第39話:新居の祝賀会・招かれざる客
これは、小雪たちが福井-016番ダンジョンを攻略している最中に愛知-006番ダンジョンで起きた、些末な出来事である。
「おいエルフ。今すぐその汚い手を退けろ」
「あら?鉱山に入っては鉱石ばかりを採掘しているあなたの手の方が余程汚いのでは?」
ごつごつとした質感の手と柔らかくて艶のある手が、皿の上に一つだけ残った羊羹の上で鬩ぎ合う。
「そんなことを言ったら、リスやヘビが這い回った木を触って生活している貴様らの手の方が余程汚いだろうが?」
「頭上からコウモリのフンを浴びながら生活しているドワーフが綺麗ですって?」
取っ組み合いの喧嘩こそは起きていないが、今すぐにでも勃発しそうな雰囲気だった。
ごつごつとした手の持ち主はドワーフの男・トルガ。ごわごわとした灰色の髪と、それと同色の立派な髭を生やしている。
柔らかそうな質感の手の持ち主はエルフの女・セレイフ。白っぽい肌の色に長く美しい金色の髪を持つ。
「貴様のような脆弱、吾輩が斧で叩き潰してやろうか?」
「なら私は、その立派なカイザル髭を魔法で燃やしてやろうかしら?」
「二人はいつもこんな感じなのか……?」
愛知-006番ダンジョンのメンバーの協力の元、ホブゴブリンと30体のゴブリンたちが住む住居が完成。その完成記念&お疲れパーティを開催したのだが、その結果がこれであった。
「あなたも『中世世界』の住民なら、エルフとドワーフが仲が悪いのは知っているでしょ?きっと、トルガとセレイフじゃなくても、ドワーフとエルフが相対すれば、大体こうなると思うよ」
顔の隣で白い蝶のようにエレシーがひらひらと舞う。
「一触即発の雰囲気だが、ワタシが止めた方がいいのだろうか?」
「日常茶飯事よ。こんなの放っておけばそのうちどうにかなるわ」
「ほっほっほ。広い家だから台所まで行くのも時間が掛かるのう」
緑茶が入った湯呑を載せた盆を持って稲葉山が姿を現す。
「すまないな。ワタシも含めて31人が同時に住むとなると、これくらい広くないと不自由するのだ」
「天井は3mもあるし、これだけ広いと小ぢんまりとした日本家屋に住んでいるワシのような者は、少し落ち着かぬのう」
「なかなか大変だったぞ!いろんな大工仕事をやってきたものだが、天井が10フィート|(約3m)の家を造れって言われたのは初めてじゃわい!」
羊羹を睨みながら器用に受け答える。
「吾輩の身長は4フィート|(約1.2m)しかないのだからな!我ながらよくできたものだ!!」
「おかげで住みやすい家ができた。感謝してもし足りぬくらいだ」
「ならば、あの意地汚いエルフに言ってやれ!」
言ってやれも何も、その距離は振り返ればキスしてしまいそうなほどの近距離だ。羊羹に視線を向けたまま続ける。
「この家を建てるって時に陣頭指揮を執ったのは吾輩なのだから、この最後の羊羹は吾輩が食べるに相応しいとな!」
「ならホブゴブリンさん?あの分からず屋のドワーフに言って頂戴」
こちらも羊羹を睨んだまま続ける。
「家を建てる時に丈夫で長持ちする樹を選んだのは私なのよ?質のいい木材があったからこそ、この家は完成したんだ、ってね」
縄張り争いや種族同士の殺し合いが起きるよりは数億倍も平和だが、羊羹一つで啀み合うドワーフとエルフというのも何か違う気がする。
「ほっほっほ。お主らなら喧嘩するだろうと思って、こんなものを用意したわい」
ことり。
木製のテーブルの上に小さな皿が置かれる。
「大きな栗が練り込まれた栗羊羹じゃ。ワシが食べていたものが残っていての。少し古いものだから、もうそろそろ誰かに食べてもらいたいのじゃが?」
窓から射し込む陽光を受けて、栗羊羹の表面を餡子色の光の筋が走る。
「……ごほん。そういえば腹が膨れたのを思い出した。エルフよ。この羊羹はお前が食うがいい」
「調和と平和を求めるエルフが何たる失敗を。我が忸怩たる思いを少しでも払拭するために、詫びと言っては何かもしれないが、この羊羹を食べてはもらえないかしら?」
普通の羊羹と栗羊羹。
この二つを天秤に載せて、中世ヨーロッパ並みの生活基準を持つ『中世世界』から来てた日本の食文化に興味深々な二者がどちらを選ぶかと言われれば、言わずもがな後者だ。今度は犬猿の仲の二者が残された黒い羊羹を譲り合う状況が発生する。
「何だか面白い奴らだな……」
「「喧嘩するほど仲が好い」という言葉を体現したかのような二人じゃのう」
「「ちっとも仲良くない」わい」
示し合わせたかのように息ぴったりに反論した瞬間、家の外で爆発音が響いた。家が揺れていないところからすると、それほどの衝撃というわけでもなく、爆心地も遠いようだ。
「……何の音だ?砲撃や爆発の類に聞こえたが?」
「ダンジョンからモンスターたちが溢れ出て数年、未だに退治されていないモンスターや、ダンジョンの発見が遅れたことでモンスターたちの侵入を水際で防げなかったダンジョンがいくつかあっての。そういうモンスター共がここに侵入してくることがあるんじゃよ」
よっこらしょと徐に立ち上がると、何の変哲もない老人は土煙を目で追う。
「何か大きめのモンスターが侵入してきたようじゃな」
「……それは本当か?」
例え平和となった今でも有事に備えられるように持ち歩いている。壁に立ててあるウォー=ハンマーのグリップを握る。
「ならばワタシが力を貸そうではないか。このダンジョンを荒らすなどど許すわけにはいかぬし、何より折角仲間たちと協力して建てた家を壊されては適わんからな」
外へと出てのろのろと煙が上がっている場所まで向かおうとする稲葉山の背中を追おうとするが、
「心配は要らぬ」
足を止めると丸めた背中で答える。
「ワシ一人で十分じゃ。お主はここで待っておれ」
「しかし爺さん。老齢の貴殿が身体に鞭打って戦場へと出るというのに、ワタシに指を咥えて見ていろというのはおかしな話だろう。ここはワタシたちの住処なのだから、ワタシも身を挺して守るというのが道理であろうが」
「そうよコウゾウ!あたしたちじゃできることは限られているかもしれないけど、何かやらせてよ!!あたしたちだって力になりたいんだから!!」
顔の隣で浮かんでいたエルシーも賛同する。
「魔法だって少しは使えるのよ?……一度使うと凄く疲れちゃうけど」
「【鉄心石腸】には歯が立たなかったが、腕っぷしは確かだ!いざとなったら力任せにでも引っくり返してくれるわ!!」
「気持ちはありがたいがのう、お主らにはここで待っていて欲しいんじゃよ」
「だが――」
「死ぬぞ?」
普段ののんびりとした様子とはまるで違う、低く最後通達を告げるような声で背後へと振り返った後、一瞬にして朗らかな表情に戻る。
「ワシについて行ったが最後、お主らはワシのスキルに巻き込まれて死んでしまうかもしれぬ。さすがにお主らの命の保障まではできぬから、ここで待っていてはくれないじゃろうか?」
「おう…………」
生活拠点を求めて何度か人間と対峙したこともあったが、ここまでの覇気と殺気の籠った瞳は初めてだ。
一瞬だけ向けられた、見つめた全てを射殺さんとするような老人の鋭い眼光を思い出しながら、ホブゴブリンはその場で身震いする。
「な、何なのだあの迫力は……?」
「あんなコウゾウ初めて見た……。何なの?あれ…………?」
「そういえば、あなたたちはコウゾウが戦っているところを観るのは初めてだったかしら?」
何やら紙に魔方陣を描きながらセレイフは呟く。
「戦いには付いて来るな、と言われているけど魔法で俯瞰するのであれば問題ないわ。あなたたちにコウゾウの戦いっぷりを見せてあげましょう」
黒いペンで描かれた魔方陣にそっと触れると、溝に水を流し込んだかのようにセレイフの指先があった部分から魔方陣が水色に染まり、淡い光を放つ。魔力が注ぎ込まれたことで魔方陣が起動した合図だ。
「あなたたちが心配せずとも大丈夫よ。それだけコウゾウは強いのだから」
どうやら、指定した場所の様子を上空から探ることができる魔法らしい。魔方陣の中央から四角いモニターが浮かび上がると、一人の老人を映し出す。
12月1日にドラクエモンスターズ3の最新作が発売されますね!!
実は藤井、ドラクエモンスターズシリーズは2から始めて、2Pro・テリワン3DS・イルルカ3DS・3と5作品ほどプレイしている大ファンなんですよね。
それで、一度だけですがテリワン3DSのオンライン対戦で、瞬間レート世界1,000位台を取ったことがあります。
「テリワン環境ってGサイズが流行っているはずだから、全体攻撃の斬撃と全体攻撃の呪文を躱すために、つねにアタカンタとつねにマホカンタ持ちを一体ずつパーティに入れて、火力でゴリ押せば勝てるのでは?」という、当時中学生だか高校生だかだった藤井の脳筋思考のもと、
・JOKER……デフォルトで「つねにアタカンタ」持ち。バランスのいいステータスと耐性を持ち、体術を中心に戦うことが可能。「体術封じ」系のジャミングを掛けられた時の対策として「ハッスルダンス」による兼業ヒーラー・「凍てつく波動」によるサブディーラーを担当。
・ナイトリッチ……デフォルトで「ギガキラー」持ち。シリーズ屈指の高い攻撃力による斬撃と、「超行動早い」により先手を取って「ギガボディ」持ちを駆る。
・バトルアックス……デフォルトで「会心出やすい」持ち。高い攻撃力を「ギガキラー」と「超行動早い」で活かし、超高速で「ギガボディ」持ちを駆る。ちなみに、同系統のドラゴンソルジャーだとデフォルトは「魔神攻撃」。
・スラ忍ピンク……配合により「つねにアタカンタ」を「つねにマホカンタ」に変更。しっかり振れば高い耐久とヒーラー最速の素早さを活かし、比較的早い行動順でパーティを回復・蘇生することができる。
……と、いった感じのパーティを使っていました。
「超行動早い」はマインド耐性が二段階下がるので、「おたけび」や「ギロギロ」などのマインドを掛けられるとアタッカーが機能停止する点と、「冥界の霧」を塗り替える手段がほぼなかったのが欠点でした。
藤井の目論見が上手く刺さったのか運が良かっただけかは分かりませんが、その時開催されたレート戦では1100位くらいの順位でした。同じパーティを何度か使ってみましたが、それ以降では二度と1000位台に入ることができませんでしたが!
ちなみに、その時のシーズンで世界一位・二位だったパーティは、スラ・ブラスターに白い霧を搭載した持久パーティ。三位はバッファーのスラ忍シルバーで火力と耐久を上げ、「いきなりバイキルト」を積んだスラ忍ゴールドでゴリ押すパーティでした。これはさすがに勝てません……。
ではまた!これからもよろしくお願いします!!




