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『いいね』機能の実装から何日か経ちましたが、この小説にも何人かの方が『いいね』をしてくださっており、大変喜ばしく、にやにやしながら数字を拝見しております。
エッセイでは「ポイントに反映されないから意味はない」「評価があるのに『いいね』する意味がわからない」などの意見が上がっているのも見ましたが、私は単純にモチベーションが上がるし嬉しいです。
『いいね』をしてくださった方、ありがとうございました。
また、評価をしてくださっている方、ブックマークをしてくださっている方にももちろん日々感謝をしております。
その旨記載するタイミングがわからずズルズルと先延ばしにしておりましたが、今回が丁度いいタイミングかなと思い書かせていただきました。
拙作をご覧くださっている全ての皆様に、この場を借りて感謝申し上げます。
「取り乱してしまってすみません」
「お見苦しい姿をお見せしてしまいました…」
4人が2杯目の紅茶を半分まで飲んだ頃、やっと涙が落ち着いた2人は気恥ずかしそうに円卓に戻ってくる。
目元は赤く腫れ上がり鼻もぐずついているが、それでも憑き物が落ちたような、さっぱりとした晴れやかな顔だった。
「イザベルちゃんの記憶が戻って、鈴華ちゃんだってわかってよかったわ」
「ようやく姉妹が再会できたんです。こちらのことは気にしなくていいですよ」
ルリアーナとアデルは2人に向かってにっこり笑い、「どうぞ」と温かいお茶と甘いお菓子を差し出す。
「……変わり身早いなぁ」
「女なんてそんなもんだろ?」
それを見ていたフージャとルカリオがぼそぼそと何事か呟き合っていたが、幸いなことに女性4人には聞こえなかった。
「さて、落ち着いたところでリーネちゃんに1つ聞きたいのだけど」
リーネが席についてお茶を一口飲んで落ち着くのを確認したところで、前触れもなくルリアーナはそう切り出した。
「…はい?」
それにリーネ本人も周りの人間も不思議そうな顔をするが、ルリアーナは気にせずリーネに問い掛ける。
「貴女さっき美涼って呼ばれていたけれど、もしかして中村美涼だったりするのかしら?そう思えばなんだか雰囲気が似ているかもしれないって思ったのよ」
どうかしら?というその問いに姉妹は揃って目を丸くした。
「え?なんで?」
「どうしてルリアーナ様がお姉ちゃんのこと…?」
それは問いの内容が正しいことを意味した反応であったため、ルリアーナはぽんと手を打ち合わせると、
「やっぱり!ほら、高校の時3年間同じクラスだった野田芽衣子って覚えてない?」
あれ私なんだけど、と言って嬉しそうに笑った。
「えー!?貴女、めいちゃんなの!?」
その言葉に、せっかく落ち着いて席についたリーネは立ち上がってルリアーナを指差す。
「そーよー」
それは王族に対して平民がするにはあまりにも無礼な仕草だったが、ルリアーナは気にも留めずに両頬に両手の人差し指を当てにぱっと笑い、「まあまあ座んなさいよ」と再び席につくようリーネに促した。
「はー、…マジで?」
「マジマジ。超マジ」
「マジかー」
そして椅子に沈みながら「そんな偶然信じられない…」と驚くリーネに本当だと言って「こんなことあるんだねー」とさらに笑みを深めた。
「私は就職して忙しかったから高校時代の友達とは全然会ってなくて、あんたが大学行ってからのことはなにも知らなかったんだけど、そんなことになってたとはね」
「私もびっくりよ。両親や鈴華のことでそれどころじゃなかったのもあったけど、同級生のことなんか何も知らなかったから」
「まあね。私21歳で死んだし」
「え?なんで?」
「多分熱中症?あんまり覚えてないんだけど、炎天下で走ってて、そのまま倒れたのよ」
「えー?なんでそんな中走ったのよ」
「知らないわよ。君となの限定品でも買いに行ってたんじゃない?」
「ホントにそうなら間抜けすぎる」
「でもそれ以外思い浮かばない私の人生マジ草ー」
2人はけらけらと笑いながら、まるで女子高生に戻ったようにポンポンとリズムよく会話を重ねる。
そしてあまりの会話の展開速度に男性2人は揃って口を開け、記憶が戻ってきた混乱が落ち着いたところにもう一度混乱材料を投げ込まれたイザベルは目を丸くし、その隣のアデルは絶句していた。
「にしても21歳か。若いねー」
「って言ってもあんたも22、3歳で死んでるってことでしょ?」
「そう言えばそうね。なに、うちの年代呪われてた?」
「もしくは高校とかー?」
和やかに続く会話の中で「まさかねー」と笑って言ったルリアーナのその言葉に、ふとリーネが黙る。
「……もしかしてそれ、あるかも?」
そして不意にそんなことを言い出す。
ルリアーナの推測があながち間違いではないかもしれないと。
「…どういうこと?」
それにルリアーナが首を傾げると、
「鈴華も私たちと同じ高校に入学したのよ…」
リーネはちらりとイザベルを見てそう言った。
「…え?あ、そうですね。私もお姉ちゃんと同じ高校に行きました」
視線を受け、イザベルも間違いないと慌てて頷く。
中村家から比較的近かったこと、ある程度のレベルの進学校であったこと、そして何より大好きな姉が通った学校であったことなどからイザベルは頑張って受験勉強に励み、リーネやルリアーナと同じその学校へ入学していた。
「へー。まあ、姉妹ならそれもあり得るか」
ルリアーナは感心したように頷き、くるりとアデルを振り返る。
「そういえばアデルちゃんってどこの人だったの?」
「あ、えっと…」
「鈴華ちゃんと同じ人にストーカーされてたってことは、もしかして近所?」
「え!?そうなんですか!!?」
「ああ、鈴華には言ってなかったっけ。アデル様って鈴華の後にあいつに目をつけられちゃった子の生まれ変わりなんだって」
ルリアーナに問いかけられたものの、会話参加者が多かったせいでアデルは口を開く間がない。
だが彼女が口を重くして先を話さないのはそれだけが原因ではなかった。
軽く俯き、ぎゅっと口と手を結び、逡巡しているような、躊躇っているような顔でルリアーナの方を向いていた。
「……アデルちゃん?」
そんなアデルを見て何か様子がおかしいとルリアーナがそっと声を掛ける。
リーネとイザベルもどうしたのだろうと口を噤み、アデルを見た。
「あ、あの、ですね…」
アデルは全員が自分の言葉を待っているのだと感じ、ゆっくりと口を開いた。
しかし何から伝えればよいかと視線を泳がせ、意味もなく揺れる身体は落ち着きがない。
「あの、この間、リーネさんが話した時、私が言ったこと、なんですけど」
「うん」
「イザベル様の後に3人被害者がいたって、話を、したんですけど」
「うん」
「その内の、1人、が」
「うん」
「……ルリアーナ様、だと思う、んです」
「……うん?」
そしてそろりそろりと話始めたアデルに優しく相槌を打ちながら聞いていたルリアーナは、アデルの言った言葉の意味がわからず、首を傾げてみせる。
「アデルちゃん、どういうこと?」
詳しく説明をとルリアーナが促したところで、
「……熱中症で死んだ人?」
リーネがアデルからの話の中にあった被害者の死因を思い出し、ルリアーナとの共通点を見出した。
「はい、そうです」
アデルがそれに首肯を返せば「ちょっと待ってよ」とルリアーナが声を上げる。
「今時熱中症で死ぬ人なんて珍しくもないでしょう?それだけで私とは」
言えないんじゃない?という言葉をルリアーナが言う前にアデルはぶんぶんと強く首を振った。
「同じ人にストーカーされていたということは、私たちは近くに住んでいた可能性が高いです。というか被害者は全員あの高校に関わりがあるはずです。あの犯人はあの学校の制服を着た女性に馬鹿にされたことが原因であの学校の女子生徒を追いかけていたそうですから」
アデルはそう言い、ルリアーナを見る。
「…熱中症で亡くなった21歳の女性は体調不良のために午前中で仕事を切り上げて家に帰ったところ、家の中を覗いている不審な男性に気がつき警察に電話しました。けれど電話中に犯人に見つかってしまい、逃げていた最中に亡くなったとされています」
「……そんな」
「ルリアーナ様にも妹さんがいらっしゃいますよね?その妹さんも同じ高校に通っていたはずです。そして犯人が狙っていたのは妹さんの方でした」
アデルはそう言うと目に涙を溜めてルリアーナを見る。
「妹さんの名前は野田美波」
そしてつうっと涙を流すと、
「彼女は私の、親友でした」
今まで気づかなくてごめんなさい、と言ってアデルは深くルリアーナに頭を下げた。
アデルは今までルリアーナの前世の名前を知らなかったし、ルリアーナの前世である芽衣子とは面識がなかった。
だからそれは無理もないことであり謝罪の必要などないのだが、この時のアデルは何故か謝らずにはいられなかったのだ。
「……間違っていたらごめんなさい。美波の親友ってことは、貴女は秋奈ちゃんかしら?」
ルリアーナの方も突然知らされた前世の繋がりに面を喰らい、なんと言っていいのかわからなくなった。
そのため咄嗟に浮かんだ、妹の話によく出てきていたアデルの前世らしき人物の名前を口にする。
そしてそれはアデルの回答によって肯定された。
「そうです。石橋秋奈。それが私の前世の名前です」
こうしてここにいる4人の奇妙とも言える前世の繋がりが発覚した。
イザベルの記憶を取り戻すだけのつもりだったが、予期せぬ事実の連続に、4人は漠然とこれが偶然ではないと感じ始めていた。
もしかしたらこの世界に転生した人物は、全員あの事件と関係があるのではないか。
それをはっきりさせるためにも、ここで一度情報を整理しておいた方がいいかもしれない。
読了ありがとうございました。
今まで1日おきペースで投稿していましたが、ちょっと話を進めたいのでこれからはストックが切れるまで毎日投稿にします。




