命は一つだけ。
ごめん、忘れてた
「は、、、?」
理解できない。目の前には赤山の頭の部分がある。でも身体は?
身体は一体どこに?そして、なんでこんな顔をしてるんだ?
「あ、、、、あぁ、、、」
声が出ない。叫びたいのに。助けを呼びたいのに。
なんで、なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんで!!!!!
恐ろしい虚脱感に襲われる。ここで目を閉じれば、俺は意識を失う。つまり死ぬ。
(もう、いいや。)
彼は、意識を手放した。
「ぃ」
「〜ぃ」
「お〜い?」
声が聞こえる。誰を呼んでいるのだろうか。
目を開けて、起き上がる。きっと目を開けた先は地獄か天国か、どっちかだろう。
しかし、その予想は外れた。
さっきの部屋だ。しかし、目の前には怪物の代わりに美少女がいた。
大きく、真っ黒な瞳。黒く、妖艶な程に美しい長い髪。
整いすぎている、といっても過言ではないだろう。
「お、目が覚めたねぇ」
「あ、、、誰だ、、?」
「誰だろうねぇ?君に答えるつもりはないかな。ごめんね、うちの下僕がちょっと遊びすぎたみたいでさ、
君の大切な大切なお友達を食べちゃったみたいだ。」
「お前が殺したのか、、?赤山を、、、!」
黒い感情が心の中に芽ばえる。仇はうてる。なにせ、さっき手に入れたナイフが腰にあ、、、
「おっと、君が探しているのはこれかな?」
ない。目の前の女の手の中にある。
「誤解されて刺されたら怖いからね。ま、君程度なら僕を刺すことすらできないだろうけど」
何故だ。目の前にいるのは女だ。自分より身長も小さい。何より力には差があるはずだ。
なのに、彼女からは絶対的なオーラが漂っていた。まるで人ではないような。
それはまるで神様のような力を感じた。
「僕が殺したわけじゃないよ。さっきも言ったけどね。下僕が勝手に食べちゃっただけなんだって」
下僕、、、?何を言っているんだ。まさか
「あの怪物が、、、お前の下僕?」
「そーそー。シャンタク鳥って言うんだ。可愛かったでしょ?まぁまだ分からないか。」
「何が目的なんだよ、、、?殺すならさっさと殺せよ!さっきから何言ってんのか意味わかんねぇんだよ!!」
「まぁまぁ、怒んないでよ。僕はただ単にお詫びをしに来ただけなんだよ。
友達を殺しちゃったぶん、これをあげるよ。」
彼女が手を俺の胸にかざす。そこから、淡い白の光が漏れる。
そして、真っ黒な塊が、その手から出現し、俺の胸の中に入っていった。
「は、、、?」
また理解が出来ない。
突如、体から謎の温もりと力を感じる。
その得体の知れない力は俺の血管を通り全身に駆け巡った感覚を与えた。
「一体、何をした、、?」
「うーん、それを教えちゃつまらないじゃないか。
まあ、簡単に言うならば適応能力と意志の力による創造かな?」
「だから何を言って」
「ま、ここからきっとこんなことに何回も遭遇すると思うからね。
僕からの餞別さ!暇つぶしにはなると思うしね。じゃ、帰り道は用意させてもらうから」
『適応』して、強くなってね?
君には期待しているんだから。未来の僕の、、、
何故か、最後の言葉が聞こえなかった。そして、何が起こっているのかよく分からないまま、
また意識が遠のいて、、、
「はっ!?!?」
目を覚ました。見慣れた光景だ。家だ。
「夢オチ、、、?」
いや、そうでなければおかしいだろう。なにせ、ありえないことが多すぎた。
しかし、夢であるなら全てに説明がつく。
【ピンポーン】
玄関のチャイムが鳴った。
誰だろう?第一、今は何時だ?
時計を確認する。午前10時、土曜日。
インターホンを確認する。赤山だった。
(赤山、、、!やっぱり、夢だったんだ。なんだ、びっくりした。)
しかし、何故か体が震え出した。突如、脳に警報を受けたようなショックを受けた。
【あれは赤山ではない。『何か』だ。】
(何なんだ!?これは!?)
脳内に直接意志が送り込まれてくる。あれは赤山ではない、と。
でも、現に目の前の画面には、、、、
「オ゛ーィ゛」
違う。声が違った。見た目は赤山なのに、声が恐ろしいほど低い。
絶対に出ては行けない。と脳内の意志が言う。
「イルンダロォ?
アケテクレヨォ。ハヤク、ハヤクハヤクハヤクハヤク。」
一体本当に何なんだ。日常を返してくれ、と切に願う。
「アケテクレナイナラ、ムリニデモハイルカァ。」
まずい!!!!!
警報が高らかに鳴り響く。
このままでは、恐ろしいことになる、と。