2
ロレンツたちが住む街『アッシュリバイブ』から出発して、四人は竜の谷を目指して歩く。
「やっぱよぉ、普通の依頼ばっか達成しても先に進めねえよなぁ!?」
ドミニクは野心を燃やす。
「さすがドミニク!」
魔法使いマリアは目を輝かせる。
「それでこそリーダーに相応しい」
格闘家ジョナサンはドミニクを褒め称えた。
「んっ、はぁっ、はぁっ……」
息切れしながら四人分の荷物を運ぶロレンツ。
竜の谷はその名の通り、竜が住む谷である。
ドミニクたちは竜を退治しに行く……訳ではない。
竜の卵を盗みに行くのだ。
彼らの所属するギルド『竜の息吹』は初代ギルドマスターが竜を使役する竜騎士であったことから名付けられたものである。
初代ギルドマスターは竜と死闘を繰り広げた結果、友情が芽生えて竜を使役するようになった。
ドミニクたちは竜と闘うつもりは勿論ない。
竜の卵を盗み、産まれてくる子供に刷り込みを行うのだ。
自分が親だ、と。
刷り込みが上手くいけばドミニクは晴れて竜騎士になれる。
失敗しても問題はない。
竜といえども幼体ならば簡単に殺せる。
だから竜の卵を盗みにいく。
そのことにドミニクたちはなんの疑問も抱いていなかった。
ただ一人、ロレンツを除いて。
評価、ブックマークをいただきました。
ありがとうございます!