第六話(前編)
小鳥も囀る快晴の早朝。まだ活動を開始していない住民も少なくはない中、王都から使わされた調査隊の方々と共に、我輩達は村長の家へと集められた。
最も我輩は急に出てきては驚かせてしまうかも知れないという配慮の下、然るべき時に紹介するとして、裏口から密かに村長の部屋での待機を命じられて居るのだが。
つまり、今現在居間にて顔を合わせているのは村長とスレスタ殿、そして調査団の女性が一人と、鎧を着た人間2人の5名である。
ちなみに姉上は何故か我輩と同じ部屋で自主的に待機しているが、特に話し合いに参加してもらう訳ではないので問題ないだろう。
そうして状況を確認した後、我輩は扉越しにそっと居間の様子を伺う。
丁度村長が人数分の椅子を用意し、それぞれが腰を下ろした所で自己紹介に入る所だったようだ。
調査隊の3人組の中でも、少し前に座り村長と対面する女性が口を開いた。
「このような朝早くから失礼した。僕が今回使わされた調査隊の隊長、シャルロアだ」
そう言うと、その女性――シャルロア殿は頭を下げた。
長い郡青の髪を側頭部で1つにまとめた特徴的な髪型が、一礼に合わせて柔らかく揺れた。
瞳は夜闇のように黒く、凛々しい目元は強気な印象を抱かせる。
しかし中々に年若く見え、交渉役辺りなのだろうかと考えていた我輩は大いに驚かされた。推定14,15辺りではないだろうか。それで隊長だと言うのだから、相当な実力者なのだろうか。
そのように考えていると、続けて後ろの鎧姿の二人が名を名乗る。
「……ワシはバハドゥル。隊長の部下であり、調査員の一人だ」
「俺はギータ。同じくただの調査員だ」
鎧姿の二人は立て続けに紹介を済ませると、先程のシャルロア殿と同じように頭を下げた。
兜のお陰で顔は見えなかったが、壮年の男性を想起させるバハドゥル殿とは違い、ギータ殿は声こそ低いものの活気が伺え、どうやらスレスタ殿と同じくらいか少し上辺りの男性であろうと思わされた。
しかし特徴的なのはその姿で、二人とも全体的に曲線の多い形状の鎧を身に纏っており、雪だるまと見紛う程の様相を呈していた。兜など肩幅と同じくらい横に広く、楕円形である。
全く同じ形状であるが故に、どちらがバハドゥルでどちらがギータなのか判別し辛い位なのは少々戸惑ってしまったが、よく見ると胸のエンブレムはそれぞれ赤と緑で塗り分けられており、ここから判別するのだろうと推察する。
「いえいえ、遠方遥々ご足労頂き、誠に感謝致しております。私が村長のパウリィです」
「あぁ、宜しく頼む。それでは早速だが、今回魔獣を確認した日から今までの状況を、出来る限り簡潔に教えて貰えるだろうか?」
「えぇ、その事なのですが……少し、ややこしい事になっておりまして……」
「うん?」
歯切れの悪い村長の言葉に、シャルロア殿が疑問を抱いたようだ。
それはそうだろう。今回の事はそもそも自分たちでは手に負えないと判断し、解決できる力を持つ者を呼び寄せた村側の救援要請なのだ。
村側からすれば彼女たちは待ちわびた客であり、予定外の珍客ではないのだ。
しかし、村長は歓迎こそすれ事情を中々切り出そうとはしない。不審に思ったのだろう、先程よりも目を細め、シャルロア殿は再度村長へと質問する。
「……何か問題でもお有りか? 僕らには話せないような事か?」
「とんでもない! そういった類の話ではありませんが……その、言いにくいのですがな。実は魔獣の方なのですが、ある人物が仕留めてしまったようなのです」
「え?」
きょとんとした顔でシャルロア殿は聞き返す。こうしてみると年相応の少女のようだ。
しかしそう思うのも束の間、すぐに表情を引き締めると、僅かに強めた語気で続きを催促する。
「――先程は出来る限り簡潔に、と言ったが、訂正しよう。なるべく詳細に説明を求める。僕たちも子供の使いではないのでね。解決しましたさようなら、では面目が立たない」
「……隊長はこう見えて多忙なお方でな」
「どんな仕事も丁寧かつ迅速、が信条でいらっしゃるのだ」
二人の騎士も隊長の言葉に追従する。その声は名を名乗った時のそれよりも低く、警告の意味も含まれているように感じた。納得の行く説明をしてみせろと言外に伝えているようだ。
恐らく誤報か、或いは謀の類である可能性を考慮してのものだろう。下らない理由で呼びつけたのであれば、ただでは済まさないという意志の表れだ。
このややこしい事態を呼び起こした張本人である我輩にとっては針のむしろである。頭の中で何度も村長へと頭を下げた。
その時、村長の隣で押し黙っていたスレスタ殿が話を切り出した。
恐らくこれ以上引っ張るのは得策ではないと判断したのだろう。剣呑な空気を入れ替える意味でも、我輩も交えて事情説明する腹積もりのようだ。
「済まない。俺たちの方でも、想定外の出来事だったんだ。だから事情を伝える前に、前提条件だけでも理解して貰いたかった。怒らせるつもりは無かったんだ」
「であれば、ちゃんと話を聞かせて貰えるのだな?」
「勿論だ。これから魔獣撃退の当事者を紹介する。――千鉄! 来てくれるか」
合図に対して待ってましたとばかりに扉を開き登場した我輩は、当然のように付いてきた姉上に歩幅を合わせ、ゆったりとした動きで居間へと進む。
余程奇妙な光景に映ったのだろう。調査隊の三人はただこちらを見て固まり、どう反応していいのか分からないといった様子だ。見苦しくて大変申し訳ない。
「ただいまご紹介に与った千鉄と申します。以後お見知り置きを」
「私はカリンだよ」
「あ、あぁ。シャルロアだ。宜しく頼む。こちらはバハドゥル、そしてギータだ」
「……どちらが魔獣撃退の当事者だ?」
「流石に子供は無かろう」
戸惑いながらも名乗り返すシャルロア殿とは裏腹に、二人の騎士は顔を突き合わせて何やら言葉を交わしている。やはり騎士だけあって肝が据わった方達のようだ。
「その、随分と禍々しい鎧だが……傭兵の方か?」
「いえ、それがこの男、魔法生物なのです。空鎧はご存知でしょう?」
「空鎧……あのおとぎ話の? まさかそんな……」
シャルロア殿の疑問に村長が答えるが、やはり信じては貰えないようだ。無理もない。ここに来てすぐに読ませてもらった文献でも、空鎧は戦乱の世にのみ存在を報告されていた種族らしいのだから。
尚も疑いの目を向けるシャルロア殿は努めて冷静に我輩へ話しかける。
「もし駆け出しの傭兵が、手柄欲しさに法螺を吹いているのだとしたら、到底見逃せないぞ。僕たちの面子の問題だけじゃない。結果的に魔獣を放置してしまうような嘘であれば――」
「これで如何ですかな」
「――この村を危険に晒す事にも繋がきゃあああああ!!?」
手っ取り早く信じてもらうには証拠を提示する他無いと判断し、兜を頭から取り外し中身が無いことを証明する。
話の最中で行動に移るのはやや行儀が悪いが、あちらとしても迅速な対応は望む所だろうと考えた上での物だった。
結果としてシャルロア殿は尻餅をついてしまったが。やはり唐突すぎただろうか。
「えっ!? 頭……いや中身が!? えぇ!? ま、ましゃか本物!?」
「……これは凄い、どうやって喋っているのだ」
「落ち着くのだ隊長。筋肉は裏切らない」
まるで冷静さの欠片もない隊長の有様をギータ殿が嗜めるが、内容がズレているように感じるのはやはり内心彼も動揺しているからなのだろうか。バハドゥル殿は興味津々といった様子で右手に抱えた我輩の兜を見つめたまま何事かを呟いている。三者三様とはまさにこの事だろう。
しかし信じてもらう事は出来たようだが、説明が出来る状況では無くなってしまった。どうしたものかと村長達の方へ兜を向けると、こちらもまた冷静と言える状態ではなかったようだ。
「いや、分かってはいたが改めて見ると凄いのう。怪談のようだ」
「ねぇねぇ、千ちゃん千ちゃん! その兜被ってみて大丈夫!? 被っていい?」
「待て、子供にはサイズが合わない。俺が被ろう」
そういえば彼らの前でも、まだこのような真似はしたこと無かったのだと思い出す。
それを思えば、むしろこうして隠し芸感覚で楽しめて貰っただけプラスと言えるのではないだろうか。念の為、稼働中の空鎧の外装を身につけるのは危険である事を説明しておくべきではあるだろうが。
結局この後は、ある程度騒いだ後に村長がその場をまとめるまで、全く話が進むことは無かったのだが。
***
「こほん。えー、それでは……千鉄くんで宜しかったかな?」
「それで構いませぬ」
ひとしきり騒いだ後、改めて席に付いた上で話し合いを仕切り直す。
その為にまずは状況確認の為にと、シャルロア殿は我輩へと声を掛けた。
恐らく最初は魔獣撃退に関しての詳細から聞き取るつもりなのだろう。
「アナタが魔法生物である事は理解した。しかし申し訳ないのだが、あのような真似をする前に、ちゃんと『これから驚かせますよ』と前置きした上で行動を起こして貰えないだろうか。アナタも僕の失禁でこの家を汚すことになるのは本意ではないだろう?」
「これは失礼致した。以後気を付けます」
「頼んだよ」
違ったらしい。だが大事なことだ。この村の皆が受け入れてくれた事でつい調子に乗ってしまっていたが、基本的に我輩は魔法生物なのだ。
初めて見る人が怯えるのも当然だろう。今後軽率な真似は控えねばならない。
忠告を素直に聞き入れると、横から姉上の疑問の声が聞こえてきた。
「あれ? そんなに驚くことかな」
「……隊長はこう見えて臆病なお方でな」
「下の蛇口も緩んでおられるのだ」
姉上の独り言に応えた騎士二人の言葉が耳に入るや否や、シャルロア殿は顔を赤くした後、腰の剣に手をかけ椅子から立ち上がる。
「そこに直れ不肖の部下共。機密漏洩で裁いてやろう」
「漏らしかけたのは俺たちではなく……いや、申し訳ない! 抜き身はやめて下され!」
「……早く本題に入らないか?」
しかし、やや呆れた様子のスレスタ殿に口を挟まれ、慌てて座り直した。彼女にばかり責任があるわけではないが、どうもそそっかしい部分は生来のものであるらしい。
恐らく対面時の顔は意識して作っているものなのだろう。なにせ他二人と比べても若年である。騎士の平均年齢がどの程度なのかは分からないが、同期でも歳の近いものは居ないのでは無かろうか。
であれば、普段からあのような態度でなければ務まらない役目を必死にこなしているのかも知れない。
そう思うと、不思議と今の振る舞いが微笑ましく見えてくる。やはり子供というのは自然体であるべきなのだ。
一人で納得し頷いている我輩に胡乱な目を向けつつも、何とか気持ちを落ち着けたらしいシャルロア殿は再び話を切り出す。
「……それで、アナタが魔獣を撃退したという話だったか?」
「そうですな、何も最初から手柄を狙っていた訳ではありませぬが」
「では、その辺りの話を詳しくお聞かせ願えるかい?」
「承知」
解説を請われ、我輩は改めて姉上と出会ってから、村へ足を運ぶまでの経緯を詳細に語る。
一度村長と共に情報を整理した経験もある為、その時に比べると話運びも随分と上手く行ったように思う。
間に挟まれる姉上の補足説明でやや脱線もしかけたが、我輩たちの置かれている状況は概ね伝わったと見ていいだろう。
話を聞き終えた調査隊の方々は、内容を噛み砕くように暫し押し黙ると、隊長であるシャルロア殿が代表して口を開いた。
「なるほど……その場で生まれた魔法生物か。となれば確かに前例のない事態だ」
「えぇ。我々としても当初は頭を悩ませたものでしたが……ご覧の通り、人に対して非常に友好的なのです。我が孫を救って頂いた恩もありますので、あなた方が訪れるまで村に滞在して頂いたのですよ」
「そうか。しかしあまりにも前例がなさ過ぎて僕たちでもどうしようか迷うほどだ。いや本当どうしたものか……」
「……隊長はこう見えて不測の事態に弱くてな」
「昼食のメニューが変更になった程度でも狼狽えておられる」
やはり事は単純ではないらしい。調査隊の彼らが語るには、王都では公的に残されている魔法生物との接触記録が数えるほどしかなく、さらにそれらの記録も数十年単位で間隔が離れており、当然のようにそれぞれ種類も状況も異なっており、とても参考には出来そうにない、という事だ。
ちなみに、それらの接触記録に載っている魔法生物は全て人間に対し攻撃的であり、有無を言わさず討伐対象として処理されたようだ。我輩が元魔王軍の所属であるということは伏せておいて正解だったのかも知れない。
そうして皆で頭を捻っている所に、バハドゥル殿がひとつ提案した。
「……そちらさえ宜しければ、魔導研究部署で働けるように取り付けられるかも知れないが、どうだろうか。そこでなら、魔法生物でも自由に行動出来る筈だ」
「研究部署……? まさかとは思うが、コイツを実験道具に使うつもりではないだろうな」
「無論、非人道的な扱いはせぬようきつく言い渡すつもりだ。あくまで彼が苦痛を覚えない程度の研究で、彼が要請を受け入れた場合にのみ研究を許可する。言わば善意の協力者として、一時的に配属してもらう形だ」
スレスタ殿の疑問に丁寧に応対し、バハドゥル殿は更に説明を続ける。魔導研究部署とは、その名の通り魔術に関する研究を一手に担う部署であり、王都で発明される技術などもほぼここから生まれる研究の成果であるらしい。魔術が生み出す恩恵は多岐に渡り、特にここ数年でインフラから武具まで様々な分野の発展を促してきた、今や王都でも重要視される部署であるそうだ。その為最近では特に人種・老若男女問わず間口を広げており、素質があるものなら特に歓迎される傾向にあるという。
人に対して攻撃的であり、また言葉も介さないような存在であれば、何れにしろ捕縛されて研究部署へ回される事に違いはないそうだが、その後の扱いは随分と差が出るものだろうと推測しているようだ。
交渉の余地が無いようであれば厳重に管理され自由など無い扱いを受けるだろうが、自ら協力を申し出るなら客人としての在籍も可能であるという。事実、先天的に特異な魔術を行使出来る人間などは望んで足を踏み入れ、そのままそこの職員になることもあるそうだ。
それならば、交渉の余地もあり友好的でもある我輩は、そういった人たちと同じように扱うことも出来るだろうという見解だ。
「勿論、全てが上手くいくとは限らない。もしかしたら心無い意見により、少々受け入れ体制が整うまでに揉めるかも知れないが……そこは我々を信じて貰う他にない」
「なるほど。いい案ではないかバハドゥル。そういえば僕と同年代の子もあそこの中心チームに居たな。そこから攻めていけば、僕も協力できるかも知れないぞ」
一度方向性が決まれば、上手い具合に話が進んでいく。不測の事態に手間取らされたとはいえ、やはり彼らも王都からの使いに選ばれる人材なのだ。持てる人脈と職権で出来ることを選択し、最善を尽くしている。我輩の為にここまで考えてくれているのだと思うと頭の下がる思いだ。
「俺もあちらに配属されている部下は幾らか居るからな。外出なんかの制限もかなり緩くしてやれると思うぞ。どうだ、千鉄殿?」
「有り難い。そこまでして頂けるのなら、何も不満はありませぬ。是非ともその方向で……」
「千ちゃん、行っちゃうの?」
その場に居る人物の視線が一点に集中する。声の主は肩を落として俯き、顔色は伺い知れなかった。
だが、その姿とか細く響く声を聞けば、見なくとも理解出来た。悲しんでいるのだと。
「姉上……」
「せっかく家族になれたのに、一緒に居られないの?」
「…………」
言葉に詰まる。いずれ離れなければならないことは分かっていた筈だった。だが、用意していた台詞は出てきてくれない。どうしても励ましたり、慰めたりといった行動が取れなかった。
理由は分かっている。離れたくないのだ、我輩も。
ここでの生活は楽しく、姉上と共に過ごす日々はとても暖かい。例え強がりでも、離れて大丈夫だなどと口にできなかったのだ。なんと女々しい事か。
静寂が場を支配する。皆、何を言っていいのか分からない様子だ。しかしそんな空気の中、ギータ殿が優しく姉上の肩を叩き、元気付けるように明るい声を発した。
「心配するな、お嬢さん! 彼が危険でない事が分かれば、すぐにでも帰って来られる! 今回はそのために王都に来てもらうって話だからな。早ければ一年も待たないぞ。だから安心して、送り出してやりな!」
「……本当? ちゃんと帰ってくる?」
「勿論だ! もし帰さないと言うような人が居たって、俺達が絶対にどうにかしてみせるさ! ですよね、隊長!」
「当然だ。僕は曲がったことが嫌いだからね」
得意げな顔でシャルロア殿が答えると、姉上の顔色がやや明るさを取り戻す。バハドゥル殿が「希望的観測が過ぎる」と呟いてはいたが、その声色は決して厳しくはない。彼の言葉に嘘がない証拠だろう。
シャルロア殿とギータ殿が姉上に話しかけている間にバハドゥル殿から聞いた話によると、ギータ殿は既婚者であり、娘が居るという事だった。姉上を励まして見せたのは、そういう所からだろうとバハドゥル殿は語る。
やはり家族がいる男というものは人を導くのが上手なのだなと納得する。我輩もこう在りたいものだ。そのような事を考えていると、話が一区切りついたのか、シャルロア殿が声を掛けて来た。
「さて、それでは王都へ向かうための準備をお願いしたいが……その前に、魔獣討伐の証を頂いても宜しいかな?」
「証、と申されますと?」
「魔核だよ。魔獣共の体内に存在している、命の源だ。君の手柄を横取りしたい訳ではないが……砕いた後の欠片を持ち帰らないと、僕らの仕事が完了したと報告が出来ないのさ。まぁそもそも魔獣が居なかったという結果に落ち着いた場合は必要ないんだが」
「…………」
「なにせ魔核をきっちり砕いておかないと復活するって言うんだから、王都の方でも完了報告は厳しく精査されていてね。現場で砕いた後、持ち帰るのを忘れて報酬がパァになってしまった経験も……何故黙ってるんだい?」
我輩が姉上へと首を向けると、視線がかち合った。どうやら考えていた事は同じらしい。
姉上に手のひらを差し出して、首を傾ける。意図は伝わったらしい。姉上は困ったように首を振ってみせた。そして二人で暫く見つめ合った後、同時に頷いた。
そのやり取りを黙って見ていた一同が、一様に固まる。当然だろう。この行動が持つ意味は誰が見ても一目瞭然である。
「……もしかして……持ってないのかい?」
恐る恐る訪ねてきたシャルロア殿に、叱られた子供のような心持ちで頷いた。