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名状しがたきこの世界  作者: まがたま
第一章 ◼と◼
8/13

夢と黄色い少女

書き終えたので寝ます。

おやす、、、


記録はここで途絶えている。

夢を、見た。

そこは儚く、美しい幻想のような世界で、空は水色に彩られ!辺り一面には色とりどりの花が咲き誇っている。

そこで、新堂は黄色のフード付きのレインコートのようなものを着た少女に出会った。

フード付きと言えどフードはしておらず、彼女のショートで明るい茶色の後ろ髪を見ることができた。

突然その女の子は振り向き、こちらの方へ歩いてきて、新堂の前で立ち止まった。


そして、聞き取りにくい声だったが、こう言った。


「助けて。」


と。


彼女の顔を見ると、その顔は涙を流し、悲壮な表情を浮かべていた。


急に世界が変わり始める。

綺麗な空は赤黒く染まり、赤い雨が降り始める。

地面に咲き誇っていた花はいつの間にか消滅し、代わりに大量の骨と蛆虫が湧いていた。

だが、新堂は驚かなかった。なぜか、それが当たり前のように感じていた。

そして、自分の右手を差し出し、、、







目を覚ました。

何故か目の前にはニャルラトホテプが居て、自分の右手を握っていた。


「起きるなり僕に握手を求めるだなんて、君は僕の熱烈なファンかな?

ま、僕は優しいからね。そのぐらいはしてあげるけど。」


と、かなりニヤニヤしていた。昨日会った時には銀色の髪の毛をしていたが、今日は黒へ戻っていた。

なぜ今日もお前がいるんだ!?と問いかけようとしたが、それを言う前に


「さて、君も目が覚めたようだし本題に入ろう。なんで連日で会いに来たのかというと、

君にキャラクターシートの読み方を教えて上げるのを忘れてたんだ。だから今日また来たって訳。」


と話に入られた。


「いや、黒川さんに教えてもらったけど、、、」


「黒川?それって誰?」


「いや、お前が教えてくれたジムの人だけど、、、」


「あれ??そんな名前だったかなぁ?」


「え?黒川さんはニャルラトホテプ直々に俺を鍛えろって言ってきたって言ってたけど?」


「うん、確かに一応あいつに頼んだけど、、、黒川じゃなかったような、、、?

まあ、いいや。教えてもらったのなら別に僕が言う必要も無いよね?じゃ、頑張ってね。」


そう言って、煙のように目の前から消えた。

朝からよく分からない奴だった。


ベッドから起きあがる。そして新堂は思いつきで自分のキャラクターシートとやらの変化を確認するため、紙を見た。

変化があった点は2つ。

SAN値が60になっていたのと、特殊技能の欄にマーシャルアーツが追加されていた。


(あれ、、、なんでSAN値が減っているんだ?昨日は特に何も無かったはず、、、)


疑問が残った。この数値が日に日に減っていることに少し恐怖を覚えたが、マーシャルアーツを1日で修得出来ている事に少しだけ達成感を抱いた。


しかし、新堂は忘れていた。彼の体は昨日の過酷なトレーニングによって、全身が音を上げている状態だったのだ。

何故かいきなり襲ってくる全身の痛みに床に突っ伏してしまった。


「なん、、で、、今、、、」


思わず声に出てしまったが、それは本当に恐ろしい程痛かった。まるで体の内部から筋肉を毎秒殴られているような感覚だった。

結局、その日から数日間新堂は体の痛みと闘うこととなった。










また、夢を見た。


昨日のような儚く美しい世界ではなく、ただひたすらに真っ暗な空間。

自分がどこに立っていて、どれが真っ直ぐなのかも分からないほどの闇。

しかし、自分の姿だけはしっかりと確認できた。そのうえ、自分の意思で動くことも出来る。

どうすれば良いのか新堂はわからず、とりあえず歩くことにした。

道があるわけでもなく、そもそも自分が進んでいるのかさえ分からなかったがそれでも新堂は前へと歩いた。

すると、目の前にまたあの少女が現れた。こちらに背を向けていたので分かったが、髪の毛が長くなっていた。


「助けに来てくれたんだね。ありがとう。」


突如、礼を述べられた。新堂はどう返せば良いのか迷ったが、何故か勝手に口が動いた。


「あぁ。当たり前だろ。さぁ、早くここから抜け出そう。」


「でも、、、ごめんね。もう私は、無理みたい。」


「なにを、、、」


彼女がこちらを振り向いた。

その時、新堂は計り知れないおぞましさを感じた。


彼女の顔は、大量の腐敗臭のする触手で埋め尽くされていた。










大量の冷や汗と共に目が覚めた。

まだ暗い時間帯のようで、部屋は真っ暗だ。

もう一度寝付ける気にもなれず、新堂はシャワーを浴びることにした。



シャワーを浴びながら、新堂は先程の夢について考えていた。

あの少女は一体誰なのか。あの世界はなんだったのか。そして、自分のあの発言は一体なんだったのか。

考えれば考えるほど、よく分からなくなる。

なにより、彼女の最後の触手の姿がショッキングで、脳裏に焼き付いて離れない。

あれは、やはり人間ではなかったのだろうか、、、

そう考えながら浴室から出て、タオルで濡れた身体を拭き、髪を乾かし、パジャマへともう一度着替え、ベッドへ入る。

そこからは、もうあの夢の続きを見ることは無かった。











朝。今日は月曜日だろうか。

窓から外を見ると、雨が降っていた。どんよりとした大気の中、新堂はベッドから起き上がり私服ではなく制服へと着替えた。

学校へ行こう。そう決意したのは日曜日の寝る前だったか。そろそろ学校へ行かないと単位なども落ちていくため、大学への進学が難しくなっていくのだ。


「はぁ、、、」


雨のせいだろうか。体の筋肉痛は治ったのに倦怠感が残る。

休み癖がついてしまったのだろう、と自分で結論を出し、テキパキと学校の準備をする。

何の授業があるかは分からないので、とりあえず全教科をリュックへ放り込んだ。

リュックはかなり大きいものを使っているので、まだ少し余裕が残った。


雨なので、傘を差しながら通学路を行く。

通学路は、途中まではジムへの道と一緒なのでかなり見慣れた道だ。

道を歩いている途中、一瞬だけ頭が割れるかのような頭痛が走った。

思わずその痛みに視線を下に向け、かがみこみそうになる。

その視線の先には、緑色の液体が地面にこびり付いていた。


「あっ、、、」



全て、思い出してしまった。

抜け落ちていた記憶。ジムからの帰り道の記憶。なぜSAN値が減っていたのか?簡単だ。

新堂は神話生物に遭遇していた。

そして、同時に黒川についても思い出した。


(黒川さん、、、!)


あの時、言うがままに新堂はあの場を黒川に任せて、家へと走ったのだ。

そもそも人智からかけ離れている存在なのに、いくら強いといえど黒川が叶う訳が無い。

そう結論づけてしまった新堂は、絶望した。


「う、、、うわぁぁぁぁああああ!!!」


思わず、その場で涙を流してしまった。

その時、聞いたことのあるバイクの駆動音が後ろから聞こえた。


こちらまでそのバイクは走ってきて、新堂の真横で停止した。


「新堂くん、、、だよね?どうしたんだい?こんな所で泣いて」


聞きなれた、黒川の声だった。


「黒川、、、さん?」


生きていた。死んでいなかったのだ。


「よかった、、、俺、てっきりあいつに殺されたかと、、、」


「あぁ、あのことか。いや何、あんなかっこいいこと言ったけど僕もあんなのに遭遇するのは初めてでね。

あの後バイクで君とは違う方向へ逃げたらあいつはどっかに消えていったんだ。」


「そうだったんですね、、、良かった、、、」


「あはは。そんな心配しなくてもいいよ。君は、格好を見るに学校へ行くんだろう?急がないと、遅刻するよ?」


「あ、、、!そうでした!ではお元気で!」


学校に行くという目的を忘れかけていた。

黒川の生存に新堂はほっと胸をなでおろした。











黒川は、地面を見た。

緑色の液体が、雨に流されること無くこびり付いている。


「インスマス達、血を拭くのを忘れていたのか、、、」


(それがきっかけに新堂はここで泣いていたのか、、、

僕のことを心配してくれるなんて、優しい奴だな。いつかは、敵対しなければいけないというのに。)


そう考えながら、黒川もその場を去った。













学校へ、ほぼ時間ギリギリに到着した。

学校は3階建てで、狭いが地下室が存在する。といっても、今はほぼ倉庫らしいが。

3年生の教室は1階で、新堂は2組だ。


2組の教室へ入ると、クラスメイトがどよめいたのを感じた。

それもそうだろう。同じクラスメイトの親友の死を見た上に、親まで無くした、不幸の連続が続いた男なのだから。


「お、、おはよう。」


「おはよう。」


男子達数名と挨拶を交わし、席に着く。

自分の席は、左から2列目の最後尾だ。そして、その左が赤山の席だった。


ここで新堂はまた違和感を抱いた。そもそも、赤山の葬式って行われたのか?と。


「なぁなぁ、赤山の葬式っていつだった?」


少し不謹慎だが、気になったものは仕方がない。


「は?赤山って誰だ?」


みんなに聞いても、赤山を知らないと口に揃えて言った。

新堂はまたも恐怖した。

赤山の存在その物が無くなっていたのだ。


(ニャルラトホテプ、、、なんて事を、、、)


虚ろな気分になった。


「じゃあ、俺の隣の席って誰だ?」


「あぁ、転校生だよ。お前が休み始めた時ぐらいかな、外国から転校してきたんだ。」


転校生、、、?


「名前は?」


そう聞いたが、それを遮るように担任がクラスのドアを開け、


「ほらほら、みんな席につけ。お、新堂じゃないか!よく来てくれたな!

お前の隣の転校生はっと、、、まだ来てないのか。新堂もびっくりするぞ。なんたって、とんでもないぐらい可愛いからな!」


素直にセクハラじゃないか?その発言。


「えー、先生キモーい」


ほら、女子からのブーイングが飛び交い始めたじゃないか。


3年2組の担任、姫川 奏太。

とてもフレンドリーな男性教師で、スポーツマンな感じがする30代の教師だ。

その豪快かつ優しい性格から、色んな生徒からも人望が厚い上に好かれている。


「ははは。じゃあ、ホームルームを始めるぞ〜!」


ホームルームが始まろうとしたその時、クラスのドアが空いた。


「お、おはようござい、、、ます。」


綺麗な、どこか聞き覚えのある声だった。

新堂は、その顔を見た時驚愕した。


なんと、その子は夢に出てきた、あの黄色いフード付きのコートを着ていた女の子だった。


僕こんな先生に出会ったことないけど、こういう人好き

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