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君となの登場人物に転生してきた人一覧

・君とな無印

 ヒロイン:シャーリー…転生者、今はルカリオを追ってクローヴィア?(棚橋紗理奈/ストーカー事件被害者/警察に助けられた人)

 悪役令嬢:イザベル/中村鈴華…転生者(ストーカー事件被害者)、ハーティア/第一の被害者

・君とな2

 ヒロイン:カロン…転生者?処刑済み

 悪役令嬢:ルリアーナ/野田芽衣子…転生者(ストーカー事件被害者)、ディア/熱中症の人

・君とな3

 ヒロイン:リーネ/中村美涼…転生者(ストーカー事件関係者)、スペーディア/犯人を追っていた人

 悪役令嬢:アナスタシア…転生者?スペーディア

・君とな4

 ヒロイン:ルナ…転生者、多分クローヴィア

 悪役令嬢:アデル/石橋秋奈…転生者(ストーカー事件被害者)、クローヴィア/最後の対象


それはリーネとアデルの話を聞いてルリアーナが書き起こしたあの紙だった。

「えっと、これは…?」

それに書かれている内容に目を通しながらシャーリーは持ち主であるアデルに問う。

意味がわからない部分が多いが、自分の名前の横にある『ストーカー事件被害者』の文字は無視できない。

「実は私たちは全員、貴女が会ったという男性に関わりがあるんです」

アデルは紙をシャーリーの前に置き、指を差しながら説明を始める。

「その男性は私たちが通っていた高校の女子生徒に馬鹿にされたという過去があり、その復讐のためにこの高校に通う女の子を複数人ストーキングしていました。イザベル様とルリアーナ様の妹と私、そして貴女も彼にストーキングされた。そしてイザベル様はその果てにこの男性に殺害されました」

「っ!!」

「ルリアーナ様は記憶にありませんでしたが、亡くなった状況から妹をストーキング中の彼が家を覗いている姿を見て通報している途中で彼に見つかり、逃げている最中に亡くなった方だと思われます。リーネさんはイザベル様の敵を討とうと男性を追っていました。…その時ストーキングされていた私はそのお陰で彼から逃れられましたが、その後死にました」

「そんな…」

「リーネさんは彼を見つけましたが、追い詰められた彼はリーネさんと間違えて別の女性を殺したそうです。そしてその女性は最後の力を振り絞って彼を殺した。復讐の対象がいなくなったリーネさんは生きる意味を見失い、イザベル様の墓前で命を絶ちました」

そこまで語り終えたアデルは一度息を吐き、再度シャーリーを見る。

「恐らくこの世界に転生した君となシリーズのヒロインと悪役令嬢は皆彼に関わっているはずです。ストーカー被害者は他にもう2人。引っ越しをして彼から逃れた人。そして彼に殺された人です」

「あ、だからさっき引っ越しって…」

「そうです。カロンさんはこちらの世界でも既に亡くなっているので確かめられませんが、この後残りのルナとアナスタシア様にも話を聞けば、さらにはっきりするでしょう。リーネさんの記憶のお陰でこの事件と私たちの転生が関係しているかもしれないと気づけたので、どうせなら全容を知ろうというのが今の私たちの目的です」

アデルはシャーリーに教える形で初めてはっきりと自分たちの目的を口にした。

それまでは勢いと懐かしさから前世関係者を集めていたところもあるが、今となっては明確な目標があっての行為となっている。

きっと他の3人も考えは一緒だろうと確認したことはなかったが、この場にいる2人が自分に同意するように頷いたのでアデルはそっと微笑んだ。

今は離れているが、イザベルもここにいればきっと同意をしてくれたことだろう。

一方、シャーリーはアデルの口から語られる事件については何も知らなかった。

前世の自分が知らないうちにそんな事件に巻き込まれていただなんて、とても信じられなかった。

しかも犯人は先ほど思い出したあの男だという。

あの三日月形に笑う男が。

「すみません、私何も知らなくて」

ただでさえ不気味に思えていた男が人を殺していたと聞かされて余計に恐ろしく思える。

あの男が言っていた言葉を思い出したせいか妙な寒さを覚え、シャーリーは自分の腕をさすった。

「無理もないですよ。私は最後の被害者として警察の話やニュースでこの事件を最後まで見ましたから詳しく知っていましたが、貴女が亡くなった時はまだストーカー事件の1つとしてしか認知されていなかったはずです」

「そうね。時系列的に私はイザベルちゃんが殺されたってニュースは見たのかもしれないけど、多分近所で起きた物騒な殺人事件くらいにしか認識していなかったし、それが同級生の妹だなんて思いもしなかったわ」

「私だって妹が被害者だったから関わっただけよ」

そんなシャーリーを励ますようにアデルもルリアーナもリーネも敢えて軽く、何でもないことのように笑ってみせる。

実際彼女が気に病むようなことは何もないし、例えあったとしても気に病む必要はないと。

その3人の優しさに、シャーリーの目には薄く涙の膜が張ったが、涙は零さなかった。

代わりに3人と同じように笑顔を浮かべた。

「…それにしても、あの男はなんで皆を狙ったのかしら」

「え?」

ふとルリアーナが呟く。

その言葉にアデルとリーネが首を傾げた。

「うちの学校の子に馬鹿にされた。だから同じ学校の子を狙った。それはまあ、なんとなくわかるわ。馬鹿馬鹿しいとは思うけれど。でも、なんでうちの妹やイザベルちゃん、シャーリーちゃんにアデルちゃんを狙ったのかしら、って思ったの」

ルリアーナがそう言えば、2人は「確かに」と頷く。

「…そういえば、なんででしょう?」

「考えてもみなかったわ…」

報道を見ていたアデルも犯人を追っていたリーネもそのあたりは知らないらしく、互いに顔を見合わせる。

「あの」

しかしシャーリーは違った。

僅かではあるが、その疑問の答えを知っている。

「あの私、あの男に会った時に言われました」

ルリアーナたちはシャーリーの言葉に驚き、彼女の方を向く。

「…なんて?」

なんとなく感じただけの疑問だったが、それは事件の核心に迫るものであった。

だからこそその答えは見つからないだろうと思っていたのに、こんなにすぐに見つかるなんて。

3人は期待を込めた目でシャーリーを見る。

「……あの時、彼は口を三日月形に歪めて、多分笑いながら私に言いました。『紗理奈ちゃん、君はあの女とは違うよね?ちゃんと僕の…』」

ルリアーナに促されたシャーリーはそう言うとごくんと生唾を飲み込み、

「『僕の愛を、受け入れてくれるよね?』って」

指先が白くなるほどの力で両手を組みながら、その男からの言葉を紡いだ。


『お前、お前だ!!』

『お前があの時、俺の邪魔をしたんだ!!』

『俺は彼女を愛していたのに!』

『彼女だって俺を受け入れてくれたはずなのに!!』

『許さない!』

『俺はお前を、絶対に許さないぞ!』

『絶対に、逃がさないからな!!』

遠い日に聞いた、誰かの絶叫がルリアーナの頭の中で木霊した。

読了ありがとうございました。

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