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「で、王妃になっていたカロンさんですが、彼女はアンナの話を信じず、国の宝石は全て自分のものだと言って渡してくれませんでした」

「うわ、カロンらしいわ」

漫画版でのカロンの行動を聞き、ジークルートをクリアした時のカロン像と重ね合わせてみたルリアーナは顔を顰める。

この世界のカロンも酷かったが、本家はもっと酷く、漫画版はさらに酷い。

まさかあのカロンをマシだと思う日が来ようとは。

頭を抱えるルリアーナは「それで?」と聞くに堪えないカロンの悪行の続きを促した。

「えっと、諦めて城から帰ろうとした時に謎の仮面紳士が現れて、『これでいいかい?』って言ってディアのオーブを渡してくれるんです」

「え?」

「謎の仮面紳士…?」

けれど漫画では無事にオーブをゲットできたらしい。

ではなく、今ディア王家にとんでもない問題が起きていた。

「ちょっと、それ誰なの?何うちの宝物庫から勝手に国宝持ち出してくれてるの!!?」

それはディア王宮宝物庫の警備ザル過ぎ問題。

この世界と漫画に繋がりがあると言うことは、それ即ちその問題もまた存在しているということ。

これは一刻も早く帰国して警備を見直すべきでは、とルリアーナは頭を抱えた。

しかし衝撃の事実を突きつけたアナスタシアは「あ、大丈夫だと思います」と暢気なことを言う。

正体不明の輩に国宝が持ち出される警備体制の何が大丈夫なのかとルリアーナが顔を上げれば、

「『仮面の紳士はディア王家の関係者です』って巻末の後書きに書いてましたから!」

とのことだった。

確かにそれなら安心…していいのかはわからないが、部外者に持ち出されたというよりはよっぽどいい。

「正体はわかりませんが、イケメンなことは確かですよ。カラーにいなかったので色彩はわかりませんが、髪はベタ、トーンなしの白抜きで、瞳には薄いトーンが貼ってありました。髪は背中の真ん中くらいまでの長さを首元で結んでいて、作者曰く『愛する人を失った彼はいつか彼女と再会できる日を夢見て願掛けとして髪を伸ばしている』という設定らしいです」

アナスタシアは追加情報としてさらにモノクロでの見た目や作者の言葉などを教えてくれたのだが、

「……それって」

「もしかして…?」

ルリアーナとアデルにはその追加情報だけで彼の正体に目星がついてしまい、宝物庫の警備に問題など全くなかったことがわかった。

ルリアーナは椅子に深く座り直しほっと胸を撫で下ろす。

なんだ、正体はヴァルト様じゃないか。

ヴァルトと実際に会ったことがあるリーネとフージャも同じ結論に至ったのだろう、「あー…」「なるほど」と苦笑を零した。

「え?皆さんは仮面紳士が誰かわかるんですか!?」

逆にアナスタシアはオーブに続いて驚く。

先ほどからこちらの情報を開示する度に予想外の反応が返ってくるので驚きっぱなしだ。

「えっとね、多分それがヴァルト様よ」

「ゲームでは語られていませんでしたが、この世界のヴァルト様から幼少の頃よりルリアーナ様一筋だったと聞きましたから、恐らく間違いないかと」

「なんと!?」

そして明かされた正体にまたも驚く羽目になる。

この世界に転生したと気づいて約5年。

ここまで連続で驚いたのは初めてだ。

「……えーと、その暫定ヴァルト様の仮面紳士さんにオーブをもらったことで魔王に挑めるようになったアンナですが」

アナスタシアは驚きすぎて息切れを起こしそうになる身体を叱咤しながら説明を再開する。

「ファイカの滝の裏に隠されている通路から魔王城に侵入します。そして途中で見つかり捕らえられますが、シャーリーさんから助力を乞われたルカリオ君が助けに来てくれたお陰で脱出して、彼と協力しながら行く手を阻む魔物を倒して魔王の元へ辿り着きました」

ヴァルトのファインプレーの後に語られたのは何故か急に出てきたルカリオがヴァルト以上に大活躍する話だった。

「突然のルカリオ。そしてまさかの大活躍」

「いえー?」

呆気に取られたようなフージャの一言にルカリオがよくわかっていない顔をしながらも両手でピースを作っている。

しかし「俺何やらされてんの?」と言っているあたり、喜んでいるわけではなさそうだ。

「ただのファンディスク限定攻略キャラがえらい大躍進ね」

ルリアーナもあまりの特別扱いに若干呆れながらそう言えば、

「作者さんがルカリオ贔屓らしいです」

そんな一言でわかってしまうほど明瞭な理由がそこにはあった。

「そういえば巻末の作者インタビューの中で「この世で一番尊敬する人は?」って質問に「流離うメイコ様」って、ルカリオ攻略で伝説になっているらしい人の名前挙げてましたよ?」

そして「余談ですが」と披露したその情報に「……やだ、照れるわ」と言ったルリアーナに、その意味するところを正確に読み取って、今日一番の驚きとした。

「あ、あーっと、そ、そんなこんなで魔王の元に辿り着いたアンナなんですが、魔王に一目惚れして、彼を説得して共に現代日本へ帰還したところで物語が終わり、ハッピーエンドを迎えます」

もう説明が終わったから驚くのも終わりだろうと肩の力を抜いたアナスタシアは幾分駆け足で物語のラストの説明を終える。

深く語ることもない聞いたままの結末だ、ということではあるのだろうが、

「ギャグか!!」

「最後雑ですね!?」

「魔王現代に来ちゃうんだ!?」

「え?俺は?置いてけぼり?」

そのあまりなオチにルリアーナ、アデル、ルナ、ルカリオがそれぞれツッコんだ。

読了ありがとうございました。

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