鳴を上げてしまったぞ」
「滅相もございません。俺も驚きのあまり、手に力が入ってしまっただけなんですって。じじいの話も信じるから俺の話も信じれくれよ」
「ちょこちょこじじい呼ばわりせんとおぬしは死ぬのか? もう怒るのもあほらしくなってきたぞ」
「わざとじゃないんですって。俺も無意識でそう呼んじゃってるだけだから責められても困るんだよ」
「なんで喋ってると最後のほうは敬語すら抜けとるんじゃ。もっとわしを敬って敬語を使うんじゃ」
めんどくせぇじじいだ。
俺だって好きで意味不明な喋り方をしてるんじゃねぇんだよ。敬語なんて普段使わんもんを使おうとしているから脳が混乱してるんだ。しかし、これどうするんだよ。異世界転生することになるのか俺?
「ちょっと待ってくれ。転生ってことは俺は殺されるのか? というかじじい何者だ?」
「わしは神じゃ、最初に言ったじゃろうが……言っておらんかったかの?」
「間違いなく聞いてない。いくら俺でもそれくらい聞いてたら覚えてるわ。もっとちゃんと説明しろよ」
異世界転生の次は神と来たか。何でもありみたいになってきてるな。
それなら、この空間に俺が閉じ込められているのも少しは合点がいく。要するに神様パワーってことだな。
「おぬしは以前の世界で死んだのじゃ。そして、都合がいい者を見つけたわしがよびだしたというわけじゃ。わしだってこんな礼儀のかけらもない奴じゃと知っておったら別の者を選んでおったんじゃがな。悔やんでも仕方がないのぉ」
「おい!! 俺が死んだってどういうことだよ!!」
「痛いぞ!! もっとマッサージに集中するんじゃ」
「言ってる場合か!! 俺としちゃもうマッサージのことなんかよりも自分が死んだって話にしか意識が言ってないぞ。そもそも俺に死んだ記憶なんてないぞ。適当な嘘つくんじゃねぇ!!」
「嘘なんてついてどうするんじゃ。ここで、わしが嘘をつくメリットがあると思うかの? おぬしは死んだ、これはまぎれもない事実じゃ。死んだときの記憶がないのは、一時的な記憶障害じゃろう。ここに来るものの大半はおぬしと同じ状況になっておるからの」
嘘だろ。
確かに、じじいが俺に嘘をつく必要なんてない。神という話が本当だとするなら、俺一人どうこうするなんてわけないんだ。それを俺にわざわざ嘘をついて何かしようなんて手間でしかない。
「まぁ、わしが異世界に転生させる者を選定しておったときにちょうどおぬしが死んだというだけのことじゃ。それ以外に理由はない。だから、おぬしは運がよかったと思って第二の人生を受け入れれば良いのじゃよ」
「そうはいってもだな……俺は異世界なんかに転生するんじゃなくて、元の世界で生き返らせてほしいんだよ。どうにかならないもんなのか?」
「無理じゃな。言ったじゃろう、おぬしは死んだのじゃ。それを事実をまげておぬしを生き返らせることはわしがいくら神と言えどできんのじゃ。第一、そんなことがまかり通ってしまえば、世界が崩壊してしまうじゃろう? 死んだ者が生き返る世界、考えるだけでも恐ろしいわい」
死んだじいちゃん、ばあちゃんが若返って生き返るなんて考えれば恐怖でしかない。
死んでも生き返ると分かれば、秩序もあってないようなもんになりそうだ。とんでもねぇ世界が待ってそうだな。
「割とグレーゾーン何じゃが、異世界へ転生させるのはセーフなんじゃよ。おっと、わしとしたことがおぬしを異世界へ送る目的を言っておらんかったの。おぬしには異世界で魔王を倒してほしいんじゃ」
「は? 魔王? なんだそれ?」
「文字通り、魔物の王じゃよ。そいつを倒してもらいたいんじゃ」
「無理だな。俺はいたって普通の高校生だ。そんな得体の知れない者を倒すような力はない。絶対無理だと断言しよう。そう俺にも無理なことはあるんだ」
「わしがチート能力を授けるから大丈夫じゃ。能力といってもほぼ全知全能の神のよな存在になれるというわけじゃないがの。魔王と拮抗した力を授けるという程度じゃ。しかし、それでも破格なんじゃぞ。魔王はその世界では最強の存在、つまりおぬしも世界で最強ということになるんじゃ」
それは凄いが、神にしてくれよ。
「やだね。それじゃ、苦戦するじゃねぇか。俺にそんな泥臭い真似は似合わねぇ。残念だったが、他を当たってくれ」
「いいのかの? おぬしが断るということはここに永遠に閉じ込められることを意味しておるんじゃが」
「やったぜ!! 俺も一度は戦ってみたかったんだよな。魔王なんて俺にかかれば楽勝だ!!」
「調子のいいやつじゃの。まあ、やってくれるんじゃったら何でもいいわい」
「そしたら、まずはこのじじいから仕留めるか」
「何を馬鹿なことを言っておるんじゃ?」
「しまった!! 声に出てたか!?」
心の中で考えていたことが口からも出てしまったようだ。これはやらかしだな。土下座しよう。
「やっぱりおぬしは危険じゃの。もう閉じ込めてほかのものを選ぶか」
「すいませんでしたーー!! 絶対に真面目に働きますからどうかそれだけは勘弁してください!!」
「信用ならんのぉ、そうじゃ。わしの部下をおぬしの監視としてつけるとするかの。それならいいじゃろう」
監視だと……。