ひと時の協力
学校が始まったら少し頻度が落ちると思います。何卒ご了承ください。
新堂は思わず声を出して驚きそうになった。
夢に出てきた少女が転校生など、誰が想像できただろうか。
姿も変わっておらず、透明感のある金髪のショートヘアだ。
その上、とてつもない美貌なのだ。日本人には見られない大きく宝石のように綺麗な碧色の瞳を持っていた。
「お、遅れ、、ました。ごめんなさい。」
クラスのほぼ全員から注目を浴びてしまっていたからか、その声は聞き取りづらいほど小さかった。
そして、早足で新堂の隣の席まで向かい、座った。
「おう新堂。世紀の美少女が隣でよかったじゃねぇか。」
と、前の男子から恨みのこもったトーンで話しかけられた。
仕方ないじゃない、不可抗力だもの。
「おう、じゃあホームルームを始めるぞ!」
の先生の一声で、こちらに向いていた男子たちの目線が逸れたので、新堂はホッとした。
ホームルームは久しぶりだったが特に変わりはなかった。
今日の授業についての情報や、クラブの時間帯についてという至って変わりの無いものだった。
ホームルーム後、突如隣の例の転校生から話しかけられた。
「あの、、、新堂くんでいいですか?放課後に出来れば人目のないところで話がしたいんですけど、、」
「えっ」
話がいきなり過ぎないか。そもそも新堂は向こうの名前さえ聞いていないのである。
「えーと、とりあえず良いけど、まず自己紹介をしよう。俺は新堂悠真って言うんだ。そっちは?」
「あっ、あの、イブ・ヨグトシアです。よろしくお願いします。」
何だろうか、周りの目線、主に男子からの目線が槍のように鋭い上に痛い。
まるで首に全方向から刃を向けられている気分になった。
「え、どうして人目のない所じゃないとだめなの?」
「えーと、あの、、、耳を貸してください。」
わかった、と耳を近づける。しかし、次にイブが発した言葉は新堂を驚愕させた。
「神話生物についての話なんです。」
「なっ、、!!」
イブも、神話生物について知っていたようだ。
「なぜ、その事を、、、?」
「その事も、ここでは色々まずいので放課後に話したいんです。そうですね、、、放課後、屋上に来れますか?」
「あ、あぁ。行けるけど、、、」
その後、新堂は授業身が入らなかった。
話がぶっ飛んでいる。ただでさえ夢で見た子が現実に現れるなんて信じられない事なのに、その子が神話生物のことを知っているなど到底ありうることの無いのだ。だがそれが今は事実、起こってしまっている。
しかもその子、イブは絶世の美少女なのだ。あまりそういう事に疎い新堂でさえ、多少ドキドキしてしまった。
そこから時間が経つのは早く、気がつけばもう放課後だった。
周りから人が居なくなったのを確認してから屋上へと向かう。
屋上へはかなりの数の階段を登らなければいけなかった。一応、屋上は生徒の立ち入りを許可されているが、転落の可能性等もあった為立ち寄る生徒は少なかった。
屋上へのドアの前まで辿り着いた。ドアノブを押し、少し古く軋むドアを開ける。
それと同時に強い風が吹き込んできた。ひんやりとした風が新堂に吹き付けた。
どうやらイブはもういるようだ。
「あ、来てくれたんですね。」
「あ、うん。」
「えーと、神話生物についての話って言いましたよね。まず、これを見てください。」
そう言って差し出されたのはキャラクターシートだつた。
イブ・ヨグトシア
STR 9 DEX 10 INT 16 CON 10 POW 18 APP 18 SIZ 12 EDU 17
耐久力 11 魔力 18 SAN値 70
特殊技能 魔法:未来視
いかにも見た目通りの女の子というステータスだった。
しかし、魔力がとてつもなく高い上に、特殊技能の未来視というものが気になる。
「えーと、この未来視っていうのは何?」
「あ、これは魔力を使うんですが、発動した時から24時間先までの未来を見ることができるんです。でも、些細な行動未来は変わるので随分先の未来を見ても信用しすぎるのもダメなんですけどね、、、」
と、苦笑しながら教えてくれた。
「それは誰が与えてくれたんだ?そんな強い能力、、、ニャルラトホテプか?」
「いいえ。ニャルラトホテプさんはこの紙をくれただけで、この能力自体は親から引き継いだものなんです。」
「親から?」
「はい。私の家族は知っての通り外国に住んでいるんですが、その昔、信じ難い話なんですが先祖がなにか光の玉?に触れた時に偉大なる知識と能力を授かったそうです。どうやらその先祖は長くは生きられなかったそうですが、、、それが私たちに引き継がれて言ってるみたいです。」
「じゃあ、君も長く生きられないのか?」
「いいえ。この能力自体引き継ぐ度に弱くなっていってますから、、、特にそんなことは無いですよ。
さて、私の話はこれぐらいにして本題に戻りましょう。」
なんだろう、みんなの前と少し性格が違ってる気がする。
気弱な感じがしていたがどうやら案外しっかりとした気の持ち主のようだ。
「新堂さん。ニャルラトホテプさんから聞いたのですが、星の精を倒そうとしているそうですね。」
「まぁ、そうだな。親の仇を打つめなんだけど、、、」
「単刀直入に言います。多分、、、今の新堂さんには無理です。」
何となく、そんな気はしていた。
あの虫のような何かにさえ戦う気も起きなかったのに、星の精なんかに勝てるわけがないとは思っていた。
「倒せない、では無いですよ?ただ、戦えないんです。星の精は見えない存在なんです。」
「なんだって?」
「星の精の体は透明で、人の血を吸った時にしか体が見えません。と、なると当然誰かが犠牲にならないと新堂さんは星の精に攻撃を当てるおろか見ることすら出来ないんです。 新堂さんは、自分のために誰かを犠牲にできますか?」
生贄がいるってことか。そんなの、無理に決まってる。
「いや、、、無理だ。なにせ、これは俺の自己満足なんだ。いや、やらなきゃニャルラトホテプに殺されるらしいけど。
その為に誰かが犠牲になるなら俺は無理だ。」
そう答えると、若干イブの顔が輝いたように見えた。
「じゃあ、私たち、協力しませんか?」
「協力?星の精を倒すために?」
「はい。私も星の精はいつか倒さなきゃいけない存在なんです。理由は言えませんが。
それだったら同じクラスという縁もあるので、一緒に倒しませんか?」
「いや、協力したとしてもどうやるんだ?さっき言ってたじゃないか、犠牲がいるって。」
「それが大丈夫なんですよ。とある魔法がありましてね。それを使えば見えないものが見えるようになるんです。」
「いや、最初からそれを言ってくれよ、、、」
「まぁ、魔法なんてそんな言いふらすものじゃないですから、、、
それで、もし協力してくれるならその魔法が書かれた魔術書を一緒に探して欲しいんです。」
「いや、魔術書なんてこの世の中にあるものなのか?そもそも魔法の存在自体俺は今知ったぞ?」
そう言えばそうなのである。新堂は魔力の存在はキャラクターシートによって知っていたため、なんか魔法とかあるんだろうなぁ、と予想はしていたが本当にあるとは思ってもいなかったのである。
「あぁ、、、ま、まぁ有るんですよ。大体の場所の検討は着いたんですけど何にせよ一人で行くには心細すぎて、、、」
「要は一緒に取りに行ってくれってことか?そんな場所俺は知らないけど。」
「そういうことです。協力、してくれませんか?」
うぐ。上目遣いをされた。元々身長差がかなりあるとはいえその目には俺は弱い。というか俺自体女性に弱い。
「わかったよ、、、」
と答えるとイブは嬉しそうに
「やったあ!!ありがとうございます!!」
と言いながら手を握ってきて、
「では、これから暫くの間よろしくお願いしますね!」
と言ってきた。
「こちらこそ、よろしく。」
その手を、しっかり握り返す。
その時、ほんの少し頭痛が走った。
一瞬だったので痛みはあまり感じなかった。
今度こそ、離さないからな。絶対、守り通してやる。
あれ?なんだ、今の。
何故か俺の頭の中に思ってもないような意思が、、、?
その後、俺たちは解散し各々の家へと帰った。
最後の握手をした時のあれが何なのかよく分からなかったが、まぁ、いいだろう。
気のせいかなにかだ。
しかし、もうひとつ腑に落ちなかった点がある。
イブの、協力 という表現だ。
力を合わせる、という意味なら分かるが何か違う気がした。
なにか違う派閥同士の協力、というような意味合いを感じたのだ。
まぁ、派閥やチーム等別に無いため、これは俺の勘違いだろうか。
そんなことを考えながら、新堂は1日を終え、眠りについた。
新しいキャラはイブちゃんです!
めちゃくちゃかわいいです!
やったね新堂くん!仲間が増えたよ!