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ちょっと短いですが、切りのいい所がここしかなかったので。

ふわりと空気が動くような気配がし、ルリアーナがベッドに視線を遣れば眠っていたはずの少女が目を開けていた。

「気がついたのね」

「よかったぁ。一瞬駄目かと思いましたよ」

ルリアーナの言葉で少女の目覚めを知ったアデルもほっと安堵の息を漏らし、眉尻を下げて微笑む。

少女は状況が掴めないのかぱちぱちと瞬きをして、きょろりと左右を見た後ゆっくりと2人を見上げた。

誰だろうと考えるようにそろそろと視線を2人の間で彷徨わせる。

「あの…?」

何度か彷徨わせていた視線をアデルで止めて不安げな瞳で縋るように見上げて来た少女は、困惑してはいるがパニックにはなっていなさそうだった。

これなら状況を説明しても大丈夫だとアデルは口を開く。

「ここはディア国の王宮ですよ」

そう言うと少女は目を少しだけ丸くした。

本当に王族だったんだと驚いているのだろうなと想像できて、アデルは小さく笑う。

正確に言えば自分はまだ違うのだけれど、と考えつつ、思い浮かべた『まだ』という単語に少しだけ気恥ずかしくなった。

「意識を手放した貴女をアデルちゃんとライカ様が運んできたの」

次いでルリアーナが彼女がここにいる経緯を説明する。

その目は気遣わし気ながらも、彼女を注意深く観察していた。

だがそれは相手にプレッシャーを与えるようなものではなかったので、状況整理に追われているイザベルにも、隣で何やらぱたぱたと手で顔を扇いでいるアデルにさえ気づかれてはいない。

「お医者様のお話しでは栄養失調と過度の疲労とストレスだろうとのことでした。治るまでこちらで休んでいていいそうですよ!」

アデルは顔を扇ぐのをやめるとその手をベッドの縁について身を乗り出しながら声を弾ませて医者の言葉をイザベルに伝える。

ずっと心配していた彼女が目を覚ましたのが嬉しくてたまらないといった様子だ。

「もう陛下にも許可は取ってありますから、遠慮なさらず療養してくださいな」

そんなアデルを見て「やっぱりアデルちゃんはいい子ね」と思いながら、この調子ではやはり彼女が何者かも気づいていないのだろうと内心苦笑した。

イザベルには安心させるように笑い掛けたが、彼女の表情はまだ怪訝そうだ。

いくら貴族の生まれとはいえ、いきなり王族だ王宮だ陛下だと言われても頭が追いつかないのだろう。

やがて2人の言葉を聞いて考え込んでいたイザベルは吹っ切れたように顔を上げると、

「お心遣いありがとうございます。益体もない我が身ではございますが、お言葉に甘えさせていただきとう存じます」

上半身をベッドから起こして2人に頭を下げた。

それは現在の自分の状況を正しく理解した彼女の心からの感謝を伝えるに十分なもので、しかし今の弱り切った身体には相当辛い体勢に思えてアデルは酷く慌てた。

「そんな、気にしないでください!」

アデルはイザベルを支えるとベッドに戻るよう優しく促す。

せっかく意識が戻ったのに無理をしてまた倒れては意味がない。

イザベルはまたも驚いたように目を丸くしているが、アデルの言いたいことがわかって大人しくベッドに横たわった。

その光景が前世で妹が拾ってきた子猫を懸命に介抱していた姿と重なって見えて、ルリアーナは懐かしい気持ちに薄っすら目を細める。

あの子は猫の怪我が治るまで過保護なほどに構っていたが、アデルならば相手が人間なこともあるしそこまではしないだろうと思うが、心配で仕方ないという目はどちらも一緒だった。

「そうそう。それに多分、貴女は私たちと同じだから」

軽く頭を振って思い出を追い出し、ルリアーナはイザベルに向き直る。

自分が思っている通りの理由で彼女がここにいるなら、多少無理をしてでもなるべく急いで事情を聞いた方がいいだろうと思ったのだ。

打てる手は先に打たねば。

「えっと、どういう…?」

「ルリアーナ様、どういうことですか?」

けれど当の本人やアデルはその言葉の意味がわからなかったようで首を傾げている。

イザベルはわからないが、アデルならこの言葉でわかりそうなものなのに。

もしかしたら彼女がここにいるわけがないという思い込みが邪魔をしているのかもしれない。

「んー、アデルちゃん。この女性に見覚えはない?」

「え?」

ルリアーナはどういえばいいのかと迷うように曖昧に笑いながらアデルを見る。

そしてその視線を受けたアデルが今度は穴が開くのではないかというほどイザベルを見つめること30秒弱。

「あっ!?」

ピンときたのだろう、驚きの声を上げると彼女に向かってその名を叫ぶ。

「貴女、イザベル・バートランド!?」

そう言ったアデルは信じられないと目を見開いていたが、言われた方のイザベルも同じように信じられない思いで目を丸くしていた。

読了ありがとうございました。

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