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第41話:【佉訶囉嚩阿】

※文章内に環境依存文字を使用しています。上手く表記されてなかったら申し訳ありません!!

 カニは抱卵亜目という亜に分類される。 

 甲羅から伸びた身体の一部が腹の下へと折れ曲がり、字義の如くその部分に卵を抱え込むことで外敵から幼生を守るからである。


 一度に産卵する卵の量はカニの種類や個体により異なるが、少ない種類だと50~100個、多い種類だと数百万個。後者ではないと思うが、人一人を殺すだけであれば前者だけでも十分すぎる数だ。


「「()」。阿修羅(あしゅら)よ。その武術の才能を貸してくれ」


 文字はそのまま「()」。

 呼び出す仏尊は阿修羅。


 三面六臂(さんめんろっぴ)|(三つの顔・六本の腕)の姿をした半裸の神である。


『排除を完遂します』


 抑揚のない冷徹な声でそう告げると、轟音を響かせながら大量のミサイルが射出される。


「何だあれは……?『マジックミサイル』か?」

「こちらの世界に来て日が浅いあなたには分からないでしょうけど、それよりも強力なものよ……」


 ホブゴブリンに対して神妙な面持ちで魔法の専門家は語る。


「私たちのいた世界では『ファイヤー=ミサイル』・『ロック=ミサイル』・『フラッシュ=ミサイル』って、六つの属性ごとにミサイル系魔法が分化されていたけど、こちらの世界では超科学によって造られた、魔力を使わずに生成されたミサイルが主流なのよ。あの塊に一発でも当たったが最後、大爆発を起こして黒焦げになるわ」

「そんな恐ろしいものを隠し持っていたと言うのか……。何なのだあのカニは?」

「これが通称『機械世界』って呼ばれる世界の兵器さ」


 自慢のカイザル髭を触りながら少し不貞腐れたようにドワーフが唸る。


「吾輩たちドワーフでも理解が及ばんような代物を平気で造りやがる。あの世界の住民どもはどうなってやがるんだ?!」


 ホブゴブリンの家でキーキーと観戦者たちが騒いでいる間にも状況は動き、2mは優に超えるであろうサイズのミサイルが一人の老人目掛けて殺到する。


「…………」


 一発でも当たれば圧倒的な質量によって骨が砕かれて爆発四散。塵一つ残らないまま地球上から姿を消すだろう。

 ――一発でも当たれば、だ。


 あるいは、身体を横に向けてミサイルとミサイルの間に身体を滑り込ませることで()なし、

 あるいは、ミサイル同士がぶつかるように誘導することで誘爆させ、

 あるいは、爆風に巻き込まれないように大きく移動する。


 あれだけの数があったミサイルを全て安全に処理することに成功し、一人の老人は燎原(りょうげん)を背に佇む。


『阿修羅』と聞けば、多少予備知識がある人であれば、六道輪廻の道の一つ・阿修羅道を思い浮かべる者がいるかもしれないが、その阿修羅道こそが阿修羅が創造した世界である。

 その神性は悪によって暴走する正義を具現化したもので、仏教の守護神・武神としての側面を持つ。


 稲葉山(いなばやま)は阿修羅としての力を宿したことで圧倒的な戦闘センスと身体能力を手に入れたため、数多もの弾幕を避けることが可能となったのだ。


『ピピー……、ガー…………』


 右手による圧殺攻撃。

 左手のマシンガンによる攻撃。

 そして、下腹部から射出したミサイル攻撃。


 これだけの規模と火力の攻撃を耐え切った者が今まで居なかったのだろう。次の攻撃として何をするべきか逡巡し、完全に動きが止まってしまっている。


「……打つ手なしかのう?では、こちらの番じゃ」


 浮かべる梵字は「()」のままに、背後に召喚する仏尊の姿が変わる。


 身体の色は青だが髪は燃えるように逆立ち、三つの顔と四本の腕を持つ三面四臂(さんめんよんひ)の姿をしていた。

 四本の腕は一本が(まさかり)・一本が先端が三本に枝分かれした(げき)を握り、一本が胸の前で人差し指を突き立て、もう一本の腕が人差し指を天高く突き上げていることから、釈迦が悟りを開いた時に釈迦に追従していた眷属である四侍尊の一尊・無能勝(むのうしょう)明王(みょうおう)であることが分かる。


 無能勝明王の名前の由来は「勝つに(あた)わ無い」。どんな悪しきモノでも勝つことができない必勝を掲げた仏尊であり、仏教徒における障壁である五陰魔(ごいんま)煩悩魔(ぼんのうま)死魔(しま)天子魔(てんしま)の|四つの魔を撃ち滅ぼす力を持つ。


「終いじゃ」


 無能勝明王のように一本目の左手に鉞・二本目の左腕に三叉戟……というのは腕が二本しかない稲葉山には無理なので、代わりに右手に鉞・左手に戟を握ると、黄色いオーラを纏いながらゆっくりと詰め寄る。


 そして、


「解体完了じゃ」


 カロロンカロン――。

 物寂しい音を立てながら、解体されたカニ型ロボットのパーツが草原の上を転がる。


「て、手の動きが全く見えなかったぞ……?あの斧と三叉槍(トライデント)だけで、こんなに的確に破壊できるものなのか…………?」

「例え「自由にやっていい」って言われたところで、吾輩にだって無理だろうな!これがコウゾウの力さ!!」

「ほっほっほ。セレイフよ。『バーズアイ』の魔法を使って観ていたのじゃろう?」


 心臓が止まるかと思った。

 ばっちりカメラ目線で見上げてくる老人にびくびくしてしまうエルフの少女。


「これがワシのスキル【(キャ)訶囉嚩阿(カラバア)】じゃ。エルシーたちにはまだ直接見せていなかったし、少しワシのスキルについて話そうかのう」



☆★☆★☆



「お主らは五輪塔が何か知っておるかの?」

「ゴリントウ?」

「……済まぬ爺さん。何のことやらさっぱり分からなぬ」

「まあこの世界に来て日が浅いお主らに聞くのも酷か。じゃが、お主らは少なくとも一回は見ているはずなんじゃがのう」


 スマートフォンの検索エンジンを呼び出すと一つの画像を表示する。


「これが五輪塔じゃ。ワシの住んでいる家の庭の周りに何本かあったじゃろ?」

「この石塔のことか。不思議な形をしたものだとは思っていたが、これが何なのだ?」


 頂点には肉まんのような形をした小さな石。

 その一段下には同じくらいの大きさをした臼のような形をした石。

 その一段下には「八」の字に広がった台形のような形をした石。

 その一段下には大きめの球体の形をした石。

 一番下の段には、これら四つの石を支えるようにどっしりと構えた、四角形の厚みのある石。


 子供が石遊びででたらめに積んだ石を芸術性の高いモニュメントにしたかのような石塔を見ながら、稲葉山は一個一個丁寧に説明を加えていく。


「縦に五つに積まれたこれらの石には一つ一つ意味があっての、上の石から空輪(くうりん)風輪(ふうりん)火輪(かりん)水輪(すいりん)地輪(ちりん)という名前が付いておる。お主らの感覚に当て嵌めるのであれば、それぞれが司る属性が、空属性・風属性・火属性・水属性・土属性じゃな」

「空属性……?そんな属性・聞いたことがないわよ?」

「お主ら『中世世界』では、火・水・土・風・光・闇の六つの属性を魔法で扱っているじゃろ?ワシのスキルでベースとなっているのは古代インドの五大思想といって、火・水・土・風はそのままに、光属性と闇属性を一緒芥(いっしょくた)にして空属性としたものじゃよ。……まあ、厳密に言えばもっと違うのじゃが、これ以上は話がややこしくなるから省略じゃ」


 世界の文化の仕方によって思想が違うのは当たり前で、『中世世界』で一般的とされているのが火・水・土・風・光・闇の六つの元素を世界の構成要素とするもの、古代インドが通称地水火風空(ちすいかふうくう)と呼ばれる五大思想となっている。

 もっと細かく述べるのであれば、『中世世界』の光属性が物事の捜索・神罰・占星術などの天界に関する事象や何かを導く道標(みちしるべ)、闇属性が幻惑・死・毒などの人間の精神や死に関連した事象を司り、五大思想における空が『何もない』を意味する『空虚』を意味する。


「それで、その五大思想とやらと石塔には何の関係があるのだ?」

「ほれ、この五輪塔。それぞれの石に文字が書いてあるじゃろう?」

「爺さんがスキルを使った時に浮かんでいた文字と全く同じものだな」

「これが『キャカラバア』じゃ」


 頭の上に「?」を浮かべるホブゴブリンたちへと噛み砕いて説明を加えていく。


「それぞれの輪に刻まれた梵字には読み方があって、上から「(キャ)」・「()」・「()」・「()」・「()」。五輪塔に刻まれているこの五つの梵字のことを『(キャ)佉訶囉嚩阿(カラバア)』というのじゃよ。そして、この一字一字は司る属性と神仏を表しているのじゃ」

「もーっ!難しい話は苦手よコウゾウ!!」


 白い妖精の頭から蒸気が上がる。


「つまりどういうことなのよっ!!」

「……ワタシたち『中世世界』のルーンの「FUThARK(フサイク)」で例えるなら、「財産・富・家畜」の意味を持つ「F」のルーンからは自由に財貨や家畜動物を出すことができ、「巨人・茨」の意味を持つ「Th」のルーンからは巨人と茨を召喚して自由に操ることができ、「松明・船」の意味を持つ「K」のルーンからは松明を生成し、船を作り出すことができるということか?」

「そんなところじゃ」

「凄いスキルじゃない?!そんなに強いスキルを持っているなら、コユキたちと一緒にダンジョン攻略をすればいいのに、どうしてこんな所であたしたちの世話なんてしているのよ?!」

「ワシも老い先短い爺じゃからのう。あっちこっちを歩き回る体力なんて、ワシにはもうないわい。それに、」


 激戦の末に発生した煙が立ち昇る方角を見ながら瞳を揺らす。


「ワシはあの娘たちの「罪を憎んで人を憎まず」な姿勢を気に入っておってな。あの娘たちがこの世界の未来を変えてくれるんだったら、喜んで護衛役に回ろう、そう思っただけじゃよ」


 その瞳は、誓いを立てたその日を追い駆けるかのような、澄んだ色をしていた。

 先日、街中で兄と楽しくポケモンGOをやっていたら、自転車に乗っていた通りすがりの見知らぬお兄さんが「ポケモンGO?!」と叫んで去っていきました。


 文脈からすれば、「えっ?!男二人が休日の昼間にポケモンGOやってるの?!」とか、「7年前に大流行してブームがとっくに終わっているのに、まだやってるの?!」みたいなニュアンスだと思うのですが、「ポケモンを全く知らない」という人々がポケモンブランドに触れるきっかけを作ったのは間違いなくポケモンGOです。この功績はとても大きいですよ!


 ポケモンGOが出るまでは、「ダサい」・「幼稚」・「子供が遊ぶもの」といった偏見が蔓延していたし、何なら藤井が小学生・中学生の頃は、「ポケモンは幼稚な男子が触れるコンテンツ」という共通認識があり、昼休憩のお昼の放送で「ポケモンが好きだから」と言ってポケモンの曲を流した女の子が「キモい」と煙たがられて女子のグループから村八分にされ、男子からも敬遠されていました。


 それが今や、大人たちが目の色変えて子供たちを押し退け、我先にとポケモンカードを奪い合う時代となりました。中学時代、「ポケモンとかダサっ!モンハン・ジャンプ・遊戯王!!」とか言ってた奴らは元気にしているでしょうか?これで転売ヤーに成り下がっていたら笑い者ですよね!


 ちなみに藤井、ポケモンGOはサービス開始日から始めましたし、コロナやインフルエンザでくたばった日を除けば7年間毎日プレイしています。

 何ならポケモンシリーズは「サファイヤ」から全世代触れてますし、ソシャゲで言えば「ぷよぷよクエスト」・「ガールフレンド(仮)」・「城姫クエスト」も7年近くプレイしています。同じゲームを長く楽しめるのって、凄く素敵なことじゃありませんか?自転車で通りかかったお兄さんは、きっとそういう経験がないんだろうなあ……。



 ではまた!これからもよろしくお願いします!!

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