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天使なんだけど、人界に降りて本を読めって、どゆこと?  作者: 里井雪
ユキオ君のこと

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13/20

百合物語

 こういうことらしい。ノブコが「ごめんなさい」をした相手。ユキオ君という子なのだが、彼は野球部のエースで女の子にもかなりモテるとのこと。今時、野球なんて流行らないかもだけど、監督の方針で、丸坊主じゃないし、結構イケメンという要素が加味されている。


 要はノブコに振られたのが、痛く彼のプライドを傷つけたということ。ノブコに「証拠を見せろ」だの「お前が百合だってこと、みんなにバラすぞ」などと小学生みたいなことを言っている。ノブコも売り言葉に買い言葉で「そんなことしたら、アンタの臭いラブレター、ネットにばら撒くからね」と応戦した。


 高校生のノブコだから、このやりとりが、いかに子供じみて馬鹿馬鹿しいかという点は、十分に理解している。もちろん、ユキオ君も本気ではないだろう。


「で、私が『証拠』ってこと?」


「そう。でも、これから、彼と話し合いに行くのだけれど、一対一は不安だし。『保護者』に付き添いをお願いというのは、なんだか気恥ずかしい。でも、『彼女』ならいいかなぁ〜 って」


「その理屈はよく分からないけど。了解したわ。『囚人のジレンマ』の囚人は、お互いに会えず、信頼できないから最良の選択肢を選べなかった」


「だから、ちゃんと話しなさいと?」


「そう」


「百合のお姉さんと思われちゃってもいいの?」


「全然OK。気にしないわ」


 夕刻、私はノブコと連れ立って近くのファミレス。「ガス灯」に行った。少し早く着いたようで、フリードリンクだけを頼んで、私はコーヒー、ノブコはメロンソーダを飲んでいると、彼がやってきた。


 野球部エースと聞いていたので、長身を想像していたのだが。確かに体格はがっしりしてはいるが、背が低い。広い肩幅にちょっと不釣り合いな眉目秀麗な頭が乗っかっている。彼はいきなり頭を下げた。


「こ、この間は、ごめん。想像もしていなかった答えを聞いて、動揺しちゃって」


 何、コレ、一発で解決じゃない!


「分かってくれれば、いいの」


 あっけなさ過ぎて、ノブコは一瞬、鳩が豆鉄砲を食ったような表情をしたが、鷹揚に答えた。


「あれから、君がどんな気持ちで僕にああ言ったかを考えてみた。単純な『ごめんなさい』ではなく、理由を話すことで誠意を示してくれたってことだよね? キレた自分が恥ずかしい。自分の高慢さに改めて気づいたよ。野球部でエースに選ばれて、あと一歩で甲子園。自惚れていたんだ」


「そこまで卑下することはないと思うけど。理解し合えれば、私たち友達にはなれるわ」


 って、ここ、私、必要??


「って、でも、こちらさん。本当に彼女?」


 私はノブコと視線を合わせた。バラしてもいいという目をしていたので。


「ああ、あ、イリスと言います。『レンタル彼女』です」


「実は、アパートにお住まいの方。ユキオ君がああいうから、ちょっとねぇ。もちろん、タダでレンタルしたんだけど」


「ああ、最初はレンタルだったけど、後々、本気とか?」


「それは、アニメのお話、現実的じゃないわ」


 アレ? フォローしたつもりなのに、ノブコ、妙な表情をしているけど?


「ああ。そうだ、ちょうど良かった。今週の土曜日なんだけど、二人とも空いてる? 準決勝なんだ」


「あ、そうか! じゃ、早く帰ってコンディション整えないと」


 ちょうど土曜ならバイトもお休みだ。三人は応援に行くことを約束してファミレスを後にした。


「ねぇ。ほんとに彼、アウティングなんて、トンデモを言ったの?」


「ああ、まぁ、再度、会う機会を作る方便だったかもね」


「でも、いい子みたいだし、お友達にはいいんじゃない」


「そうね」


 その夜。ずいぶんと、エーデルワイスも咲いてきた。ハイジに経緯を説明していると、ちょっと意外な答えが。


「イリス。天使と人の恋は悲劇しか生まないけれど、もしかして、もしかして。ノブコの想いが君にあることも考慮しておくべきじゃない?」


「え?」


「もう。いつものごとくポンコツというか」


 ああ、私に性別はないけれど、確かに人から見れば普通に女の子。うーーん。もちろん、恋愛に対する価値観の問題もあるけれど、そもそも永遠の命を持つ天使と、有限の生しかない人との恋愛って、その先にあるものは悲劇しかないのは確か。「もしも」の時には、自らの出自を明らかにする以外、方法はないのだろう。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 13/13 ・あら。意外とサッパリ [気になる点] 悲劇、マジですか。うわー。 [一言] 気の迷いって怖いですね
2020/09/26 16:29 退会済み
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